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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

人は育ちに縛られるというけど最近はどうですか? 『ハウス・オブ・グッチ』

2022年01月31日 00時00分41秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1988回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『ハウス・オブ・グッチ』

 

 

高級ブランド“GUCCI”の創業者一族が骨肉の争いをするドラマ。

 

サラ・ゲイ フォーデンのベストセラー・ノンフィクションを脚色して、豪華キャストで映画化。

 

出演はレディー・ガガ、アダム・ドライヴァー、ジャレッド・レトー、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエック、アル・パチーノ。

 

監督は、『最後の決闘裁判』のリドリー・スコット。

 

 

物語。

ブランド“グッチ”創業者の孫マウリツィオ・グッチは父の事業を継ぐ気はなく、大学で弁護士の勉強をしていた。
運送業を営む父のもとで働く野心的な女性パトリツィア・レッジャーニは、憧れのグッチの孫と出会い、恋に落ちる。
しかし、格差ある二人の恋は、マウリツィオの父ロドルフォ・グッチのお眼鏡にかなわなかった。

原作:サラ・ゲイ・フォーデン 『ハウス・オブ・グッチ』(ハヤカワ文庫刊)
原案:ベッキー・ジョンストン
脚本:ベッキー・ジョンストン、ロベルト・ベンティヴェーニャ

 

 

出演。

レディー・ガガ (パトリツィア・レッジャーニ)
アダム・ドライヴァー (マウリツィオ・グッチ)

ジェレミー・アイアンズ (ロドルフォ・グッチ)
アル・パチーノ (アルド・グッチ)
ジャレッド・レトー (パオロ・グッチ)
フローレンス・グッチ (ジェニー・グッチ)
ミア・マクガヴァーン・ザイニ (アレッサンドラ 9歳)
クレリア・ロッシ・マーセリ (アレッサンドラ 10代)

ジャック・ヒューストン (ドメニコ・デ・ソーレ)
リーブ・カーニー (トム・フォード)
サルマ・ハエック (ピーナ・アウリエンマ)
カミーユ・コッタン (パオラ・フランキ)
ガエターノ・ブルーノ (フランコ)

 

 

スタッフ。

製作:リドリー・スコット、ジャンニーナ・スコット、ケヴィン・J・ウォルシュ
製作総指揮:ケヴィン・ウルリッヒ、ミーガン・エリソン、エイダン・エリオット、マルコ・ヴァレリオ・プジーニ、アーロン・L・ギルバート、ジェイソン・クロース

撮影:ダリウス・ウォルスキー
プロダクションデザイン:アーサー・マックス
衣装デザイン:ジャンティ・イェーツ
編集:クレア・シンプソン
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

 

 

『ハウス・オブ・グッチ』を鑑賞。
78年イタリア、大ブランド“GUCCI”の創業者一族が骨肉の争いをするドラマ。
実話を基にしたサラ・ゲイ・フォーデンの原作 『ハウス・オブ・グッチ』を基に大胆に脚色。イタリア的なメロドラマ仕立てになっている。出会いのシーンを見ても、イタリアの古い18世紀頃のコメディスタイルも引用されているようだ。
舞台がイタリアでもあり『ゴッドファーザー』も想起されるが、イギリスのシェイクスピア的なものとなっている。人間の本性を上流階級とそこへ登ろうとした者のドラマとして。
レディ・ガガは実際のパトリツィアに見た目が似ている。そののし上がろうという自由さを強烈にキャラとして見せている。アダム・ドライバーもマウリツィオに似ている。アダム・ドライバーは育ちも雰囲気も変化を見せていて、当代随一の巧者として見事。道化を演じ切るアル・パチーノとジャレット・レトが見もの。アル・パチーノの日本語は聴きどころですぜ。
原作と事実から、かなり脚色されているが、それにより寓話化。パオロがそれをアナウンスしている。ぐちぐち言わせないようにコミカルにしたんだろな。
『最後の決闘裁判』とは違い、現代問題には切り込んでいないのだが、女性の立場が低かった80年代をそのまま描き出すだけで、そこに問題を見る側が感じとってしまう。ファッションを扱いながら、ルッキズム的なものに見えなうように心を配っている。センスは人の許容度、挑戦や時代にしてわかりやすくしている。
挑戦者を逆説的に描いてきたリドリー・スコットのテーマがひねくれて、描かれる。
巨匠ではありますが、クリント・イーストウッドが91歳、山田洋次が90歳、そうなると84歳のリドリー・スコットはまだまだ一世代下ですから、今後どんな作品を送り出してくるか楽しみは尽きない。『エイリアン』にケリをつけてもらえるかしら。次は『ナポレオン』です。ありゃ、史上最高峰の挑戦者じゃないですか。リドリーは今もまだ挑戦者なんだな。挑戦者は出る杭ではなく門柱である。
ところどころに弟トニーへの追悼の意が込められているのも感じる。
80年代の音楽のジュークボックスはその空気を伝え、社会的な気分を超え、内面さえ伝えてくる。
時代の空気感を伝えられること、当たり前のようで、これが難しい。これがあると映画時間旅行に出かけられる。
現在のリドリー・スコットの眼であるダリウス・ウォルスキーの乾いた画がいい仕事。
長尺は長さではなく、それにふさわしい映画リズム次第なのよね。まさにこれにはそれがある。
パオロのファッションショーのシークエンスは痺れる。
育ちが育てる育つ場所から巣立つ鞍作。

