一期一会

日々是好日な身辺雑記

コロナ禍の年の瀬

2020年12月27日 | 日記

日課の午前中のジョギングを止めている為テレビをつけると、コロナ感染再拡大の話題が多く、今週はそれに加えてイギリスでの変異種の話だ。同じ話を何回聞いてもと思うが、3時頃になるとその日の感染者数が気になりテレビをつけてしまう。 
東京の1日あたりの新規感染者数が1000人に迫るという状況だが、人出という事では4月の緊急事態宣言時のような緊迫感がないような感じだ。

そんな中、昨日は先月グランドオープンしたサクラタウンにカミさんと行ってきた。
カミさんの日頃の運動不足解消の為に、オープン時間10:00に合わせ9:00過ぎに家を出て、東川沿いの歩道を50分ほど歩いた。
サクラタウンは我が町とKADOKAWAが共同プロジェクトとして推進する(COOL JAPAN FOREST構想)の拠点施設で、KADOKAWAが運営するイベントスペース、ホテル、ショップ&レストラン、書店ダ・ヴィンチストアとKADOKAWAのオフィスがある。隈研吾氏設計の角川武蔵野ミュージアムは70×50cmの花崗岩の石3万枚が貼られたユニークな建物で、美術館、博物館、図書館が融合した施設だ。

午後から来客の用事があったのでミュージアムに入らなかったが、ダ・ヴィンチストアは色々なジャンルの本があり素晴らしいとカミさんはいたく感激の様子だった。
そしてアニメなどのポップカルチャーの発信の地として、今話題の鬼滅の刃やアニメのフィギュアがあり、けっこうな値段だがアニメファンは買っていくのだろう。
日本のアニメは海外でも人気だが、コロナが収束すれば羽田からの直通バスもあるので、海外からの観光客で賑わうのだろう。









そしてコロナの再拡大により年末年始の外出自粛が言われている中、日経別紙に12/27〜1/9までのテレビ番組表が載っていたが、明日から1/3までは正月番組編成になるので、いつも見ている朝ドラと経済・報道番組はやらない。紅白歌合戦も見ないし、バラエティも見ないが、1/1のNHKBS(欲望の資本主義2021)と1/3のNHK Eテレ囲碁対局(仲邑菫×芝野虎丸)は見逃さないように録画予約をした。
(欲望の資本主義)は2017年から正月のドキュメンタリー番組として、米スティグリッツや仏ジャック・アタリなどの経済学者が現在の資本主義の矛盾を論ずる良質な番組だ。仲邑菫は11歳のプロ女性棋士で、対局を見た事がないので楽しみだ。それも相手が21歳の若手棋士で王座の芝野虎丸だ。





そんな外出自粛の寝正月用にと5冊の本を用意した。沢木耕太郎の対談集セッションズ(訊いて、聴く)は今年3月から4冊出版されており、1の(達人、かく語りき)は8月に図書館に予約しておいたが、今週順番が来て借りられ今日読み終えた。8月に読んだエッセイ(銀河を渡る)に、全学連委員長唐牛健太郎と彼に資金提供した田中清玄の事が書かれており、(達人、語りき)で西部邁との対談でこの事が語られている事を知った。田中清玄は共産党書記長から獄中転向し、右翼と言われるようになるその経歴に関心を持っていたが、この本は毎日新聞の記者だった大須賀瑞夫が2年間のロングインタビューを元に、自伝として編纂したものだ。

セッションズは過去に雑誌や新聞に掲載された対談集で、(達人、かく語りき)の対談相手には、吉本隆明、西部邁など故人も含まれている。セッションズというのは、ジャズのジャム・セッションのように、ゆるやかな方向性が設定されると、あとは演奏者の自由な判断によって演奏されるフリージャズのような対談という意味でのタイトルだ。
この対談集もノンフィクションライターの沢木耕太郎らしく、事前に対談相手の資料や著書を読み込んで臨んでいるのが分かる。そして相手もある程度彼を知っているか交遊のある人物なので、インタビュー的ではなく対話となっているので、その内容も興味深いものだった。そして彼のライターとしての大きな特長である、何事も肯定的に捉えるという点が出ている。

2018年に1人で台湾一周旅行に行く前に、台湾関連本を何冊か読み、その中に李登輝総統の本もあったが、(李登輝秘録)は亡くなった7月に発行されたもので、(22歳まで日本人だった)という氏の政治家人生の本で、産経新聞論説委員の河崎真澄氏によって書かれたものだ。

