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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

シン・マトリックス𝄇  『マトリックス レザレクションズ』(追記あり)

2021年12月24日 00時08分43秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1982回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

 

『マトリックス レザレクションズ』

 

 

 

機械に捕われた救世主を救いに行くサイバーパンク・サスペンス・アクション。

世界的に社会現象を巻き起こしたSFアクション『マトリックス』シリーズの『マトリックス レボリューションズ』以来18年ぶりとなる第4作。

 

主演は、キアヌ・リーヴス。
共演は、キャリー=アン・モス。

 

監督は、過去3作を共に手掛け、シリーズ初の単独監督作となるラナ・ウォシャウスキー。

 

 

物語。

中年となったネオはトーマス・アンダーソンとして、AIが作り出した仮想世界“マトリックス”に支配されていることを知らずに生活していた。
覚醒している一部の人類は、彼を再び覚醒させ、ネオへと戻そうとする。

キャラクター創造:ラナ・ウォシャウスキー (ザ・ウォシャウスキーズ)、リリー・ウォシャウスキー (ザ・ウォシャウスキーズ)
脚本:ラナ・ウォシャウスキー、デイヴィッド・ミッチェル、アレクサンダル・ヘモン

 

 

出演。

キアヌ・リーヴス (ネオ/トーマス・アンダーソン)

キャリー=アン・モス (トリニティー/ティファニー)
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世 (モーフィアス)

ジェシカ・ヘンウィック (バッグス)
アンドリュー・コールドウェル (ジュード)
プリヤンカー・チョープラ・ジョナス (サティー)
ジェイダ・ピンケット=スミス (ナイオビ)

ジョナサン・グロフ (スミス)
ニール・パトリック・ハリス (アナリスト)
ランベール・ウィルソン (メロビンジアン)

クリスティーナ・リッチ (グウィン・デ・ヴェール)
テルマ・ホプキンス (フレイヤ)
エレンディラ・イバラ (レクシー)
トビー・オンウメア (セコイア)
マックス・リーメルト (シェパード)
ブライアン・J・スミス (バーグ)

チャド・スタエルスキ (チャド)

 

 

 

スタッフ。

製作:ジェームズ・マクティーグ、ラナ・ウォシャウスキー、グラント・ヒル
製作総指揮:ギャレット・グラント、テリー・ニーダム、マイケル・サルヴェン、カリン・ウォシャウスキー、ジェシー・エアマン、ブルース・バーマン

撮影:ダニエレ・マッサチェージ、ジョン・トール
視覚効果監修:ダン・グラス
プロダクションデザイン:ヒュー・ベイトアップ、ピーター・ウォーポル
衣装デザイン:リンジー・ピュー
編集:ジョセフ・ジェット・サリー
音楽:ジョニー・クリメック、トム・ティクヴァ

 

 

