前回、相続税の配偶者控除を考慮しない場合について、子供により多くの資産を相続する場合について検討しました。
今回は、相続税の配偶者控除を考慮した場合について検討します。
まず、この相続税配偶者控除とは、よくある説明としては、配偶者が相続した課税資産が1億6千万円まで、あるいは法定相続分までであれば、非課税となる、というものです。
国税庁のWebサイトでは以下の説明になります。(参照:第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係)
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19の2-7 法第19条の2第1項第2号に規定する「当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額」の算出方法を算式で示すと、次のとおりである。 (昭47直資2-130追加、昭50直資2-257、平6課資2-114改正、平15課資2-1、平19課資2-5、課審6-3、平19課資2-5、課審6-3改正)
(注) 算式中の符号は、次のとおりである。
- Aは、当該相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下19の4─4までにおいて同じ。)により財産を取得したすべての者に係る相続税の総額
- Bは、当該相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額(当該合計額に1,000円未満の端数があるとき又はその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てるものとする。以下19の2─7の2において同じ。)
- Cは、法第19条の2第1項第2号イに掲げる金額
- Dは、法第19条の2第1項第2号ロに掲げる金額
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そして、C および D の説明としては以下になります。(参照:相続税法)
法定相続人:配偶者および子供(n人)
本人死亡時に配偶者が相続する資産割合:p
配偶者が相続する遺産割合を p とすると、一次相続後の配偶者の資産 b2(p) は以下になります。
b2(p) = (配偶者の資産) + (相続した遺産)- (相続税配偶者控除を考慮した、配偶者に対する相続税)= b + p x a - G(a,p)
子供が相続する遺産割合の合計は 1-p なので、一次相続後の子供全員の資産 c(p) は以下になります。
c(p) = (子供全員が相続した資産)- (子供全員に対する相続税)= (1-p) x a - (1-p) x F= (1-p) x (a-F)
よって、相続税の基礎控除は 3000 + 600 x n
課税資産総額:= 配偶者資産 - 基礎控除 より、課税資産総額は t2 = b2(p) - (3000+600 x n)
子供一人当たりの法定相続分が 1/n なので、子供一人の課税資産は t2 / n 。よって子供の法定相続分に対する相続税は f (t2 / n )
二次相続による子供全員に対する相続税は F2 = n x f(t2/n)
相続によって子供全員の資産 c2(p) は以下になります。
c2(p) = (一次相続後の子供全員の資産)+(一次相続後の配偶者の資産)ー(二次相続による子供全員の相続税)
= c(p) + b2(p) - F2
= (1-p) x (a-F) + b + p x a - G(a,p) - n x f(t2/n)
= (1-p) x (a-F) + b + p x a - G(a,p) - n x f [ { b + p x a - G(a,p) - (3000 + 600 x n) } / n ] ・・・①
ここで、b = k x a とし、新たな変数 k を導入します。よって①の b + p x a の箇所は、 k x a + p x a = (k + p) x a
さらに、c2(p) を規格化するため、H(p) = c2(p) / ( a + b ) = c2(p) / ( (1+k) x a) を定義します。
よって①より
H(p) = [ (1-p) x (a-F) + (k + p) x a - G(a,p) - n x f { { (k + p) x a - G(a,p) - (3000 + 600 x n)} /n } ] / ( (1+k) x a) ・・・②
ゆえに、H(p) を最大化する p を求める、ということになります。
これを解析的に解けるといいのですが、とてもできそうな気がしません。
今回は、相続税配偶者控除を考慮した場合の、二次相続後の子供全員が受け取る遺産総額の定式化までとします。
次回、n, a, k, p のパラメータに対して具体的にH(p) を求め、H(p)が最大となる p について検討します。
今回のまとめ:
相続税配偶者控除を考慮して最終的に二次相続後の子供全員が受け取る遺産総額を求めました。
本人と配偶者の資産:a, b = a x k
法定相続人:配偶者および子供(n人)
本人死亡時に配偶者が相続する資産割合:p
相続税配偶者控除を考慮した、配偶者に対する相続税:G(a,p)
G = (p -1/2) x F ( a≧ 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 )
G = (p- 16,000/a) x F (16,000 < a < 32,000 かつ 1/2 < p ≦ 1 かつ 16,000/a ≦ p)
G = 0 (上記以外)
一次相続後の配偶者の資産: b2(p) = b + p x a - G(a,p)