(ノースライト)は昨年2月に発行されると同時に予約したが、100人以上の待ち人数となっていてそれがなかなか減らないので、いったん予約解消した。1ヶ月前に再度予約したがそれでも58人で、市内8ヶ所の図書館に12冊が蔵書となっているが、予約が増え続ける人気小説だ。そんな順番待ちに痺れを切らして寝正月用として購入した。

(達人、かく語りき)は読み終えたので、4冊になったがこれで年末年始の外出自粛生活に対応出来るだろう。


スポーツクラブ

2020年12月25日 | 日記
昨日は10:30からテニスをした。いつもはその前に同じ航空公園内の周回2kmのジョギングコースを3周するのだが、昨日は走らず公園内を歩いて廻った。
グランドではサッカーやラクロスをやっていたので金網越しにその練習を見ていた。
その後周回コースを歩いていたら、4月の緊急事態宣言の時に立てられた●マスクの着用●2m以上の間隔●短時間の運動と書かれた看板が目についた。
緊急事態宣言の解除と共に、この看板にカバーがかけられていたが、最近の感染拡大によりそのカバーを外したのだろう。 
そしてスピーカーでマスク着用のアナウンスをしていた。
ジョギングで飛沫が飛ぶわけでもないし、ここまでの警戒が必要なのかと思った。





ただマスク着用が嫌で走らなかった訳ではなく、2ヶ月くらい前から走ると踵が痛み、整形外科に行きレントゲンを撮ったら、アキレス腱髄液包炎(ハグルンド病)と診断された。
前から踵の骨の出っ張りと、長い距離を走った後の踵の痛みを感じていたが、保冷剤でアイシングをしながら騙し騙し走っていた。整形外科では1週間おきにステロイド注射を2回うってもらい、湿布薬を3週間くらい貼り続け、良くなったと思い2週間前に14kmのジョギングをしたらまた踵が痛み出し、そして膝も痛くなった。
また整形外科に行っても、電気と湿布療法で完治までに期間がかかるのと、その間運動不足にもなる事を考え、ジョギングを止めてスポーツジムで膝周りの筋肉強化で対処しようと思った。

ジョギングに代わる有酸素運動としてスイミングを考えたので、プール付きのスポーツクラブを検討した。家から歩いて3分くらいの所に西武のフィットネスクラブがあり便利だが、プールが無いので検討から外した。市内にプール付きが3ヶ所あるが、2ヶ所に行って見学と説明を受けてきた。
選定のポイントはトレーニングメニュー作りへのサポート、コロナ対策、そして料金だ。
一方は東京、神奈川、埼玉に16店舗あり、スポーツスパを名乗って設備も良く、料金もこちらが安かった。もう一方はコナミスポーツクラブで、ここは定年まで勤めた会社の健保組合が法人会員で、定年後1年間は利用出来たので何回か使った。
元々はダンベルを持っている事もあり、インドアでのウエイトトレーニングには関心がなく、アウトドアでのジョギングやテニスが好きだった。ただ筋トレは高齢者ほど必要ではないかと思うようになった。整形外科に行くと大勢の高齢者がいるが、腰痛や膝の痛みなどは電気療法だけでは治らないだろうと素人診断をしている。また国の医療保険の支出が増えるだけだろうとも思ってしまう。

話は逸れたが、料金も少し高く、逆にウエイトトレーニングのフロアーももう一方より狭かったが、スポーツスパとスポーツクラブの違いのようなものを感じ、コナミに決め今日入会手続きをしてきた。平日(月〜金)の17:00までのフリー会員になったが、隔週や週一、週二のコースもあったがそれでは運動にならない。火曜日が定休日で木曜日はテニスなので、月、水、金の午前中に通おうと思っており、ウエイトトレーニングを1時間、その後でスイミング1000mを40分と考えている。
その他にヨガやエアロビクスのクラスもあるが、膝の様子を見ながら徐々に考えていこう。
年明けの1月4日にトレーナーのパーソナルサポートを受けるように予約してきた。