『マトリックス レザレクションズ』を鑑賞。
未来地球、機械に捕われた救世主を救いに行くサイバーパンク・サスペンス・アクション。
世界的に社会現象を巻き起こしたSFアクション『マトリックス』シリーズの『マトリックス レボリューションズ』以来18年ぶりとなる第4作。
キアヌ・リーヴスが再びネオを演じ、キャリー=アン・モスがトリニティを演じる。
監督は、過去3作を共に手掛け、シリーズ初の単独監督作となるラナ・ウォシャウスキーなので、オリジネーターゆえの続編になってます。
何度もあった続編をついにつくる気になった理由から考えても、実に個人的な物語として、破壊であり再生の物語になっている。
そういう意味で『シン・エヴァンゲリオン𝄇』と重なり、そのまま『シン・マトリックス𝄇』と呼びたいほど。同じように繰り返しのやり直しになっている。コミックマニアの作家ゆえに、アニメからの影響がもろに出ていたシリーズと考えれば、純正の進化と言える。だって、押井守的に言えば、『ビューティフル・ドリーマー』も『スカイクロラ』もそうだし。
完全に『3』から続きの『4』なので前作まで見ておくべき。今作だけ見ても面白みは半分以下。
ウォシャウスキーズのルックは、しとしとクラシカルか、てかてかアニメタッチがあるんだけど、今作はその中間の感じになってます。そこも進化と言えば進化だけど、中国映画っぽい。撮影もダニエレ・マッサチェージ、ジョン・トールの二人だったりする。
実は、ややコメディよりになってるんですよ。メタフィクションの構造だし。これ、悪い意味でのMCUっぽかったり(ポストクレジットシーンもある)。ここもコミック的な発想で重なるのか。
ウォシャウスキーズってコメディには真面目過ぎるとこがあるのよね。ちょっとイタイタしい。(とはいえ、妹リリーはコメディTVシリーズで成功を収めているので、ラナの方がということかもしれないし、セリフが上手かったのもリリーだったのかも)
会話も面白くないのよね。
じゃあ、アクションもすごいことをやってるのかというと、すごいところもあるんだけど、ゲームっぽいのよね。すごい数を飛ばしたりって、それ『カンフーハッスル』でパロディされてたヤツでしょうに。あれはシャマランだし、全体の構造は『ブラックミラー』のあれだし。前にやりきれなかった『AKIRA』オマージュは増してます。かなりそっくりなカットがいくつもある。知識がラナ担当で整理がリリー担当だったのかしら。
『マトリックス』でそれをやるということの意味はわかるけど、まず画でねじ伏せて欲しかたよ。新しく出るゲームの方がすごいんだもの。
あ、おいらメタ構造好きなのよ。『デッドプール』とか『アルフィー』とか。
でも、メタ構造ってコメディになりがちなのよね。
キアヌ・リーヴスの凄み。ジェシカ・ヘンウィックが発見。
今作は元の『マトリックス』自体が、個人的な作品であったことが、救世主という題材のせいで、そう見えにくかったことで誤解され続けたことによる苦しみへの返答にも見える。
そして、それこそ作家と作品を重ねすぎる、歪な見方なのかも。
というか、この物語ならウォシャウスキーズで監督するべきだったと思うテーマ的にも。いや、それ自体が続編への引きなのか。
実は、おいら『1』より『リローデッド』の方が好きなのよね。『2』→『1』→『3』→『4』かな。
だけど、『1』は当時、実写でのサイバーパンクがようやくあと10年ってところに追いついたと言われたのよね。つまり、アニメや漫画や小説は20年は引き離してたから。『1』がヒットしたことで、さらに踏み込んだ『2』が出来た。『2』でその引き離された10年は5年になった。ジャンルの代表作である『ニューロマンサー』(ウォシャウスキーズはこれの実写化も企画したが頓挫)がいまだ実写化できてないけども、『攻殻機動隊』は実写化されたけど、サイバーな部分はほぼ消えちゃった。
5年はなかなか埋まらなかったけど、『インセプション』、『フリーガイ』、『プログレス未来会議』といった作品で、ようやく肉体性を超えるサイバーパンク的なものをフィクションで当たり前に描けるようになりつつある。あと1~2年差というところ。
ところが、逆に現実はまだ追いつけてない感じ。それに対して、今作は狼煙であろうとしたのではないかしら。
それに、こうやっていろいろ議論ができる作品であるだけで、続編が出来た価値はだいぶあるよね。
そうそう、大事なのは、その肉体的な部分に、中年の悲哀も出てくるのよ。
だって、映画の軸は2種類のラブストーリーなのよ。1つは簡単、ネオとトリニティの中年の老いらくの恋なんだもの。もう一つは見りゃわかります。
そして、それもまた個人的な要素だったりしつつ、これが今の映画界の中心になりつつある。
そうそう、クリスティーナ・リッチがちょい役で出演しているのだけど、吹替版では柴咲コウが声を当てている。
シンボルとしての虹作。






