菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

逆に安心するタイミングが来る。 『胸騒ぎ』

2024年05月18日 21時46分41秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2358回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 


『胸騒ぎ』

 

 

 

 

旅行先で出会ったよく知らない家族同士が相手の異国の家で胸騒ぎの週末を過ごすホラー・サスペンス。

 

胸騒ぎ | あらすじ・内容・スタッフ・キャスト・作品・上映情報 - 映画ナタリー

 


原題は、『Gæsterne』。
『招待客』。

英語題は、『SPEAK NO EVIL』。
『言わざる』、『悪を語らない』。

 

製作年:2022
製作国:デンマーク / オランダ
97分映倫:PG12
配給:シンカ  
 

 

 

 

物語。

現代オランダ。
休暇でイタリアへ旅行に出かけたデンマーク人のエンジニアのビャアンと妻ルイーセと娘アウネスは、そこで出会ったオランダ人の医師パトリックと妻カリンと息子アベールと楽しい休暇を過ごす。
数週間後、パトリック夫妻から自宅への招待状を受け取ったビャアンは、一家で人里離れた彼らの家を訪問する。
再会を喜び合ったのもつかの間、会話を交わすうちに些細な誤解や違和感が生じはじめ、徐々に溝が深まっていく。
なんだろう、この違和感、この胸騒ぎは、しかし、それをビャアンたちは口にすることができない。

 

監督・共同脚本は、『アフター・ウェディング』など俳優としても活躍するデンマークの俊英クリスチャン・タフドルップ。
共同脚本は、弟のマッツ・タフドルップ。

 

 

 

スタッフ。

監督:クリスチャン・タフドルップ
製作:ヤコブ・ヤレク
製作総指揮:ディット・ミルステッド
脚本:クリスチャン・タフドルップ、マッツ・タフドルップ
撮影:エリク・モルバリ・ハンセン
プロダクションデザイン:サビーヌ・ヴィード
衣装デザイン:ルイーゼ・ニッセン
編集:ニコライ・モンベウ
音楽:スーネ・コルスター(コーター)

 

 


出演。

モルテン・ブリアン (ビャアン/夫)
シーゼル・シーム・コク (ルイーセ/妻)
リーヴァ・フォルスベウ (アウネス/娘)

フェジャ・ファン・フェット (パトリック/夫)
カリーナ・スムルダース (カリン/妻)
マリウス・ダムスレフ (アーベル/息子)

イシェーム・ヤクビ (ムハジド/ベビーシッター)
イラリア・ディ・ライモ (ベビー・シッター)

イェスパ・デュポン (ヨーナス)
リーア・バーストルップ・ラネ (フィーイ)
エードリアン・ブランシャール (デレク)
サリナ・マリア・ラウサ (ハナ)


 

 

