で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1912回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『プロミシング・ヤング・ウーマン』
元医大生の女性が悲しき過去と戦うサスペンス。
主演は、『17歳の肖像』、『わたしを離さないで』のキャリー・マリガン。
共演は、ボー・バーナム、アリソン・ブリー。
監督・脚本は、エメラルド・フェネル。
Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』でチャールズ皇太子の妻カミラ夫人役を演じ、テレビシリーズ『キリング・イヴ Killing Eve』では製作総指揮や脚本を担当するなど、俳優・クリエイターとして幅広く活躍している。
自身のオリジナル脚本でメガホンをとった長編映画監督デビュー作。
物語。
元医大生のキャシーはもうすぐ30歳。かつては輝かしい未来が約束されていた彼女だったが、ある事件をきっかけに医大を中退し、今ではカフェの店員として平凡な日々を送っていた。
彼女は、夜ごとバーに繰り出して、泥酔している。それにはある目的があった。
ある日、カフェで大学時代の同級生で小児科医となったライアンと偶然、再会する。
出演。
キャリー・マリガン (カサンドラ(キャシー)・トーマス)
ボー・バーナム (ライアン・クーパー)
アリソン・ブリー (マディソン・マクフィー)
ティモシーE.グッドウィン (モンティ)
クリス・ローウェル (アル・モンロー)
コニー・ブリットン (エリザベス・ウォーカー)
フランチェスカ・エステベス (アンバー)
アダム・ブロディ (ジェリー)
クランシー・ブラウン (スタンリー・トーマス)
ジェニファー・クーリッジ (スーザン・トーマス)
ラヴァーン・コックス (カフェ店長のゲイル)
エメラルド・フェネル (メイクアップビデオのチュートリアルのホスト)
アルフレッド・モリーナ (弁護士ジョーダン)
スタッフ。
製作:マーゴット・ロビー、ジョージー・マクナマラ、トム・アッカーリー、ベン・ブラウニング、アシュリー・フォックス、エメラルド・フェネル
製作総指揮:キャリー・マリガン、グレン・バスナー、アリソン・コーエン、ミラン・ポペルカ
撮影:ベンジャミン・クラカン
美術:マイケル・T・ペリー
衣装:ナンシー・スタイナー
編集:フレデリック・トラバル
音楽:アンソニー・ウィリス
音楽監修:スーザン・ジェイコブス
『プロミシング・ヤング・ウーマン』を鑑賞。
現代イギリス、元医大生の女性が悲しき過去と戦うサスペンス。
3度ギアを入れる構成で描く女性という性と現代社会についての物語。
一見、ネオンとパステルカラーの復讐譚に見せる。その毒々しさに股間が縮むし、多くの見る者は男女ともに過去が襲ってくることだろう。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』は『将来有望な若い女性』の意味。その価値の見せ方で鮮やかに鮮血が滴る。その血の量に慄け。そこにクラシカルなのにネオなつくりが猛毒でありながら品の良さを醸し出す。これぞ英国の薫り、いや、かほりがそこはかとなく漂う。小品で世界を射抜いてきた英国映画の系譜が紡がれているのだ。
そして、まさかのポップな『セブン』だったりする。
視点反転の巧さに驚かされる。ここを潜ませる女心と空かぬ扉の中。そりゃ、アカデミー賞脚本賞なわけだわ。
キャリー・マリガン全放出。知を秘めた落下を体現させたら頭抜けてらぁ。
監督・脚本で長編映画デビューを果たしたエメラルド・フェネルの才気が闊歩している。
撮影と美術の的確さと新しいセンスが映画を違う地平に連れて行っている。
でも、その実、あの韓国映画と呼応している。その裏返しの恐ろしさにも思いを馳せる。
あなたは後半の仕掛けに気づけるか。
体感はさせるが、見せないという現代映画の潮流を裏返してみせてもいる。まったく肝が冷える。
若さゆえの過ちと己を許すな。ムードが引き起こすのだから、社会で築き上げなければいけないし、換気しなければならないってことなんだ。若気を致らさせないように。
その時、そこで何が行われたと思い浮かんだか、あなたの芯が試される唾作。
おまけ。
原題は、『PROMISING YOUNG WOMAN』。
『将来有望な若き女性』。
2020年の作品。
製作国:イギリス / アメリカ