おまけ。

原題は、『THE MATRIX RESURRECTIONS』。
『母体 復活』。

「Matrix」はラテン語の「母」を意味するmaterから派生した語で、転じて「母体」「基盤」「基質」「そこから何かを生み出す背景」などの概念を表す。
本シリーズでは、コンピュータの作り出した仮想現実を「MATRIX」と呼んでいる。(wikiより)

 

2021年の作品。

 

製作国:アメリカ
上映時間:148分
 映倫:G

 

 

撮影のダニエレ・マッサチェージは、イタリアのベテラン(1980年代から活躍)で照明の方で知られているが、撮影でも90年代から活躍している。

 

 

エンドロール後に、1シーンある。

 

マトリックス レザレクションズ』公式サイト|12月17日(金)公開

マトリックス レザレクションズ』公式サイト|大ヒット上映中!

 

 

 

ややネタバレ。

メタ構造などを利用して、高次元で大作映画を個人映画的にする試みは、ザック・スナイダーなど数名が取り組み始めているが、これも20世紀前半の映画の大作が作家による個人的な大作だったものが多かったのを考えれば、21世紀の同時期的な古典回帰といっていい傾向だろう。

『1』でトーマスが名乗っていたハッカー時の名前がネオで、ある意味、自作自演は『1』の時からやっている行為。

 

リリー・ウォシャウスキーは、TVシリーズ『Work in Progress』が好調で、2019~2021と続いているため、今作に参加できなかったと言われている。
これは、太めの中年女性アビーの日常を描いた物語で、主演のアビー・マッケナニーの個人的な経験に基づいているそう。
リリーは『センス8』後に演出(監督)が出来なくなり、改めて美術を勉強をしている。


ティファニーの夫チャドを演じるのは、チャド・スタエルスキで、『ジョン・ウィック』シリーズの監督。『マトリックス』シリーズでネオのスタントダブルをやっていたことでも知られている。ネオの代役が夫というわけ。

 

 

 

 

 

ネタバレ。

開巻、画面には、四角い白い表示が出る。(そこにジュードの呼びかけが入って始まる)
これは、スクリーンをモニターにする演出ともいえる。(もともと、落ちてくる文字列などそういう画面づくりはあった)
今回は有線電話や携帯電話ではなく、ドアや鏡が入り口や出口になるし、
スマホで連絡し合うなど、四角をくぐるがモチーフになっている。
四角は虚構という感じ。
スクリーンの破れ目から出てくるところは、まさに四角の虚構からで現実へという象徴になっている。
それに対して、丸が現実。
プラグ、電池ケース、船、サングラス、現実のモーフィアスは粒だしね。
例の青と赤のカプセルは楕円なので、丸でありつつ四角っぽくもある。

『マトリックス』は『攻殻機動隊』からの影響が大きいのは事実だが、もう一本、元ネタとなったDCコミックのアメコミがある。
それは、グラント・モリソンの『インビジブル』。
宇宙人に奴隷にされた人類を一般人である選ばれし者とヒーローたちが救い出す話で、師匠はモーフィアスにそっくりだし、レザーの衣装に身を包んだヒーローも出てくる。
マイナー作品だが、グラント・モリソンは伝説的なアメコミ作家で、『ファイナル・クライシス』、『アニマルマン』、『ドゥームパトロール』、『New-X-MEN』などで知られている。『スーパーマン』シリーズでも作家をやっていたことがある。
スコットランド出身の作家で、作風は難解なものが多い。
彼の伝記映画もあったりする。
『アニマルマン』では、グラント・モリソン本人として登場し、アニマルマンに「この世界はコミックに過ぎない」「お前はコミックブックのキャラクターだ」と言い放っており、劇中で死亡する。
飼い猫が死んだ時、その悲しみから当時担当していたアニマルマンの家族を皆殺しにするなど、個人的な動機から物語を展開させる傾向があり、『インビジブル』執筆時には「私はかつて宇宙人にさらわれたことがあり、その時の経験をコミックとして世界に発信しているんだ」と答えている。その時、精神的に病んでいたという。
異性愛者だが潜在的同性愛者とも発言。アメコミに同性愛といった性別についての話題を取り入れた初期の一人でもある。

