で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2187回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『パラム パラム パラム』
韓国済州島、2組の夫婦と1人の愛人が一緒に暮らし始める浮気を巡る艶笑悲喜劇。
監督は、『エクストリーム・ジョブ』のイ・ビョンホン。
『エクストリーム・ジョブ』の一つ前の作品。
出演は、イ・ソンミン、シン・ハギュン、ソン・ジヒョ、イ・エル。
物語。
ボンスは、妻ミヨンとの関係に悩んでいた。
夜の営みは妊活で月一回で十分、仕事は妻の店でほぼ一社員、家も義兄の持ち物で妻の実家の離れ。
彼は自分の価値は真面目さだけと割り切っていた。
義兄ソックンは個人タクシー運転手で、妻を愛しているものの浮気常習者。義弟ボンスはそのアリバイづくりに利用されている。
浮気はインスピレーションの種と言う義兄の浮気が理解できない。
ある日、ボンスが、義兄のアリバイのためにビリヤード場に赴いたのも義姉ダムドクと妹(妻)ミヨンのために義兄の浮気を止めたいという思いから。
ボンスは、義兄が連れてきた浮気相手、色気溢れる美女ジェニーにも毅然とした態度をとるが、ジェニーはそんなボンスに興味を持ち始める。
脚本:チャン・ギュソン、ペ・セヨン、イ・ビョンホン
オリジナル脚本:イェジー・ヴェイデレク『Muzi v nadeji』
出演。
イ・ソンミン (ソックン/ミヨンの兄/ボンスの義兄)
シン・ハギュン (ボンス/ソックンとダムドクの義弟)
ソン・ジヒョ (ミヨン/ボンスの妻/ソックンの妹)
イ・エル (ジェニー/ソックンの愛人)
チャン・ヨンナム (ダムドク/ソックンの妻/ミヨンの義姉)
コ・ジュン (ヒョボン)
ヤン・ヒョンミン (バムソー)
スタッフ。
制作:キム・チョリョン、イ・ミンス
撮影:ノ・スンボ
編集:チョン・ゲヒョン、ナム・ナヨン
音楽:キム・テソン
『パラム パラム パラム』を鑑賞。
現代韓国済州島、2組の夫婦と1人の愛人が暮らし始める艶笑悲喜劇。
悲喜劇と言うのがしっくりくる内容で、妻に不満がある義弟が浮気義兄を止めようとしたら、その愛人に自分が興味をもたれて、さぁどうなるという筋立てがしっかりした大人の群像劇になっています。
タイトルは、韓国語で浮気と風と望みの意味を持つ言葉パラムを繰り返しているのと、3つ浮気が出てくるという提示でもある。浮気だらけだけど、エロコメというよりは苦いラブコメ。
監督は、大ヒットコメディの『エクストリーム・ジョブ』のイ・ビョンホン。『エクストリーム・ジョブ』もそうでしたが、雰囲気はウディ・アレンのコメディのよう。たぶん発想元は『アフロディーテの誘惑』かな、いろいろアレンジしてますので、かなり違いますが。
実は、元はチェコの高評価のセックスコメディで、今作はその韓国リメイク。だから、東欧的な人間の本能の切ないおかしみがにじむのね。で、それを女性が強い地域である済州島の文化を混ぜ込んで脚色。
なかなかに盛り込んだ脚本で、たとえば、義兄が元ジェットコースターの設計技師で今はタクシー運転手で見た目以上にモテるおっさん、というすっとぼけた設定にもちゃんと細かく映画的な理由がある。盛り込み過ぎて、やや後半急な展開に思えるところもあるっちゃあるけど、そこも笑いになってるのが技あり。
冒頭でも、なぜか仏頂面でジェットコースターに乗る二人の男の顔のおかしみは、のちのち理由が分かると違う味わいになるなどのしかけあり。とはいえ、ジェットコースターがもうちょっとうまく機能してたら、というところはある。