『胸騒ぎ』を観賞。
現代オランダ、旅行先で出会ったよく知らぬ家族同士が相手の異国の家で胸騒ぎの週末を過ごすホラー・サスペンス。
北欧(デンマーク)的なじわじわと真綿で首を絞めてくるタイプ。
いわゆるムードホラーの様相が強く、恐怖シーンは極端に少ないので、サスペンス要素の方が強いが、独特の演出によって、ホラーの衣も纏っているあたりが、この映画の味。
基本ドラマなのに、やっぱりホラーなんです。それを色づけているのがある演出。ホラー映画の新技法を使っており、これに近い手法をクリストファー・ノーランやドゥニ・ヴィルヌーブ、ハネケも『ハッピーエンド』(2017)でやっており、今後、多く見られる手法になるかもしれないが、今作ほど見事にやってのけた例はかなり少なく、戦争映画で数本『西部戦線異状なし』(2022)、『ダンケルク』(2017)が思い出されるくらいだが、『関心領域』も予告編の印象ではこれを使っていそう。
今作の白眉は脚本で、ある種の日常ものから、些細なズレの積み重ねと観客を巻き込む、判断ポイント(フラグと言ってもいい)の設置など、絶妙な配分になっている。
細やかな人物描写、状況配置が絶妙で、そこから生まれる不穏さと居心地の悪さは映画史でも最上級で、居合わせ型の体験映画ともいえるほど。もうね、『ファニーゲーム』のの方が見やすいと思えます。(ただし、ハネケには他にも居心地悪い映画が何本かあるので、それらの方が比較対象にはふさわしいけど) ほかにもヨルゴス・ランティモスの『籠の中の乙女』『聖なる鹿殺し』などもこの系統と言える。ドラマでも居心地悪い映画というのはある(『マーサ、あるいはマーシー・メイ』『偽らざる者』なんかもそう)ので、日本だと胸糞という表現が使われているジャンルがそれに当たる。つまり、このジャンルは世界中で一定の支持を得ている。
ホラーファンが噂を嗅ぎつけて、平日ながら劇場は盛況でした。
今作は世界的に高く評価されているのも納得の出来。
実際、ハリウッドリメイクがすでに完成済。米国で24年公開予定。だが、スター俳優が起用されているので、今作のように見知らぬキャストで見る方がはっきり言って不穏さの度合いが倍増することは請け合い。まぁ、リメイクされて、この話を二度見れる人がそういるのかというところだが。
実は、監督・共同脚本は、『アフター・ウェディング』など俳優としても活躍するデンマークの鬼才クリスチャン・タフドルップ。(共同脚本は、実弟のマッツ・タフドルップ)
彼の前作の『En frygtelig kvinde』(2017)は、近い題材ながらコメディで、今作も、国や人によってはコメディの部分も多いと感じる人もいるそうで、おいらも何度か笑ってしまった。だが、笑ったくらいで、今作の居心地の悪さはまたく緩和されず、さらに居心地を悪くさせるという効果さえある。まぁ、今作を観ていて、劇場で笑い声をあげた日にゃ周りからの圧力をどう受けることやらという意味でも。
音響の素晴らしさは現代映画の一つの潮流で、でかいスクリーンでいい音響で見てたら胃が一回転してたかも。体調悪いときは見るのを踏み止まりましょう。
原題は、『SPEAK NO EVIL』は、「SEE NO EVIL(見ざる) HEAR NO EVIL(聞かざる) SPEAK NO EVIL(言わざる)」とつかわれる成句だそう。あえて直訳すると『悪を語らない』となり、これを邦題に起用していたら、どこか『悪は存在しない』的な匂いもしていたかも。
ただし、原題は『Gæsterne』で『ゲスト』つまり『招待客』の意味なので、凝り過ぎない邦題もその意図を組んでいると言え、映画の色をつけずぎないのでよいと思う。クリスチャン・タフドルップは、NETFLIX的な安全な映画にはしたくなかったと言っているが、『胸騒ぎ』という邦題はNETFLIX映画の邦題っぽいという皮肉も感じたり。
面白いのにずっと尻がムズムズして、ああ早く終わって欲しいと思わされた。こんな映画体験はめったにできるものではない。まぁ、ゆえにお勧めしにくいというのもあるが、好き者ならこれを映画館で観て体験しない手はないと太鼓判を押せる。
だって、逆の爽快感を味わえる、傑作ホラーでもそうそうできないことをやってのけてますからね。
しかも、実は、ちゃんと深めで普遍的なメッセージも潜ませてあって、それがお説教的になっていないので。
相手に勝手に理解を示し過ぎるな。
正しく怒れ。
あー、この観賞中の居心地悪さと映画館出るときの心地良さの対比たるや。
悪は善の中にこそ存在する一本。

 

 

異国で言葉通じないホラーは、アメリカ映画にいくつもつくられている。
『フランティック』、『ホステル』、『クーデター』など。

 

Gæsterne (2022) - Plakater — The Movie Database (TMDB)

Speak No Evil

KAROO | Speak No Evil

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Speak No Evil - Oceana Studios

