菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

不幸のわらしべ長者。 『ビニールハウス』

2024年03月25日 00時00分32秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2326回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 


『ビニールハウス』

 

 

 

少年院出所近い息子を待つビニールハウス暮らし母が雇用先で介護する認知症の夫人を事故死させて隠蔽するサスペンス。

 

 

ビニールハウス : 作品情報 - 映画.com

 

原題は、『비닐하우스』。
英語題は、『Greenhouse』。
『ビニールハウス』、『植物の家』。

 

 

物語。

現代韓国。
薄幸美人の母ムンジョンは、少年院にいる息子と再び一緒に暮らすことを夢見ながら真っ黒なビニールハウスで暮らしている。
彼女は、盲目の老人テガンと認知症の妻ファオクの訪問介護士として働き、引っ越し費用を稼いでいる。
ある日、ファオクが風呂場で暴れ、ムンジョンともみ合って転んだ拍子に頭を打って、真っ赤な血が流れだす。
そして、ムンジョンは間違った選択をしてしまう。

 

主演は、『悪女/AKUJO』のキム・ソヒョン。
今作で、大鐘賞映画祭の主演女優賞を受賞。

学生のイ・ソルヒが、映画学校の課題制作による初長編監督作。
そのための脚本の出来に呼応したキム・ソヒョンが主演を承諾。
課題のルールとして、監督が脚本を手掛けることになっていたので、編集も手掛けている。

 

 

スタッフ。

監督・脚本・編集:イ・ソルヒ
PD:カン・ギョンイル
助監督:ペク・マガン
撮影:ヒョン・バウ
照明:イ・ユソク
美術:イ・ヒジョン
武術:シム・サンヨン
音楽:キム・ヒョンド

 

 

出演。

キム・ソヒョン    (イ・ムンジョン/訪問介護人)
ヤン・ジェソン    (テガン/目を患った引退老人)
アン・ソヨ      (イ・スンナム/治療会の女性)

シン・ヨンスク    (ファオク/認知症夫人/テガンの妻)
ウォン・ミウォン   (チュンファ/ムンジョンの母)
チョン・ジョンジュン  (ヒソク/医師/テガンの友人)
ナム・ヨヌ      (先生/テガンの弟子)

キム・ゴン      (チョンウ/息子)
ファン・ジョンミン  (治療会の主催者)
アン・ウォンジン   (チョンウの友だち1)
チョ・ヨンジン    (チョンウの友だち2)
ソン・ウビン     (チョンウの友だち3)
チョン・ジンガク   (チンガク/テガンの友だち)
チョン・テホン    (テホン/テガンの友だち)
シン・ミヨン     (療養病院の女性)
パク・オクチュル   (不動産屋の女性)
コ・ソンワン     (治療会 男1)
ハ・ジウン      (治療会 参席者2)
チョ・スング     (治療会 参席者3)
チェ・ビョンユン   (車内カップルの男)
オム・ヘス      (車内カップルの女)
ソ・ホンソク     (キュサン/テガンの息子)
ソ・ジュウォン    (ジュン/テガンの孫息子)
ソ・ヨヌ       (ジェイ/テガンの孫娘)

 

 

 