 

 

 

おまけ。

原題は、『HOUSE OF GUCCI』。
『グッチ一族』。

製作国:アメリカ
上映事案:159分
映倫:PG12

 

配給:東宝東和  

 

 

 

今作の冒頭の時代と『クライ・マッチョ』は同じ時代。
1980年代へ移行の時期は、まさに現代の2020年代、考え方が変わろうとする時代と呼応するのかもしれない。
今作は、80年代から90年代が舞台ではあるが。

アル・パチーノの初監督作品『リチャードを探して』は、シェイクスピアの『リチャード三世』の一部の映像化とその制作過程を記録したドキュメンタリー作品。
シェイクスピアの研究家やシェイクスピア俳優、街角の人々など様々な人物にインタビューを行い、また俳優同士のディスカッションや実際の演技(主要なシーンの映像化)も交えて、『リチャード三世』を解き明かしてゆくというもので、彼はシェイクスピア劇へなみなみならぬ思いがある。

 

 

 

レディー・ガガ主演映画『ハウス・オブ・グッチ』注目すべき10のポイント

 

 

ややネタバレ。

「父と子とハウス・オブ・グッチ」はレディ・ガガのアドリブ。

 

レディーガガ は撮影でイタリア滞在中、レディーガガの愛犬たちフレンチブルドッグが誘拐され、ドッグシッターは怪我を負っている。
約5000万の報奨金などが提示された。
解決したか不明。

 

 

ロドルフォ・グッチ役には、最初ロバート・デ・ニーロがオファーされていた。
一時期、マーティン・スコセッシが監督する方向で動いていた企画でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

父子の話ではあるが、裏には兄弟の話が流れている。
代理戦争としての兄の息子マウリチィオと弟父子アルドとパオロになっていく。

リドリー・スコットの処女作は、弟トニー・スコットを主演にした『Boy and Bicycle』で、今作も自転車で映画が始まり、その死で終わる。
スコット兄弟は仲が良かったようで、映画会社スコット・フリーを共につくっている。その裏にはいろいろなことがあったのかもしれないとも思わせる。
トニー・スコットは娯楽ばりばりの映画監督だったが、自殺をしている。

劇中で、パトリツィアは「止められない(=アンストッパブル)」と評されるが、トニー・スコットの遺作映画は『アンストッパブル』。
リドリー・スコットは元々アートを学び、美術としてCM界に入ったので、のちも、自分はデザイナー、と発言していたことがある。これはパオロと通じる。
日本の描写もリドリーは親日家で日本を舞台にした映画『ブラック・レイン』を撮っているだけでなく、信頼した家政婦は日本人(彼女の著作でリドリー・スコットの普段の姿が描写されている)だったりする。(アルドの部分ではあるが)
スコット兄弟を映したというよりは、要素をちりばめたということなのだろうけど、弟トニーへの追悼の意が込められているのを感じずにはいられない。

そういう意味で、リドリー・スコットが好んだテーマがいくつも入っている。
つくられた者、骨肉の決闘、父と子、似た者同士(疑似兄弟)の関係、預言。


サルマ・ハエックは、2021年にグッチ社を所有するフランスの多国籍企業ケリングの創設者兼CEOのフランソワ・アンリ・ピノーと結婚している。

 

ファッションショーでパオロの妻が歌い続けるのは、『魔笛』のアリア。

 

映画は何かを挟んでの会話で多くのシーンを構成している。
カウンター越し、バイク越し、電話とテレビ越し、テーブル、オフィスのデスク、そして銃。
結婚式の神父と握手する距離などに人との距離、コミュケーションの壁、格差、育ちの差などを画で見せている。