ウガイと手洗いの励行と自粛生活でコロナ予防をしても、それでは足腰や体力も衰え、免疫力も落ちてしまうので、積極的な運動で身体的抵抗力を高める事が重要だ。


「大平正芳 理念と外交」服部龍二

2020年12月20日 | 日記
図書館から借りた「大平正芳 理念と外交」を昨日から読み始め今日読み終えた。
何故今大平正芳かと言うと、日経新聞で月間連載の(私の履歴書)が今月は元通産次官の福川伸次氏で、この人物は知らなかったが、幼少期から始まり東大を卒業し1955年に通産省に入省するまでが、第1週で語られる。第2週ではJETROに出向しアムステルダムに赴任し、そこでの生活が語られ、12日(土)からは、通産省に戻り大平正芳が通産大臣に就任した時に秘書官として仕え、日米繊維交渉や新日鐡設立の秘話が語られる。
大平内閣が発足すると首相秘書官となり、石油危機や日中交渉など大平正芳との話が20日(日)現在まで続いている。(私の履歴書)で一人の人物との関わりが、これだけ永く語られるのは珍しい。
大平正芳を思慮深き読書家とし、その政治家・人間像を語るこの連載を読んで、改めて大平正芳に関心を持って図書館からこの本を借りた。
勿論若い頃から政治には関心があり、国政選挙もパスした事はないので、政治家大平正芳は知っている。

この本は1936年に大蔵官僚になってから1980年心筋梗塞で亡くなるまでが描かれているが、殆んどが通産大臣、外務大臣、首相としての外交を中心としている。
佐藤内閣で通産大臣となり日米繊維交渉にあたり、対米関係を第一に考えていたが、アメリカの繊維の自主規制の要求は筋違いとしたが、佐藤首相が沖縄返還の条件に繊維の自主規制の密約をし、メディアからは(糸で縄を買った)と揶揄される。

田中内閣では池田内閣に次いで2度目の外務大臣になり、日中国交正常化を一任されるが、その困難さから日中関係を大晦日と元旦にたとえ、努力と忍耐が求められると論じた。

「日本と中国は、近いようで遠い国である。それは大晦日と元旦の関係にも例えられるであろうか。(中略)文化の捉え方や考え方、さらには人間の生き方全般に対する、対処の仕方が非常に違っているのである。(中略)日中両国民の間には共通点より相違点が多く、相互の理解は想像以上に難しい。しかしお互いに隣国として永久に付き合わなければならない以上、
よほどの努力と忍耐が双方に求められるのは当然である。」

訪中しての中国との交渉は難航したが、尖閣列島の問題に関しては、(この問題については、北京訪問の際は議論しなかった。中国側は国交正常化という大きな問題を解決しなければならない時に、このようなマイナーな問題をとりあげるのは賢明でないと判断しているように感じられ、中国外交は実際的だと思った)と述べている。

周恩来の夜型の執務振りも報じられていたが、深夜11時半から始まった会談が2時間に及ぶ事もあった。日中国交正常化がなったのは、周恩来が賠償請求権を放棄したからだろう。
現在に至るまで韓国のように個人の請求権は別であるとは言ってこない。

当時朝日新聞を取っていたが、台湾との関係から日中国交正常化に関して、福田派、中曽根派からの反対意見も根強く、青嵐会というグループを石原慎太郎、渡辺美智雄、中川一郎、浜田幸一などの強面のメンバーが結成し、その反対活動が紙面を賑わしていた。石原慎太郎は今でも中国を支那と呼ぶ時がある。

その日中国交正常化交渉以外でも、石油危機の時のアメリカやEC(現EU)との原油輸入数量割当ての交渉、金大中事件などの外交秘話が描かれている。1973年には国連総会で演説し、アジアの安定と秩序に基づいた繁栄を求め、国連財政再建の為に1000万ドルの臨時支出すると表明している。予定の30分を大幅に超える演説だったが、アメリカやインドネシアなど各国代表団から握手を求められる成功だった。

この本ではカーター大統領やドイツのシュミット首相との信頼関係についても描かれ、カーターがイランで人質救出に失敗した後での首脳会談では、(われわれ日本人は、最も雄弁ではないかもしれませんが、、貴国にとって確固たる、そして最も信頼できる友邦であり続けます)と英語でスピーチして、カーターに賞賛されている。

この本を読んでいると田中と大平の(俺、お前)の盟友関係で、田中は外交を大平に任せ、外交の本番での主役は田中で、振り付けは大平という関係性が分かる。
当然ロッキード事件についても描かれているが長くなるのでカット。


大平正芳をテレビなどで見ていた記憶は(アー、ウー)という独特の語り口で、鈍牛とも称されていたが、発言録からあの(アー、ウー)を削除すると見事な名論文になるとも言われていた。即断即決の田中が(コンピュータ付きブルドーザー)で、大平が(行動する哲学者)と言われたゆえんだろう。その大平正芳が再評価され、民主党の野田元総理も同じく財政再建を重要視した事から、(大平さんは世論に迎合するのではなく、世論を導こうとした)と評価している。