ちなみに、マイ・ケミカル・ロマンスの楽曲『Na Na Na』のPVに出演している。(ハゲの悪人面の人物がそう)
マイ・ケミカル・ロマンスのボーカルは『アンブレラ・アカデミー』の原作者でもあるジェラルド・ウェイで、彼はバンドをやる前はアニメーターだった。ミュージシャンとなった後も漫画家として活動しており、『素晴らしいキルジョイ』、『ネバーボーイ』などのアメコミを手掛けている。彼は、モリソンも作家をしていた『ドゥームパトロール』でも作家として参加したことがある。

 

『4』は、メタ言及や性別的な題材、家族の放棄などの悲劇的展開など、このグラント・モリソン色を強めた作風ともいえるのかもしれない。

 

アーキテクト(設計者)からアナリスト(分析者)へと変わっているのも、哲学的な要素から、精神分析的な要素の方へシフトしたことの表れだろう。
ちょうど、製作に踏み切ったのが、彼女の親しい人などが不幸に次々とあった時期らしく、かなり落ち込んでいたところ、『マトリックス』の続編のアイディアが浮かんだという。
ある意味で、セラピーとしての映画制作であり、これはザック・スナイダーの『ジャスティス・リーグ:スナイダーカット』や『アーミー・オブ・ザ・デッド』を想起させる。
映画に限らず、このような創作秘話は数多くある。

ウォシャウスキーズは『マトリックス』三部作以後、ヒットに恵まれていない。
どちらかというと、ノー天気な『スピードレーサー』や『ジュピター』、哲学的な群像SF『クラウドアトラス』や『センス8』が持ち味で、『マトリックス』はたまたまいい感じに娯楽作となった(『バウンド』は『マトリックス』を監督出来ることを示すためにつくったある意味でパイロット版)だけであり、売れる前は売れるように世間に合わせ、売れ対語は好きなことやったら、世間と会わなくなたタイプの作家性の強いタイプともいえる。
なので、娯楽作はどこか歪で、そこは庵野秀明の『キューティー・ハニー』と『スピードレーサー』が似ていることから、

 

『1』は平凡な青年が、本当の自分に踏み込み、偽物の世界から本物の世界へと移動し、指導者モーフィアスと自分を信じる女性トリニティによって覚醒し、救世主になる物語だったが、男性が基軸となっていた。(サンドラ・ブロックが受けていたら、ネオは女性になる可能性もあった。彼女はネットを題材にした『ザ・インターネット』や『デモリッション・マン』などSFでも存在感を発揮できるスターだった。キアヌと共演した『スピード』でスターになったのである意味、非常に縁がある)
だが、MtFのトランスジェンダーのラナとしては、女性としての自分の物語を語り直したい意識があったのではないか。
そして、それは現代の女性の社会的問題と多様性へ取り組む姿勢と重なったのだろう。
そこで、今度は反転し、ネオだけでは実は不足だった世界だったことを改めて示し、トrニイティあってのネオであり、二人で一つのアンドロギュネスの世界観として、語り直しをしたかったのではないか。

そもそも、オラクルは女性で、ネオも『3』でトリニティのために自己犠牲を果たしている。

ネオにより、スミスが自由選択が可能になったように、今作は機械にもそのプログラムでより生命体に近づいていったことがわかる。
人間同士で争うように、機械同士も争っている。
元の三部作では、機械が自滅しないように、突然変異を作り出すことが継続方法ということで、救世主をつくっていたことが判明している。ネオは6番目。
ネオのいままでと違う選択により、次のステージに機械たちは進むが、それによる戦闘や少子化などで人間が減り、電力不足なったため、それを補う目的もアッテ、ネオを再生するが、それだけでは大した電力にならなかった。その理由は、ネオとトリニティによる適度な距離が必要で、トリニティも再生する。