 

 

映画の演技スタイルは、18世紀頃まで人気のあったイタリアのコメディのスタイルであるCommediadell'arteに触発されているそう。
Commedia dell'arteは、誇張とシャープに描かれたキャラクターで笑わらせるスタイルで、特に商人、医者、弁護士など、伝統的に上流階級をからかっていた。最初に2人が出会うパーティーのように、カラフルな衣装やマスクを使用する場合もあったそう。

 

 

映画は、グッチの家族の大部分を省略している。
グッチオ・グッチには6人の子供がいた。
エンツォ(1904-1913)、バスコ(1907-1975)、ウゴ(1899-1973)、アルド(1905-1990)、ロドルフォ(1912-1983) 、娘グリマルダ(1903-1989)。
映画では言及されていないが、アルドには妻オルウェン・プライスと3人の息子がいる。
ジョルジオ(1921-2020)、パオロ(1931-1995)、ロベルト(1932-2009)。加えて、ブルーナ・パロンボとの娘パトリシア(ジョルジオ、パオロ、ロベルトの異母姉妹)がいる。

パトリツィアとマウリツィオには、2人の娘がいる。1976年生まれのアレッサンドラ、1981年生まれのアレーグラ。

アルドの息子のパオロは3代目の社長に就任し、中流階級まで顧客層を伸ばした商品のブランド展開を独断で始め、これまで父の築いた高級路線、グッチが持っていたブランドのイメージは傷がつける。グッチの売り上げも低下した。
これがアルドの逆鱗に触れ、パオロはグッチから追放された。
パオロは従兄弟にあたるグッチ株を50%所有するマウリツィオとタッグを組み、アルドを社長の座から引き摺り下ろすクーデターを起こす。
そして、3代目の社長に就任したのが、マウリツィオ。
アルドは翌年裁判を起こし、マウリツィオは社長職を一旦離れるが、翌年パオロがアルドの脱税を告発し、有罪判決に追い込み、80歳過ぎの老いた父を獄中に送っている。

パトリツィアとマウリツィオは1991年に正式に離婚している。
その後、マウリツィオは、グッチ株50%の売却を決めた。
どうやら、経営のプレッシャーから解放されたかったらしい。
そのことにより、パトリツィアに入る収入が激減することが決まり、そのことが直接の殺害の動機となった。

ナポリの占い師で、グッチストアのオーナーでもあったパトリツィアの友人で、姉妹のように仲の良い親密な関係性だったジュゼッピーナ・アウリエンマに相談。
暗殺を一緒に企て、準備をした。犯罪組織のトップであるイヴァーノ・サヴィオーニにパトリツィアは、対価を受け取って殺人を請け負う"バンダ・バソッティ"のナポリの魔術師と呼ばれていたヒットマンを紹介されて雇い、夫の暗殺を依頼した。
ヒットマンのベネデット・セラウロは、1995年3月27日の朝8時30分にミラノのコルソヴェネツィアにある会社の本社、パレストロ通り20番のエントランスホールに入った。
階段の上から降りて来るマウリツィオに駆け寄り、下からピストルで撃った。4発の銃撃を放ち、左肩に1発、右腕に1発、そして銃弾は太腿の付け根から入り臀部を通って頭を貫通した。倒れたところを最後の止めに4発目をこめかみに打ち込んでいる。
マウリツィオはその場で即死。
その玄関に立っていたポーターのジュゼッペ・オノラトにも2発、発砲したが殺すことはなかった。
後に裁判で2発撃たれて負傷したオノラトの証言が決定的なものとなった。
(ネットより引用)

 

 

映画を観たトム・フォードは、事実からかなり離れたコメディだと言っている。
パトリツィアはかなりの暴走機関車ぶりの悪妻であんなものではなかく、事件前はグッチ一族は地獄のよう状況で、パオロは実際はグッチの社長に就任した時期があり、あそこまで道化的ではなかったそう。

 

『ゴッドファーザー』でいうならば、構造は『ゴッドファーザーⅢ』に似ている。
しかも、アダム・ドライバーはダースベイダーの孫役をやっており、アル・パチーノはドン・コルレオーネの息子であるマイケルだと考えるとなかなか楽しんでいるキャスティング。(祖父グッチオ・グッチは出てこないあたりも)

 

パトリツィアの両親はポイントでしか顔を出さない。

 

会社でのセックスシーンは、パトリツィアが舌になっているのに上にいるように見せて、その後を暗示する。

 

 

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