一期一会

日々是好日な身辺雑記

日本近代史とタンゴステップ

2012年06月02日 | 日記

GW明けから日経新聞の書評でのお薦め本「日本近代史」を読み始め、
10日程で読み終えた。
その後で知人から借りた「タンゴステップ」(上)(下)を読む。
5月に読んだ本はこの2冊(3?)プラス「BORN TO RUN」の読み返しだった。
日本の歴史に対する知識は年表程度しかなく、その他には歴史小説を読んで知った部分が多いのだが、
小説はあくまでフィクションなので・・・ということから、日経お薦め本の「日本近代史」を読んでみることにした。
2年程前に半藤一利の「幕末史」を読んだが、講談調で(ちょっとなぁ~)という感じだった。
その点「日本近代史」は多数の参考文献から構築された歴史解説書だった。

日本の歴史上、最も激動期だった1857(安政4)年から1937(昭和12)までの80年間を
「改革」「革命」「建設」「運用」「再編」「危機」という六つの時代に区分し、
明治維新後数十年の間に目覚ましい近代化を成し遂げながら、やがて崩壊へと突き進む
根本原因が参考文献を元に、著者の視点で語られている。

その参考文献の引用の中に木戸孝允が坂本龍馬に裏書きさせたという薩長同盟に関する
確認文書や、西郷隆盛の腹心だった伊地知正治が大久保利通に宛て書かれた
徳川慶喜が大政奉還したにも関わらず、領地没収等で追いつめる薩摩藩の政策に対する
反対意見書など興味深かった。
唯、その書簡が候文なので読み進めるのに時間がかかった。
それと日清戦争に勝利し、当時の国家予算が8000万円の時に3億3000万円の
賠償金を清国から取り、その内2億8000円を軍備拡張予算に廻し、公共事業費(10年)は4000万円という
明治政府の「富国強兵」の強兵に力をいれるその背景とかが興味深い。

私の歴史に関する少ない知識は殆ど歴史小説から得たものである。
司馬遼太郎の幕末から明治維新の時代の正月は殆ど読んでいる。
読んでないのが新選組と土方歳三を描いた「燃えよ剣」くらい。
「竜馬がゆく」も「坂の上の雲」も初版本で買っている。
どちらも40年以上前の出版である。
司馬遼太郎のこの2作品に代表される歴史観「司馬史観」について
評論家の佐高信あたりから批判的意見が出ているがどうなんだろう?
司馬遼太郎の愛読者は歴史小説として読みながらも、その中で展開される司馬史観を
歴史として受け止めてもいるのは確かだろうが、それを云々するのは如何か?

太平洋戦争時の海軍を描いた阿川弘之の三部作「米内光政」
「山本五十六」「井上成美」は絶対のお薦め本である。

「日本近代史」から外れてしまったが、正直なところ歴史解説書より
歴史小説のほうが面白い。
定年退職の時に社内有志の方々から5万円分の図書券を頂いた。
その図書券は有効に使わせて頂いたが、その内の2冊、山川出版社の「詳説 世界史研究」「詳説 日本史研究」
(計4800円)が積読状態になっているので、今年の夏休みの旅行中には読もう!

「日本近代史」を読み終え、ようやく4月に知人から借りた「タンゴステップ」を手にとった。
この警察小説・ミステリーは「ミレニアム」と同じくスウェーデンの小説である。
癌が発見された37歳の警察官ステファン・リンドマンがその日に病院の
カフェーで手にとった新聞で定年退官した元同僚警察官のヘルベルト・モリーンの
殺害事件を知る。癌治療の開始まで3週間あることから休暇をとり、遠く離れた地に
向かい、その地の警察官ジョゼッペ・ラーソンと事件の解決にあたるという筋である。

プロローグでナチス戦犯を絞首刑にする話から始るこの本は、その54年後の事件を
書いているのだが、当然その関連はある。題名の「タンゴステップ」もである。
タンゴと言えばアルゼンチン、アルゼンチンと言えばナチス戦犯が逃れた地
としても知られている。これ以上は書きません。ミステリーの筋書きを書くのは
マナー違反ですから。この本はナチス発祥の地ドイツでベストセラーになったらしい。
ドイツの懐の深さですね。事件を追っていく過程でのステファンの体調の変化と
心理状況も丹念に書かれている。癌の結果についても書きません。
もし関心がでてきたら読んで見て下さい。創元推理文庫 ヘニング・マンケル著
「タンゴステップ」(上)(下)です。
なかなかミステリーとして面白く、途中推理しながら読むと言う典型的な本です。

これから図書館に行き、次に読む本を探してこよう。