菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

星座は光年離れた星々を目にしか見えない線でつないで。  『夜明けのすべて』

2024年03月26日 00時01分41秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2327回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『夜明けのすべて』

 

 

 

それぞれに歪曲を抱えた藤沢さんと山添くんが日常と仕事と周囲と自分をすり合わせていくドラマ。

 

 

夜明けのすべて : 作品情報 - 映画.com

 

英題は、『All the Long Nights』。
『長い夜のすべて』。

 

製作年:2023
製作国:日本
上映時間:119分
映倫:G

 

配給:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース  

 

 

物語。

現代日本。
藤沢さんは、月に一度、PMS(月経前症候群)で、強いイライラを抑えられないので、薬を処方してもらいたがっている。
藤沢さんは転職してきた同僚の山添くんの態度がちょっと気になっている。
山添くんはパニック障害を抱えて、前の職場に居られなくなり、転職したのだった。
周囲も、そんな二人と適度な距離で接していた。
それぞれがそれぞれの歪曲を抱えながら、じょじょにそんな自分と暮らしていくことへと焦点を絞っていく。

 

 

『そして、バトンは渡された』などで知られる人気作家の瀬尾まいこの同名小説を実写映画化。

監督と共同脚本は、『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱。

主演は、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で夫婦役を演じた松村北斗と上白石萌音。

2024年の第74回ベルリン国際映画祭フォーラム部門出品。

 

 

スタッフ。

監督:三宅唱
チーフプロデューサー:西川朝子
製作:河野聡、牟田口新一郎、竹澤浩、中村浩子、津嶋敬介、古賀俊輔、奥村景二、小山洋平、篠原一朗、池田篤彦、宮田昌広
企画・プロデュース:井上竜太
プロデューサー:城内政芳
助監督:山下久義
原作:瀬尾まいこ 『夜明けのすべて』(水鈴社刊)
脚本:和田清人、三宅唱

撮影:月永雄太
照明:秋山恵二郎
美術:禪洲幸久
装飾:高木理己
衣裳:篠塚奈美
ヘアメイク:望月志穂美
録音:川井崇満

編集:大川景子
音響効果:岡瀬晶彦
音楽:Hi’Spec

 


出演。

上白石萌音 (藤沢美紗)
松村北斗 (山添孝俊)

渋川清彦 (辻本憲彦)
芋生悠 (大島千尋)
藤間爽子 (岩田真奈美)

りょう (藤沢倫子)
光石研 (栗田和夫)
斉藤陽一郎 (栗田の弟)

久保田磨希 (先輩)
足立智充 (先輩)

宮川一朗太 (医師)
内田慈 (医師)

丘みつ子 
山野海

 

 

 