当然、進化のための救世主計画は今も継続している。
機械たちは、変異しないと自滅する可能性がある。ウイルスのようなものだ。
そこで、トリニティを救世主化する計画になっており、モーダルでそれが行われている。
それゆえ、バッグスが最初に見たモーダルはトリニティ救世主化計画だったが、彼女らの介入により失敗し、そこの世界は削除される。
逆に、再生したトーマスが再び救世主化しないように抑えることも行わなければならない。
トーマスは核エネルギーのような厄介ものでもある。
なので、完全に新しくせずに、茶化すように以前のトーマスの歴史と記憶はゲームということにして、その記憶と覚醒を予防する。
機械たちは、メインを一つつくり、いくつものモーダルという小仮想世界をつくっているということらしい。


バッグスは、バグス・バニーのと彼女が言うように、前作と同じ『不思議のアリス』の白うさぎの役目を彼女が担わされている。兎のタトゥーまで入れている。
彼女が覚醒する前は名前が違ったのかどうかが不明だが、トリニティを覚醒させるために機械が用意した可能性は高い。
用意した計画ではうまくいかず、偶然、目覚めた新モーフィアスにより、ネオ覚醒計画が動き出したことで、トリニティ覚醒が引き起こされたともいえる。
予定外がないと突然変異は起きない。
分析は、事後でしか完璧にはできない。機械には新しいものはつくり出せないのだ。
ゆえに、ザイオンは意図して残されている。人間の反抗が機械の命を繋いでいるから。
それが、『1』で人間へのラベル貼り(ウォシャウスキーズには大作は監督はできないという会社に判断されて、『バウンド』をつくったりした)による人間の機械化への反抗として描かれたが、今作では映画界自体のありようを取り入れたともいえる。
彼らには、以前、イラク戦争を題材に兵士の同性愛やジョージ・W・ブッシュの暗殺を描く『CN-9』という映画の構想があったが、出資者が見つからず頓挫したのも、ウォサフスキーズとイラク戦争という題材は合わないというラベル貼りによるものと見ることもできる。

それに、今作が『マトリックス』らしく無さを取り込むことで反抗しているともいえる。

 

鏡の中や遠くで見ている時は違う人物だが、カメラが寄るとネオになるところがいくつかある。
つまり、アナリストによって、マトリックス内では見た目を変えられている。

バッグスが初めてネオを観た時もそうで、引いたカットでは髪がなく、寄るとネオになる。
他にも、劇場で、鏡の中にいるネオが違う人になっているカットがあり、トリニティも鏡に映っている時は金髪の女性として映る。

そうなると、バッグスやモーフィアスはなぜ屋上のネオを見たんだ?
もしかしたら、それって、スミスなんじゃないのか?



前作が映る(劇中ではゲームの画面でもある)スクリーンからネオらが出てくるカットがあり、映画から現実へというイメージになっている。

ネオとトリニティの男女の距離感は、トランジェンダーというよりは、現在の世論の男女の距離感だろうか。
男女の区別なくという距離感0になることで映画が終わる。

 

ボットの人間の落下は、『ハプニング』や『ワイルド・スピード スカイミッション』に似ている。

 

 

好みの台詞。

「誰もがシープル(いいなりの羊人間)になりたがってる」(「シープル」は、シープとピープルをかけ合わせた造語)

「それを分けるのは、感情だ。感情こそが重要だ。」

「映画は死んだ。ゲームも死んだ。物語も死んだ」

 

 

前作のアナキストの計画(理論)よりも、今作のアナリストの無計画(感情)に支配がとって代わられてた。
それは、まさに現代の感情論やポストトゥルース、情報過多により、正しい情報よりも心地よい情動に、人は動かされ、メディアの快感滂沱や情報制限に飲みこまれてしまった。



前作までは選択がテーマだったが、今作は途中から選択をさせない。
信じるという行為へと収斂していく。
最後の最後は、トリニティの選択にかけるが、その選択には家族(古いアメリカの家父長制)へと決別を告げる。
それは右翼化へ流れ、民主的な政治の敗北につながっていく。

 

 

