購入した築古戸建物件のリフォームを行うことになりました。
見積もりはおよそ330万円ぐらいであり、このくらいの額になると、その内容としても単なる修繕だけにとどまらず、設備の入替なども含まれてきます。
その時に、会計処理としてどのようにすべきか疑問です。
よくネットでも、会計処理が修繕費なのか資本的支出なのかを判断する判定フローチャートがありますが、それらが混在する場合の処理がわからなかったため、税務署に聞いてきました。
質問1)については、
1. まず意味のある単位で作業を分けて、それぞれに対して原状回復なのか、それとも価値や耐久性を高めるものかを判断する。
2. 原状回復工事は1つにまとめてすべて修繕費として処理する。
3. 価値・耐久性向上の工事も1つにまとめ、判定フローチャートにしたがって処理をする。
「1. 」の「意味のある単位」とは、例えば洗濯パンの設置工事では、配管工事、取付工事、造作工事、洗濯パンの部材価格などを1つにまとめる、ということですね。ただ、「2.」「3.」で、同じタイプの工事をまとめるので、どのタイプなのかがはっきりしていれば、単位の大きさとしてはさほどこだわる必要はないと思います。しかし、どのタイプなのか、の判断は、質問2にも関係しますが、判断が分かれる場合もありますので、ある程度小さいな単位にわけてそれぞれのタイプを判断したほうがわかりやすいと思います。
「3.」については、金額が20万円未満なら修繕費にできるため、その場合は、このリフォーム工事はすべて修繕費として処理してよいことになります。
また、これは質問し忘れていたのですが、もし、原状回復かそうでないのか判断できない工事があった場合、それらも1つにまとめて、金額が60万円未満もしくは前期未取得価格の10%以下なら修繕費として処理してもよいと思います。
以下は実際に仕訳したExcelシートの一部抜粋(金額部分は伏せてます)です。
このようなシートを作成し、税務署で会計処理の仕方について相談しました。
「1.」の「意味のある単位」は1列目、そして2列目に工事内容、3列目に価格です。そして、6列目および7列目には、その工事のタイプ(原状回復か機能向上か)を書き、その理由を8列目に記載しています。
質問2でのタイプの判断が正しいかどうか、という点ですが、このような整理したシートを持参したせいか、すべて私の判断で処理して構わない、ということでした。
いつくか判断の例を示します。
修繕費と判断した工事内容)
- 天袋、障子、ふすまの張替(理由:張替であるから)
- クロスの張替、床CF貼り(理由:張替もしくは上張りであるから)
- 木部塗装、ベランダ防水塗装、鉄部塗装(理由:原状回復であるから)
- 壁面や天井の捨て貼り、クロス貼り(理由:原状回復であるから。後で詳述します。)
資本的支出と判断した工事内容)
- 畳からフローリングへのリフォーム(理由:機能変更であるから)
- 洗面台交換(理由:洗面化粧台を新しいモデルに交換することで価値向上となるから)
- トイレ工事(理由:シャワートイレやタオルリングなどこれまでになかった部材を取り付けるから)
- 在来浴室からユニットバスへの交換工事(理由:価値・耐久性を高めるから)
- 給湯器の交換(理由:既存の16号から20号へと交換するため。同じ号数なら修繕費でよいはず)
- モニターホン取替、コンセントカバー・スイッチ交換、火災報知器取付(理由:新規追加もしくは高機能な部材に交換するため)
また、見積もりにあった、ハウスクリーニング、ごみ処理、諸経費(工事車両のための駐車場契約、近隣への挨拶など)についてはどちらでもなく、外注費として処理することで了解を得ました。(つまり、これらも一括償却できます。)
今回の質問2で、修繕費なのか資本的支出なのかの判断に非常に迷ったのは、上の「修繕費と判断した工事内容」にある、捨て貼り・クロス貼りです。(以下、捨て貼りクロス施工と呼びます)
この捨て貼りクロス施工だけで90万円近くの費用がかかっていて、これがどちらになるのかによって今年償却できる費用が大きく変わってきます。
そもそも、この捨て貼りクロス施工とは何か。建物の壁は現状砂壁でそのままでクロスを張ることは難しいため、いったん砂壁に4mm厚のベニヤを貼り(捨て貼り)、その上にクロスを張る、という工事です。
元の砂壁を修繕するのではなく、また新たな部材(ベニヤ)を壁に貼ることになります。しかし、壁であることには変わりなく、特に捨て貼りクロスにすることで何か新しい機能が加わることでもありません。そこで、まずは私の判断として、これは修繕費である、という主張をしました。その根拠は以下の通りです。
- 物理的に追加しているが、階段やべランドの取付と異なり、同じ機能の部材を貼っているにすぎず、固定資産の価値を高めたりするものではないこと。
- 用途としてはあくまでも壁・天井を構成するものであり、用途変更に伴う改装・改造には当たらないこと。
- 砂壁の再補修と捨て貼りクロス施工の費用はほぼ同額であること。
- 築40年近くたっており、砂壁の一部劣化・汚損が目立ち、修繕が必要であること。
以上から、捨て貼りクロス施工は原状回復である。
このような説明をすることで、税務署員も納得し、修繕費で構わないでしょう、という判断をいただきました。用途も変わらず、機能も同じであることも重要ですが、金額としても大きく変わらない(価値が同程度ということか?)ことも結構重要といったニュアンスで話をされていました。
実は、この物件は壁が隣家と接しているテラスなので、捨て貼りの時に、砂壁とべニアの間に防音材を入れることも考えていました。結局、効果が少ないだろうということで見送りになりましたが、もし、その場合には、その防音材を入れた場合と入れなかった場合との差額が資本的支出として処理することになるのだと思います。