『夜明けのすべて』を観賞。
現代日本、歪曲を抱えた藤沢さんと山添くんが日常と仕事と周囲と自分をすり合わせていくドラマ。
人気作家の瀬尾まいこの同名小説を実写映画化。
監督と共同脚本は、『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱。
今作は、理解されにくい潜んだ病気の話でもあるが、レンズ会社のお仕事ものでもある。
ここには、生活の匂いがある。
それは朝のお味噌汁や納豆やトーストやバターの匂いだけではなく、グリーンスムージーやキムチや拉麺やカレーも当たり前に香ってくる。
多重に妙なる薫りに満ちている。
今作からは、思わぬ仕事の成果を褒められたりする、そんな素敵な香りもすれば、土砂降りの中でベンチで座りこんでいる女性を見て、自分事じゃないのに心苦しくなる、そんなちょっとした嫌な臭いも漂ってくる。
生活は、清濁併せて、日々、川は流れる。濾して、洗って、飲み干して。
人間は似ているけどぞれぞれ違うのよね。ただ、同じところにいるということを一緒にやっていこうとすることの大切さ。
だって、種は同じでも、個体差は年齢に性別に人種に環境の掛け算をしていけば、千差万別どころか億差兆別が生まれて当たり前。社会は多数の幸福のため少数を合わせねばならないことは承知なうえで、その少数の数をへらせていけることは、社会の熟度といえるはず。
そうなれば、多数の中にある顕微鏡で見えてくる差異、少数部分が浮かび上がり、隠したり削ったり抑えつけたりしてきた部分を解き放して、楽に暮らせるかもしれないし、逆に押し付けてきた手を離すこともできること。それこそ多様性を認めることだろう。
病にもいろいろあって、根治出来ればいいけれど、ほとんどは弱い病と一緒に暮らしていくことになる。
健康なのを当たり前としているけど、実際は小さな病気や怪我はないものしているだけ。
誰でも幼い頃があり、誰でも老いを迎え、いづれは擦れ果てていく命。
それでも、ここで一緒に暮らしていくしかないのですから。
今作は、強めのPMS(月経前症候群)とパニック障害を抱えた男女の同僚が友達になっていく。
二人が深い関係にならないのがいいのよ。
そういえば、男女の友情が成立するかどうかという話があるじゃないですか。あれって、それぞれの恋愛感度や性的感度を考慮してないと思うのよ。そして、そうなる人立や事例を例外や特殊に入れてしまう。例えば、発情期があるように、無情期があるし、そもそも感度がうっすらしかない人だっている。
撮影、美術、物語、俳優陣、演出・・・、それらの距離が絶妙なのよ。近づいたり離れたり。まるで地球と月、地球と太陽のように。
ちょうどよく近くて遠い。いや、時折、ちょっと近すぎる。太陽の光は照らし、育み、干上がらせる。
自転車って、あげるそんな距離感。
星と星の関係、それって、ほぼほぼ交わらないということでもある。(天文学クラスなら、よくぶつかりますが)
その距離感を上白石萌音と松村北斗が太陽系の惑星軌道で描く。NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で夫婦役を演じてるので『ゴジラー1.0』と同じですね。
同じように、惑星として登場人物が重力で引力と斥力を発揮して、太陽系を形成する。
そして、それが集まって、銀河になっている。
写真では銀河を知っているけど、目にしているのは、それぞれの場所から見上げた夜空の星々。
雲や光で見えないこともある、毎日、天気は変わるから。
だけど、雲の上には、いつも星は回ってる。昼間は見えない月だって、今日もあそこらへんで回っている。
ここから見える星の星の光に、星座として、距離の違う星を二次元にして、見えない線でつないでいく。
袋から、残りポテチを直に口、流し込む様、きみが見せたる。日々のささやかな瞬きに気づかずに巡っていく。
映画が良かったからではなく、物語の匂いから、原作も味わって読んでみたくなったわ。
気づけたら、「何かできることは?」と声をかけられる世であって欲しいと願う。
こういう距離感で語られた映画はありそうでなかなか会えない。いわば、流星群のような。それを冬に見るなら、肩に巻いた小さめ毛布のような。雨の日の短いビニール傘なような。
より道コンビニでLineのやりとりをほっこり読み返すよな。
「大丈夫」なんて軽々しくは言えないけれど、「大丈夫大丈夫」と寄り添うようにつぶやいて。
帰り道、空を見て、足元を確かめて、前を向いて、家まで歩く足取りを温かくする、一本。


 



けっこう早い時期に見たのだけど、よかったから、見てもらいたいと思って、考えていたら、全然書けなくて。
こんなに遅くなったら、もう上映が終わってるところも出てきてしまって、本末転倒なアップになってしまいましたが。

 

 

映画『夜明けのすべて』大ヒット上映中 on X:

映画チラシサイト:夜明けのすべて

夜明けのすべて』オピニオンコメント&イラスト版ビジュアル解禁! | CINEMA FACTORY

 

夜明けのすべて | 瀬尾 まいこ |本 | 通販 | Amazon

瀬尾まいこ】「夜明けのすべて」 温かく優しい物語 - happyの読書ノート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

原作小説と映画は、公判がかなり番うらしく、プラネタリウムの部分は映画の脚色でだそうで、後半の展開は全く違うそうです。
自転車は山添くんが自分で買うらしく、それが大きなエピソードになっているそう。
あと、映画『ボヘミアン・ラプソディー』を見て、感動した藤沢さんが映画の内容を山添くんに話しあ来るが、ちょいちょいクイーン情報を訂正されるというくだりがあったそう。
映画好きとしては、邦画だと他の映画を入れる難しさもわかる。
作品の性質を同じ映画で曲げてしまう可能性もあるしね。
なにしろ、映画と音楽の使用量はべらぼうにかかるから。
でも、ほかの文化をうまく取り込めないのは、邦画の大きな穴だと思うので、意識が変わるといいなぁと思う。
原作に使用するようなことだけではなくね。
『花束みたいな恋をした』自体は好きだけど、サブカルの使い方は少々ひっかかるところがあったしなぁ。

 

 

実は映画を見ていて、悔しくなってもいた。
PFF入選でスカラシップで撮りたい映画企画を出したのだが、それがかなりこの映画と似ている主題を扱っていたのだった。
それぞれ理解されがたい病気を抱えた男女4人が、それぞれに日常と和解していく内容で、『明日は明日の風邪をひく』というタイトルだった。
恋愛要素もうっすらにし、あくまで病気と暮らす日常という内容だった。
企画は2位となり、機会を得られず、ほかのところに持って行っても気分が暗くなるとどこに持っていってもつれない返事ばかりで、日の目を見るこてゃなかった。
20年前は、こういう題材はそういう扱いだった。
その後も、「病気と暮らすこと」という題材を大事に扱ってきた。(『ライフ・イズ・デッド』、『強盗少女』、『かく恋慕』、『されど吉祥とする』)
だが、悔しさよりも、時代の川は流れ、こういう映画へと視線が注がれるようになったことを嬉しく思った。
これもまた夜明け。

 

 

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