この本は2014年に岩波書店から出版されたものを、加筆修正し昨年10月に文藝春秋から文春学藝ライブラリーとして復刊されたものだ。大平正芳の政治家としての外交に対する哲学や理念が描かれているが、クリスチャンで読書家だった人間像も描かれている。
著者服部龍二は政治学博士で、現在中央大学総合政策部の教授だ。膨大な参考文献と(私の履歴書)の福川伸次氏など多数の関係者へのインタビューと、大平の講話・演説を基に描かれたもので、政治ジャーナリストと言われる人が描くヨイショ政治家伝とは違い、読み応えのある一冊だった。


「駅物語」朱野帰子

2020年12月17日 | 日記
読みたい新刊本は日経新聞の書籍広告や書評、書店での平積み本の立ち読みなどから、読書アプリに読みたい本として登録しておく。断捨離中で物を増やしたくないので原則図書館から借りるが、蔵書になっていなくてもリクエストすると購入してもらええる。

書店も取り揃えている本やレイアウトなどで好みがあり、現役時代は丸の内の丸善オアゾを利用する事が多かったが、丸の内へ行く機会が少ないので、最近は川越や新宿に行った時にブックファーストに立ち寄る事が多い。どちらにも紀伊国屋書店があるが何故かブックファーストへ足が向く。

我が町の駅の周りにあった4軒の書店がなくなり、しばらくその状態が続いたが、2ヶ月前にオープンになった駅ビル商業施設の中にTSUTAYAが出来た。
ただ海外小説が少なく山岳関連本も無いので、特集記事によりダイヤモンドや東洋経済、NHK囲碁を買う時くらいであまり行かない。書店経営もAmazonや読書離れなどの影響で難しいのだろう。

11月末の日経新聞別紙プラス1に、主人公が仕事に取り組む姿を描く(お仕事小説)というランキングが載っていた。
10位までで読んだのは1位の「舟を編む」と4位の芥川賞受賞作「コンビニ人間」だけだが、他の作品で興味をひいたのが8位「駅物語」で、早速図書館に予約した。
2013年8月書き下ろし刊行、2015年文庫版が刊行されているが、この本を知らなかった。

「パチンコ」の次に読んだこの本は、東本州鉄道の入社試験で一番だった若菜直が、総合職ではなく本人の希望で現業職として東京駅に配属される。鉄道マニアの弟が車中で具合が悪くなり病院に運ばれ、その病院に駆けつける時に、東京駅で関わった乗客5人を探す為というのが、東京駅での現業職希望の理由なのだが、このへんの筋立てについては違和感もあるが深く考えずに読んだ。

新入社員として駅員の仕事に取り組む主人公若菜直の姿や、仕事を通しての同僚や先輩、上司との人間模様などに、探している5人の乗客のそれぞれの仕事人生が絡んでくる。ライトノベルと言うまで軽くはないが、本屋大賞のジャンルに入るような本であっさりと読めた。

そして今週ジョン•ル•カレが亡くなった。エスピオナージ小説の大家で、新刊本が出ると必ず読んでいたが、10月に読んだ「いまも謀略の地に」が最後の作品だったのだろうか。イギリスの情報機関MI6に勤めながら仮名で書いていた東西冷戦下のスパイ小説は、007とは違い現実の諜報戦を思わせるリアルな内容だ。

新刊本が出ると必ず読んでいたのは、ジョン・グリシャムのリーガルサスペンス、ロバート•B•パーカーのスペンサーシリーズなどだが、グリシャムは最近新刊本は出てないし、パーカーは亡くなっている。新刊本を待ちわびるような作家を見つけなければ。

ここからは「駅物語」とは全く関係なく、手紙でいうと「パチンコ」の追伸のようなものだ。日々のニュースが株価に影響を与えるのと、事実は小説より奇なりなので、ネット、新聞、TVでニュースはよく見る。
新聞は日経新聞、ネットニュースではBBCニュース、TVではワールドニュース(PBS、ABC)、NHK BSの国際報道2020を毎日見ている。BBCニュースは記事の掘り下げ方が深く、これが何故ネットで無料で見れるのかと思う。日本の大手新聞もネットニュースをやっているが、(ここから先は有料です)というのが殆どだ。BBCがNHKと同じく公共放送だからだろうが。
それ以外には色々なネットニュースの注目記事が見れるNewsPicksで、Push通知が来るので興味があるものだけ見ている。独自特集記事にも興味を惹くものがある。