『ビニールハウス』を観賞。
現代韓国、少年院出所が近い息子を待つビニールハウス暮らし母が雇用先で介護する認知症の夫人を事故死させて間違った選択をするサスペンス。
映画学校に通うイ・ソルヒが課題として書いた脚本の出来に、『悪女/AKUJO』のキム・ソヒョンが主演を快諾。イ・ソルヒの初長編作品として課題のテイのまま制作されるが、完成度の高さから商業映画として配給される。結果、韓国のメジャーな賞で、主演女優賞などをいくつも獲得し、日本でも公開の運びとなった。韓国の新人の発掘力の凄みを感じさせる。
新しいホラーのようにさえ、感じる、偶然と宿命と人間の悪魔連鎖、アリ・アスターの印象もありながら、アキ・カウリスマキの中期『マッチ工場の少女』あたりの不幸と不運と不穏の日常の作劇を、韓国に落とし込んだら、あらま、ねっちょりとこうなりました、という感触。
強烈な設定のサスペンスを、コメディになりかねないナイフ綱渡りで渡って見せる。いや、もうところどころの黒さに笑って、思わず口を塞ぐいでしまう。
だがしかし、当時追う人物体tのほとんどの悪意は薄く、みなたぶんその場の状況に流されたり、のっぴきならない事情で、誤解され、誤読し、自分で自分を追い込んでいく大悲劇サスペンス。
なのに、大上段で、社会が悪いとか、人間て恐いとか振りかざさない独特の語り口で、自然に不運の連鎖√を転がり落ちていく。
(噂では、イ・ソルヒは次回作でコメディをつくりたいと言ってるそうだが、果たして)
このギリギリの語り口をいろんなことがうまくバランスとって配置されて保たれている。
まず、針の筵を歩くキャスト。その演技調整で、あと一歩間違えたら真っ二つか真っ逆さまのところを、ぎりぎりで歩いてみせる。脇役まで、ぴたりと嵌った顔と造形に「ああ、この世界、知ってる」と存在あるあるでその世界へぬるりと連れていかれるのよ。
キム・ソヒョンが映画を牽引する。中でも、一つ間違えば「ああ、お芝居だ」となりかねない自分叩きという自傷の見せ方の凄み。最近の映画で何度か扱われているけど、これなかなかうまくはまらないのよね。これをはめて見せる。
ヤン・ジェソンのさりげない上手さに、これをなぜ日本で望むのが難しいのかと問うてしまう。四人の老俳優たちの的確さには度肝を抜かれる。
そして、それにアン・ソヨが白い墨を垂らす。
いい顔が揃い過ぎている、演技を見る映画にもなっている。
編集が絶妙。
絶妙なタイミングと省略と配置の面白みがかちりと噛み合わされる。生き物と食事をつなげるようなモンタージュのマリアージュが食い合わされる。ちょっとはい漢字が、その先を想像させる。課題のルールで監督が編集するということになっていたが、それにより、まさにこの映画ならではのリズムと語りが生まれており、見せないことの怖さと心地よさにぴちょりとひたされていく。
はまりすぎたパズル度は娯楽語りににも近づき、闇の『クラッシュ』(ポール・ハギス)ともいうべき状況になる。もうここまで来たら、とことんずるりと陥れてくれという負の喜びで満たしさえする。
伏線回収ものでもあるので、ささくれをつまんで、ぎゅるっと引いたら、ちゅるるっと3mm真皮が細く裂けた快感と痛感。
撮影と美術と音楽が各駅停車のジェットコースターのように、レールを適度に軋ませ、ゆらりゆらりと折れずに揺らす。
半地下どころか、「地獄の底まで落としてくれ」と心の悪魔の声が囁いてくる。
こりゃあ、クセになる。
地獄のドミノ倒しがタトンタトンとキレイに全部倒れてくれることを望んじゃう一本。

 

 

 


受賞歴。

2022年の第27回 プサン(釜山)国際映画祭にて、ウォッチャー賞、オーロラメディア賞、CGV賞を受賞。
2023年の第59回 大鐘賞映画祭にて、女優主演賞(キム・ソヒョン)を受賞。
2023年の第32回 釜日映画賞にて、女優主演賞(キム・ソヒョン)を受賞。
2023年の第43回 韓国映画評論家協会賞にて、女優主演賞(キム・ソヒョン)を受賞。
2023年の第43回 黄金撮影賞授賞式にて、最優秀女優主演賞(キム・ソヒョン)を受賞。

 

 

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ネタバレ。

この映画が終わった後の地獄を想像する地獄。

 

先生は、ムンジョンのアエフレであり、スンナムの保護者で、しかも、テガンの弟子という設定だそう。

 

 

 

 

 

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