強面のイ・ソンミンの軽み、真面目が似合うシン・ハギュンの右往左往の肉体芸の強み、ソン・ジヒョの強かなる目の力、イ・エルの強力な色気と芝居の確かさ。こういう映画でもきちんとキャストの強さが映画を絞めてくれるのが、韓国映画の強さよねぇ。人気や事情だけで、ややはまりぐらいの配役がほんと少ない。
ところどころやり過ぎ入れ過ぎのところはあるけど、そこも十分に微笑ましい。
やっぱ美術と撮影がちゃんとしてるし。
画面構築力があるのよ。映画見てるって気にさせてくれる。ここも先人の良質コメディ映画への継承を感じていいのよね。
内容は、大人の悲喜劇であることを忘れずに、こういうのも物語の多様性ですからね。今の日本じゃ、これ系統は鳴りを潜めがちだからさ。だから、2018年には公開もソフト化もされなかったのかもしれないし。
下ネタほどよく、エロどぎつくなく。下品さが薄めなのも、楽しませたいのがそこにまつわる部分という意図を感じます。
甘苦い島味の鮑とよく似た鞄作。
おまけ。
原題は、『바람 바람 바람』。
『風 風 風』、『浮気 浮気 浮気』、『望み 望み 望み』。
『風、浮気、望み』でもよいかも。
바람(パラム)は、風、浮気、望みという意味。
英語題は、『WHAT A MAN WANTS』。
『男が望むもの』。
2018年の作品。
製作国:韓国
上映時間:100分
オリジナルの『Muzi v nadeji』(英語題『Men in Hope』)(2011)は、脚本・監督イジー・ヴェイジェレクによるチェコのロマンティック・セックス・コメディ(艶笑喜劇)。かなり高評価(IMDBで7.0)を得ている一本。
済州島は、「風・石(岩)・女」が多い「三多の島」と言われているそう。済州島は火山島だったのと、女性が海女として海藻・わかめなどを取っていて成り立っていたという歴史があるので、女性の地位、それに存在感が韓国ではけっこう強い地域だそう。いわゆる海神なども済州島では女性の神というのもある。
なので、劇中でも描かれるように、ちょっと男性の立場が弱く、韓国男性としていろいろな思いがあるようです。
だから、わかめのシリアルなんてのが出てくるわけですね。
韓国の警察にかける番号は、112。
どういうくくりか、ラブコメ並びで『ジャンルだけロマンス』と同時公開で韓国ラブコメ祭りのような感じで宣伝されている。
2018年の今作と昨年の韓国のヒット作を並べたのは、『ジャンルだけロマンス』が『エクストリーム・ジョブ』の主役のリュ・スンワンで、こちらが監督のイ・ビョンホン作品というくくりだろうか?
並べて見せたい内容なのかと、『ジャンルだけロアンス』もさっそく見てきたので、近日記事をアップします。
ネタバレ。
女性が強い地域だから、ボンスはジェニーにかしずかれて、のぼせてしまうのね。
韓国の男性上位社会でも女性が強く描かれることは多いけども。
映画の締め方としては、義兄ソックンとダムドクのエピソードというかだ無毒の思いでソックンがあの結論を出す流れがもう少し強く必要だったかもな。
描かれる浮気自体は、ソックンとジェニー、ボンスとジェニー、ミヨンと料理人、ダムドクとマッサージ師の4つで、3つではなかったりする。
しょうがないのかもしれないけど、ダムドクを入れた5人でポスターとかつくって欲しかったなぁ。
展開の驚きが減るというか。
あの車に轢かる坂のショットはタイミングとか素晴らしかった。(轢かれるなという推測はつくのに、「あっ」とさせられたもの)
あの料理人はあえて外して驚きにするのはよいのだけど。
偶数の方がポスター展開とかしやすかったのだろうけどさ。
例えば、キャラポスターも、グループにしちゃって、ボンスとソックン(義理の兄弟)、ミヨンとジェニー(妻と愛人)、ダムドクとソックンにミヨンとボンス(夫妻二組、兄妹)、ジェニーとボンスとソックン(愛人と男たち)の4種でもよかったと思うの。
その点で、『ジャンルだけロマンス』は宣伝での配置バランスがよかったからね。