ラストシーンで虹の話が出るが、虹はLGBTQのシンボルである。

トリニティにつけられたティファニーは、フェミニズムでは批判されることも多い映画『ティファニーで朝食を』(1961) から。

 

トリニティは、ミソジニー発言を繰り返すアナリストの顎を砕き、喉を切り裂く。

だが、トリニティは、アナリストに「セカンドチャンスをくれて、ありがとう」とも言う。

 

ジェシカ・ヘンウィックはザンビア系イギリス人の父と中国系シンガポール人の母の間に生まれ、英国のテレビシリーズで初めて主役を演じた東アジア系女優としても知られている。
キアヌ・リーヴスも多様なミックス。
ニール・パトリック・ハリスはゲイをカミングアウトしているし、カメオのクリスティーナ・リッチはDVと拒食症で苦しんだ経験を持つ。

ポストクレジットシーンに出てくる『キャットリックス』は猫動画と映画を並べる現代への警鐘。

 

ネオとトリニティのラブストーリーだけでなく、映画の始まりが、バッグスを心配するジュードで始まる。
もう一つ、男女コンビがいる。バッグスとモーフィアスで二人が協力しているので、最初に心配していたジュードは存在感を失くす。
こういうところが今回は雑よね。
だけど、この二人は、ネオの姿を見て、ネオ信者となって、薬無しで目覚めたということは作品のファンてことよね。なにより、最後救いに来るスミスはネオの最大のファンよね。
再生させたアナリストは利用価値しか見てないけど。
観客にはシープルではないはず、というラナ・ウォシャウスキーから映画ファンへのメッセージともとれる。

『3』で悲劇的に終わった愛をハッピーエンドでやり直すという意味では、やはり『シン・マトリックス𝄇』なんだな。

庵野秀明には実写で映画監督が女性を救う話『式日』を撮っている。
大作を撮れない映画監督の大作と言えば、フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』。
この主人公も夢の中で自分が空を飛ぶシーンがある。

 

今作では、EDで『1』のEDテーマだったRage Against The Machineの『Wake Up』の女性ボーカル版カバーが流れます。

 

 

 

_________________________________

追記あり。

『マトリックス』の『1』から『2』へ行くときに、実は放り投げていたものにきちんと説明をつけていき、始まりではなく決着をどうつけていくかについて描く、挑戦が始まった。
トリロジーへの流れがはじまり、上手くケ着をつけている者は本当に少なかったなかで、現実否定ではなく、どう折り合いをつけるかを描き、継続するなら妥協と決断の意味、それがあるならば、敗北にも価値があることを描き出した。
Sfはサイエンスであるからこそ、科学的な実質に向き合うことがあり、『バック・トウゥ・ザ・フューチャー』も戻ること、勝負に出ないことの意味に終着させた。

面白さは、ある種、そのジャンルや思想を好むかにより、時代とともに変わってしまう。
だからこそ、この実は個人的な物語を取り戻す作業をし、この分かちがたい陳腐化する現実と時間の流れを残酷にも突きつけるという形をとったのではないか。

堅苦しく自分で何とかしなければならない現実の世界(オリジナリティ)よりも距離を取りルールの中では自由な仮想空間(ネット世界やシリーズやユニバース)を享受する邦画好まれる時代で、オリジナリティの価値を、逆説的に問うたともいえる。

きっとこれからも続く、シリーズものの陳腐化へとエールを込めて。

その中でも技術は上がり、マトリックスの中も美しい世界に変えられるのだから。

 

 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (denkihanabi)
2021-12-25 17:01:08
これ1回見ただけで書いたの?深いなあ。さすが菱沼先生。ラストのおまけがけっこう面白かった。「ラストナイトインソーホー」もお願いします。
返信する
Unknown (ひし)
2021-12-26 13:48:44
denkihanabiさんへ

一階だけではありますが、元々シリーズが好きで何度か見ているのと、詳細部分の検証は他の方の文章や動画も参考にしています。
その上で、自分の意見を軸に、いい部分は取り入れつつ、書かせてもらってます。
返信する

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