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

オランダ人夫婦役のフェジャ・ファン・フェットとカリーナ・スムルダースは、リアルでも夫婦の俳優。
この内容なので、オーディションも受けたくないなぁと渋っていたそうだが、クリスチャン・タフドルップと話し、快諾したという。

 

今作は、クリスチャン・タフドルップの実体験からインスパイアされて発想された。
彼の家族がトスカーナで休暇中に、オランダから来た友好的だがやや社交的にぎこちない家族に出会ったそう。
彼らは非常に仲が良く、両家族は多くの時間を一緒に過ごしたそう。
デンマークに帰国した後、そのオランダ人家族からオランダの家に招待する手紙が届いたので、その申し出を検討したものの、さすがにそこまで知らない相手の家まで行くのは、気まずいだろうと考え、断り、二度と会っていないそう。
この申し出をもし受け入れていたらどうなっていただろうか?と考えて、今作のアイディアとなった。
もちろん、クリスチャン・タフドルップは、この映画はあくまでダークファンタジーで、休暇で知り合ったオランダ人家族は間違いなく素晴らしい人々だったと強調している。

 

クリスチャン・タフドルップは、インタビューで、昨今のホラー演出の見せすぎには思うところがあり、あえて、それを限定し、血もほんのわずかしか見せないようにし、最後の石打ちなどの演出もそこを意識した、と語っている。
ミヒャル・ハネケも『ファニーゲーム』の時に近い意図をもって、制作したとを発言していた。

 

ずっと居心地悪いので、攻撃が始まったときに、なんか逆にほっとした。

 

本作は、自己主張や信用の逆価値、判断の遅れ、ポリコレや悪は相手の善意につけいるということも受け取れる。
あと、人は防御としてのあきらめを行うという人間心理の恐ろしさも見せている。
さすがに、石打ちで宗教的な寓話まで受け取るのは書投げすぎだとは思う絵k度。それにより西洋的にはホラー度を上げてもいると思われる。
ハイテク批判などを細かく入れることで、計算された内容としてまとめている。
パトリックたちは、相手に頼みごとをして応じさせたり、相手を賞賛したり、権威であいての信用を得たり、ガソリンを抜くなどの大きな罠を仕掛けており、後半にもドアを開けっぱなしにしたり、わざわざアベールの死体を見せたりする劇場型の犯人であり、悪魔感が出ている。
悪は存在するのである。

波風を立てないように、事なかれ主義で、相手を慮りすぎると、自分の方が追い込まれていったり、愛に利用されてしまう。

オランダ語は訳されないので、オランダ人は全く違う風にこの映画を受け取れるのかな。

 

シナリオは、かなり伏線を丁寧に張っている。
ウサギ、ベジタリアン、鋏など。

 

ペスカタリアンとは、牛や豚・鶏といった哺乳類と鳥類の肉、及び肉由来の製品を避け、魚介類は口にする人々の食生活スタイルを指す。 ペスカタリアンの多くは、動物性食品の中でも卵・乳製品などを選ぶことが多くある。 ただし中には、哺乳類や鳥類由来の製品であることから避ける人もいる。

 

 

人間は、自分の判断の範疇を超えると、思考停止状態になり、従順になるというのが、多くの凶悪犯罪で現実に証明されている。
北九州監禁殺人事件など、被害者が反抗の意思を失ってしまったことが事件を悪化させたことが判明している。

 

 

ハリウッドリメイクもタイトルは、『SPEAK NO EVIL』で、予告編には、今作のネタバレもあり、家でのバトルシーン、息子による警告も増えていて、スリラー要素が強調されている。
予告では「SEE NO EVIL(見ざる) HEAR NO EVIL(聞かざる) SPEAK NO EVIL(言わざる)」というキャッチコピーが使われて、どこかソリッドシチュエーションスリラーのイメージになっている。
パトリックに当たる役をジェームズ・マカヴォイが演じており、その妻には、『ナイチンゲール』(2018)のアシュリン・フランチオージが起用されている。
監督は、『フレンチ・ラン』『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』のジェームズ・ワトキンス。

 

 

 

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