上映時間:113分
映倫:PG12
配給:パルコ
受賞歴。
2020年のアカデミー賞にて、脚本賞(エメラルド・フェネル)を受賞。
2020年のLA批評家協会賞にて、女優賞(キャリー・マリガン)、脚本賞(エメラルド・フェネル)を受賞。
2020年の英国アカデミー賞にて、脚本賞(エメラルド・フェネル)、英国作品賞を受賞。
2020年のインディペンデント・スピリット賞にて、主演女優賞(キャリー・マリガン)、脚本賞 (エメラルド・フェネル)を受賞。
ほかに、100以上の賞を受賞。
知を秘めた落下を見せきる女優は多い。
マゴット・ロビー、サリー・ホーキンス、 シャーリーズ・セロン、黒木華……。
ボー・バーナムは『エイス・グレード』の監督でもある。
ネタバレ。
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、IIIIで4つ目に刻まれるのは、自分。
Ⅰは、Iは自分でもあるのか。
4つの自分だ。
自分を責めないで、とニーナの母に言われるように、キャシーは自分を責め続けていた。
映画は、そこにいたか、いなかったか、を責める。
傍観して、ニーナを信じなかった同期の女生徒たちも攻撃対象になる。
実家に居続けること、バンド”ウェット・ドリーム”も不在なのは、モチーフの一つかもしれぬ。(実家に居続けるのはダメな大人を示すためであろうが)
キャシーの復讐相手は、そこにいた彼らといなかった自分。
自殺することで、復讐を完遂しようとする。
それは、ニーナの後追い。
手錠は片方だけが獲れるように仕組まれていた。
キャシーは枕の下でニーナと重なる。
それはこんがらがったベッドインだ。
この再体験は、『サマリア』と重なる点。
キャシーは、バイセクシャルなのかな。
二つのハートのネックレスはニーナと生前に分け合っていたものだろうか。まさか死後に作ったものか?
『サマリア』には同性愛者的な入浴シーンがある。
キャシーは、男性が見下している同僚の女性の格好を選んでいる節があある。
背広組には短いスーツ、クラブなどで働く女性風、医者にはナースなど。
最初のシークエンスの後で、ヒールを脱いで歩く朝に女性への抑圧=ヒールを脱ぐを重ねていると見受けられる。
あそこで、彼女に血がついていることで、物理的な制裁行為を行ったように思わせているが、同僚がサイコ女程度で済ませたこと、話のタネに出来たぐらいから、実際に彼は傷つけられたわけではないとも想像できる。
実際、彼女についた血が多いというほどではないしね。酔っぱらった芝居で傷が出来てぐらいのことかもしれないし、相手の男性から攻撃を受けたのかもしれない。ここがどう見えるかがこの映画の肝の一つ。そして、彼女のスコアブックの印が黒と赤で分けられているのは、その時の行為が関わっているのかもしれない。
彼女の見えない行為が『セブン』のジョン・ドゥの最後の憤怒の箱の中のようになっている。
回想はなく、ニーナも写真でしか出てこない。
映画的な証拠はない。(動画が出てくることでキャシーは決断する)
その動画も見せないのはとても品のある演出だ。
それが、あくまでも主観、信じるかどうか、その酷さを見る側に委ねるのも高度な語り。
これにより、観客にあなたも傍観者で加害者となった記憶を蘇らせる。
『ブレイブワン』からの『名もなき復讐』の流れじゃなくて、『サマリア』の方に近いというね。
そのキム・ギドクはパワハラ差別問題で国を出たのだから、表現の持つ闇深さよ。
そこを踏まえても今までの男性目線のにょる性的描写の意味さえ変えてしまう視点がある。
アルフレッド・モリーナが、ノンクレジットなのはなぜかしら?(IMDBにもアン区クレジットと記載)
監督のエメラルド・フェネルも出ているが、こちらもアンクレジット。
今作は配役にもかなり気を使っているので、あえて、だろうか。
エメラルドをもじってか、ルビーやアンバー(琥珀)という名前のキャラがいる。
パリス・ヒルトンもプライベートの性的な映像を流出されるという被害に遭っている。
当時、それを社会的に擁護されたとは言えない状況だった。
彼女が性的であることを売りにしていたからって、プライベートのそれを出されるこてゃまたtく違う話だ。
でも、それをヒドいなぁと思いながらも検索して、見たことがある人もいるのではないかしら?
引用される映画は、『狩人の夜』、『ベリー・バッド・ウェディング』。
スコアブックは、男が無理矢理やろうとしたか、起こしたかの違いかも。