書名 :ぼくらはそれでも肉を食う
副書名 :人と動物の奇妙な関係
著者名 :ハロルド・ハーツォグ/著 , 山形浩生/訳 , 守岡桜/訳 , 森本正史/訳
出版者 :柏書房
出版年 :2011.6
原書名 :Some we love,some we hate,some we eat./の翻訳
要旨(BOOK):イルカ殺しはかわいそう、でも、焼肉もマグロ丼も大好き。この矛盾、いったいどうしたらいい?人間のある重要な側面についての、魅力的で、思慮に富む 、痛快な探求の書。
動物を殺して肉を食べるのは悪いことだ。
最近この手のアメリカ的倫理に関する本がたくさんでてるような気がします。
アメリカ人 特に白人の方々の多くが ”進化論を信じない” なんて宗教感もすごいですが、マニアックな(?)動物愛護についてもちょっとYAYA的に理解不能...
理解不能ではありますが ”偽善” の一言でかたずけるのも少し違う気がする...
人にとっての永遠の謎 ”人って何?” に繋がる、実はけっこう奥深いテーマだったりして...
●ポイント1:食べちゃいけない動物と食べていい動物の違いって?
”魚は動物じゃないから食べてもいいの” というベジタリアンは少なくないそうです。
愛猫家が猫に注ぐ愛情の結果として、毎年飼い猫に殺される小動物や鳥の数は、生物実験に利用される動物の数の20倍以上。
絶滅に瀕した動物を救うための寄付をしようというとき、金額を決定するいちばん大きな要素は、その動物の目の大きさ。
つまり生と死の境は見た目で決まる?...
●ポイント2:ベジタリアンは倫理的にいい人なのか?
ヒトラーは菜食主義者で、肉を忌み嫌っていた。彼は動物を愛していたので、科学研究のために動物を殺すことに異議をとなえ、狩猟や競馬は封建社会の残滓だと信じていた。ユダヤ人たちを強制収容所に送ったが、ユダヤ人たちが飼っていたペットは麻酔を使って安楽死させた。
動物開放運動のテロリストによる企業のオフィス爆破などが増加しており、その対策として2006年に動物事業者テロリズム法が可決された。
どんな世界にも、いろいろな人がいます...
●ポイント3:そもそも肉食の何がいやなのか?
人びとが肉を含む多くの動物製品に嫌悪感を持つのは、自分たちが死ぬことを動物から連想して不快になるからだ。 食物心理学者ポール・ロジン
肉食をしないことで食用動物たちが耳に穴を開けられたりしっぽを切り落とされたり、去勢されたりくちばしを切られたり、赤むけするほど狭いカゴに押し込められたり、激しく変動する天候のなかカゴに詰め込まれて輸送されたりしなくてすむようになる。
ここらは分かりやすいですね。
この本の特徴は、客観的に肉食について考えていることです。
ベジタリアンも肉食派もたくさんインタビュー受けてますが、どちらにしても完璧な正義はなくて、矛盾点やヘリクツがでてきます。
著者は、そいうところがしょせん限界のある人間なのさ と割り切ってますので、パンピーのYAYA的にも読みやすいでした。
YAYA的に思ったことは...
ベジタリアンって、倫理がどうのこうのというより、一種のクラブ活動なんじゃないの?
野菜中心のレシピ集めたり、マニアックな仲間内でパーティしたり、ダイエットが順調に進んだり...
なんか同じ趣旨の仲間内でわいわいできて楽しいのかも。
別の本で読みましたが、有名な英3文字の白トンガリ帽子の団体の方々も仲間でのキャンプとか普通に楽しんでましたし...
上の本と違い、肉食に対する批判中心の本がこれ。
書名 :イーティング・アニマル
副書名 :アメリカ工場式畜産の難題
著者名 :ジョナサン・サフラン・フォア/著 , 黒川由美/訳
出版者 :東洋書林
出版年 :2011.4
原書名 :Eating animals./の翻訳
要旨(BOOK):食べ物にまつわる物語は、ヒトの歴史であり、価値観でもある。では、豚肉の 消費量や牛の屠畜数といったデータを肉食というひとつの物語にあてはめた際 、どのような「選択」が浮かび上がるのだろうか?機械化された食肉の大量生産、動物愛護、民族的な食習慣、そして菜食主義者でいること。これらが複雑 に絡み合う「迷路」に生きる俊英作家が、綿密な取材のもと描く現代アメリカ 社会のとある神話…。米国食肉産業のうんざりするような真実。
アメリカ人は一生にうちに2万1千頭分の動物の肉を食べる。
工場生産される鶏はたいてい生後39日で処理される。異常に早く成鳥になるよう遺伝的に操作されているので、処理されなくても、それ以上長くは生きられない。
今ほど安価にタンパク質が手に入る時代はない。住宅の建設費はこの半世紀で1500%、新車は1400%も上昇したのに、卵と鶏の価格は2倍にもならない。食品の価格がほかの商品に比べて下落していくかぎり、畜産家は生産コストを抑えて食肉を生産するし、家畜の健康を多少損なうことになっても、遺伝子工学的な方法を採用して生産目標を達成していくしかありません。
てな感じで、延々と食用動物の悲惨な一生の実態を教えてくれます。
しかし
放し飼いのような良好な環境で育てられる動物だけを食べるという道徳的に正しい肉食を実績するのは現実的でない。
そんな動物だけでは全米の消費量をまかなうことなどできない。NY1市だけでも無理。
それゆえに
菜食主義に向かうしかない。
最初の本に出てくる怪しいベジタリアンにくらべると、話のすじは通っているように思えます。
すじは通るけど...
なんか肉食べる人って感性の低い、頭の悪い人って感じで書いてあって、ちょっと反抗したくなります。
この手の本の先駆者的なのが次の本です。
書名 :雑食動物のジレンマ 上
副書名 :ある4つの食事の自然史
著者名 :マイケル・ポーラン/〔著〕 , ラッセル秀子/訳
出版者 :東洋経済新報社
出版年 :2009.11
原書名 :The omnivore’s dilemma./の翻訳
要旨(BOOK):肥満の原因は何か?健康にも環境にも悪いものでさえ食べてしまう雑食動物の人間は何を食べるべきなのか。その答えを求めて、ファストフード、オーガニックフード、スローフードの食物連鎖を追う旅が始まる。全米100万部突破のベストセラー。
いちばんの読みどころは著者が1頭の子牛のオーナーとなり、その牛がアメリカの一般的な処理ルートを流れる場合、どんな一生を送るのか...というのを追っかけたところです。
本来は牧草しか食べれない牛を、育成コストを下げるために安価なコーンを食べるように改造し、機械のように育て、処理していく様は...非現実的でさえあり、なんか怖いです。
最近TVでよく見る日本の畜産って、アニマルウェルフェア的で世界の先端いってるんだなぁ って、思いました。
ちなみにこの本では ”ポリフェイス牧場” というところを高倫理的と褒めちぎっていましたが...
上の ”イーティング・アニマル” では ”工場式で鶏を生産し、見学者が来るときだけ草地に放つ。” と非難してました。
どうなんでしょうね。
有機農法のところでも、ニセがあるといううわさは聞きますが...