菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

疲れ果てた歓び。 『オールド・ジョイ』

2021年08月04日 00時00分26秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1913回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『オールド・ジョイ』

 

 

 

古い男友達2人が久しぶりに、カスケード山脈の一泊旅行に出かけるロードムービー。

長編デビュー作『リバー・オブ・グラス』で高く評価されたケリー・ライカート監督が、ジョン(ジョナサン)・レイモンド(共同脚本も)の短編小説を基に撮りあげた長編第2作。

 

主演は、『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』のダニエル・ロンドンとシンガーソングライターのボニー・プリンス・ビリーことウィル・オールダム。

 

 

物語。

妊娠中の妻と故郷で暮らすマークのもとに、故郷に戻って来た旧友カートから電話がかかってくる。
彼から「久々に山へ一泊旅行へ行かないか」と誘われる。
マークは妻も誘うが、「旧交を温めてらっしゃいよ」と言われたので、愛犬ルーシーを連れていくことに。
マークは、カートとキャンプ道具を乗せ、車を山へと走らせる。

脚本:ジョナサン・レイモンド、ケリー・ライカート

 

 

出演。

ダニエル・ロンドン (マーク)
ウィル・オールドハム (カート)
タニヤ・スミス (タニヤ)

ロビン・ローゼンバーグ (ウェイトレス)

 

 

スタッフ。

製作:ジュリー・フィッシャー、ラース・クヌードセン、ニール・コップ、アニシュ・サビアーニ、ジェイ・バン・ホイ
製作総指揮:ジョシュア・ブルーム、トッド・ヘインズ、マイク・S・ライアン、ラジェン・サビアーニ

撮影:ピーター・シレン
編集:ケリー・ライカート
音楽:ヨ・ラ・テンゴ 、グレゴリー・“スモーキー”・ホーメル

 

『オールド・ジョイ』を鑑賞。
現代アメリカ、旧友二人が久々に山へ一泊旅行にいくロードムービー。
癒しの二人の旅。だが、そこには、秘めた思いがあった。この雑談と静謐のバランス。ああ、アメリカ映画の良心。
長編デビュー作『リバー・オブ・グラス』で高評価を得たケリー・ライカートがさらに評価を上げた第2作。
その演出の妙味は磨かれ、シナリオが名パートナーを得て、グンッと上質に。
これを見たら、ミシェル・ウィリアムズは「あなたと映画をつくりたい」とアプローチしたくなるよ。見たら、あなたにもわかるはず。
ウィル・オールドハムの発する熱がむず痒い。ダニエル・ロンドンのたたずまいよ。
夜を満たすヨ・ラ・テンゴの曲が沁みる。
てか、アメリカ人もそこ行くのね、あなたのイメージを覆すこと請け合いです。
これは、映画館で見る映画です。このやさしい世界へようこそ。
あの朝に物語が色を変える夜作。

 

 

 

おまけ。

原題は、『Old Joy』。
『旧き歓び』。

 

2006年の作品。

 

製作国:アメリカ
上映時間:73分

 

配給:グッチーズ・フリースクール、シマフィルム

 

2020年9月より開催の<秋の文化芸術週間2020 ケリー・ライカート監督特集>にて上映後、2021年の<ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ>にて再上映。

 

 

受賞歴。

2006年のロッテルダム国際映画祭にて、タイガー・アワード(最高賞)を、受賞。
2006年のロサンゼルス映画批評家協会アワードにて、インディペンデント・フィルム賞を、受賞。
2008年のフィルム・インディペンデント・スピリッツアワードにて、Producers Award (ニール・コップ。『パラノイドパーク』と合わせて)を、受賞。

ほか、2つの賞を受賞。

 

 

 

 

ややネタバレ。

温泉への道は、現在は改善されているそうです。

クレジットに、「バッグビーホットスプリングスではヌードやアルコール飲料の摂取は許可されていない」と記載されている。

 

 

 

 

 

ネタバレ。

好みの台詞。

「悲しみは疲れ果てた喜びに他なりません」

「ジーザス・クライスト……スーパースター」

 

 

今作『ブロークバク・マウンテン』へのアンサーなんだと思うのよ。
マークがヒース・レジャーで、カートがジェイク・ギレンホール。
ヒース・レジャーは、ミシェル・ウィリアムズの夫。
つまり、彼女はタニヤに自分を重ねたともいえるのかも。

だって、『ブロークバック・マウンテン』のテントのシーンへオマージュを捧げているし。

しかも、それをがっつり描かないし、言わないのもいいのよ。
素っ裸とマッサージとなめくじ(雌雄同体)のインサートがにくい。
お湯に沈む結婚指輪も。

二人は、昔、付き合っていたのかもしれない。

マークに娘が生まれ父になる、ということの受け入れる心持ちも透けて見えるのよね。

もちろん、そこは深読みとして、古き良き青春と先行き暗い現在が比較されている。

ラジオで昔のアメリの栄光を語るが、現在は暗く語られる。

 

 

あの朝、ゴミまみれの中にあるテント(マットがある時点で想像できた)のシーンの美しさよ。

 

 

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