そのNewsPicksで昨日Push通知があった記事が、DHC会長のネット上での在日コリアンに対する差別発言だ。その内容については不愉快になると思うのでここでは書かない。
DHCは化粧品や健康食品など消費者向け商品の会社だが、そこのTopとしての経営センスを疑われるものだ。同業のファンケルの株を持っていた事があり、現在も北の達人の株を保有しているが、Topがこんな発言をしたら不買運動での業績への影響を心配してしまう。

化粧品と言われるものはアフターシェーブローションとヘアトニックだけで資生堂なのと、健康食品は使っていないので、不買運動には参加できないが、こんなTopの会社の株は買わない。
逆に売り方にまわりたいくらいだ。


「パチンコ」ミン•ジン•リー

2020年12月12日 | 日記
京都旅行から帰ったら火曜日に図書館に予約しておいた本4冊が準備出来ましたとのメールが届いた。その他にカミさんが予約しておいた「パチンコ」も準備OKとのメールが届いたので、火曜日の午後に受け取りに行った。自分が予約した本より、この「パチンコ」が読みたかったので、カミさんに何回も確認していた。図書館の貸出期間は2週間でそれを過ぎると延滞日数が付くので、「パチンコ」を先に読ませてもらう事にした。
カミさんもBookoffや図書館での本をよく読むが読書傾向は違う。
ただ今年一番の本だと思った「モスクワの伯爵」はカミさんのオススメ本だった。
カミさんは図書館からの本以外に、英語本の多読サークルに入っており、そこで借りる本を読んで月2回の集まりに出るので、読まなければいけない本もある。
そして週3日とはいえ、まだ働いているので読書三昧とはいかない。
そんな事もあり先に読ませてもらった「パチンコ」を、日課の午前中のジョギングも止め、水曜日から読み始め今朝読み終えカミさんに渡した。

日本に統合されていた1910年の朝鮮半島から物語が始まる。
釜山沖の影島で下宿屋を営む夫婦キム・フニとキム・ヤンジンの娘として生まれたソンジャが、16歳の時に裕福そうな海産物仲買人のコ・ハンスと知り合い身籠もる。
それをコ・ハンスに告げた時に、日本に家庭があり妻と娘がいる事を知る。
結婚を考えていたソンジャは、その場で(二度と近ずかないで、今度近ずいたら、自分で命を絶ちます)と言い放ち、(結婚はできないが面倒はみる)という申し出を拒否して別れる。

当時の田舎の漁村で未婚の女性が妊娠するのは大変な事で、思い悩むソンジャに、結核で倒れ母娘に看病してもらったことに恩義を感じる若き牧師イサクが、ソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャとともに兄が住む大阪の鶴橋に渡る。

1910年の朝鮮半島から始まり、大阪から横浜と在日コリアン4世代の壮大な物語が展開する。
戦中、戦後の大阪での貧困からくる厳しい生活ぶりや、新天地を夢見て北朝鮮に渡る在日コリアンの姿が描かれている。
当然、日本人の差別意識や差別行為、日本の行政上のシステムとしての差別なども描かれている。ただ日本人を糾弾するようなストーリーではない。
ソンジャの息子ノアと付き合う日本人女子大生や、ソンジャの孫でアメリカの大学を卒業し、投資銀行で働くソロモンの恋人で韓国系アメリカ人などの、一様ではない在日コリアンへの意識も、深く掘り下げて描かれている。

この小説はアメリカでベストセラーになり、オバマ前大統領も良書として勧めているが、移民社会であるアメリカは戦中の日系人の強制収容所や、現在でもあらゆる人種差別や迫害があるので、この小説への関心も高いのだろう。

著者のミン・ジン・リーはソウル生まれの韓国系アメリカ人で、イエール大学、ジョージタウン大学のロースクールを出て企業内弁護士となり、その後執筆活動に専念する為に辞めた。ハーフの日本人の夫と息子がいて2007年から4年間東京に住んでいて、その時にこの本の着想を得て、在日コリアンへのインタビューなどをしたと言う。たしかに川崎市のヘイトスピーチ罰則条例のように、一部の日本人の中には明確に差別意識があるのだろう。

そういう差別という意味では色々考えさせられるが、今年読んだ本の中では「モスクワの伯爵」「あの本は読まれているか」に次いで心に残る本だった。

本棚には姜尚中の「在日」があるので、図書館からの本を読み終えたら、また読み返してみよう。