「降ろしてくれ。帰りたくないよー。女房も子供もパリにいるんだよー。」
場所はパリ・シャルル・ドゴール空港内のキンシャサ行きエールフランスの機内。
搭乗がほぼ終わる頃になって、本国コンゴへの強制送還処分の憂き目に遭ったコンゴ人2名が、通常の乗客とは別の後方の入り口から機内に連行され4,5名の仏人警官に押さえつけられながら一番後ろの座席に座らされている。彼らはとにかくわめき散らして、いつ止むのか見当もつかない騒ぎようである。
こうした場面に遭遇したのはこれで3回目だ。これまでの2回と異なり、今回は妻と子供は同乗していないので私は黙々と藤沢周平を読み続けていたが、しばらくしてコンゴ人乗客が色めき立った。
「俺たちは金を払ってこの飛行機に乗っているのに強制送還者と一緒に乗せられるとはどういうことだ。早くあの二人を飛行機から降ろせ。」
「こんなことが起こるのは、サルコジのせいよ。サルコジにやめさせるように要求すべきよ。」
「お前ら白人は、黒人のことを動物か何かと一緒だとでも思ってんじゃないのか。」
一人のコンゴ人が席を離れて、自分は飛行機から降りるから航空賃を払い戻してくれ、と言えば、キャビンアテンダントは次のように切り返した。
「飛行機が離陸のために動き出そうとしている時に着席するのは規則です。規則を守れない人は降りたければ降りなさい。その代わり、規則を守れないために飛行機を降りる人に航空賃の払い戻しがあるわけがない。キンシャサ行きの飛行機はほぼ毎回こんな調子だから次のフライトに延期しても結果は同じです。」
・・・一本取ったな!
ああ、これで少なくとも乗客は静かになる、と思ったら然に非ず。
しばらくして飛行機が動き出そうとした瞬間に、もう一人のコンゴ人が席を立った。そして、”強制送還者を飛行機から降ろすまで皆で団結して着席を拒否しよう”と、他の乗客に呼びかけた。これにはフランス人も含め多くの乗客が賛同して乗客がほぼ総立ちの状態になった。
結局、フランス警察は根負けして2人の送還者を飛行機から降ろさざるを得なかった。乗客の抗議で強制送還者が飛行機を降りるところを見たのは今回が初めてだ。
その前の2回はというと・・・
やはり同じような騒動と会話が展開された後、キャビンアテンダントが
「皆さん、落ち着いてください。彼ら(強制送還者)が騒ぐのは飛行機が離陸するまでです。飛行機が飛べば、あきらめて静かになりますから安心して着席してください。」
と説得に回った。
私と妻は、まさか、気休めだろう、と全く信じなかったが、結果は驚くべきことに飛行機が滑走路に向けて動き出した途端、彼らは観念したのかピタリとわめくのを止めたのである。
フランス人のキャビンアテンダントってすごいな、と感心した一幕だった。
それにしても最初の時には ”こんな騒動に遭遇することは一生に一度あるかどうかだろうな” と思っていたのだけれど・・・
あと何回くらいこんな飛行機に乗ることになるんだろう。(M)
余談(しろみ)・・・
そうそう、初めて乗り合わせたときは、送還者の後ろの席にいた彼の妻(らしき人)が泣きわめいていて、その声が機内に入った瞬間まず聞こえてきました。状況が良くわからなかった私は
??お産が始まっちゃうのかしら~?
などとトボケタことを言っていたのでした。だって陣痛で痛いから叫んでると思ったんだもーん。
場所はパリ・シャルル・ドゴール空港内のキンシャサ行きエールフランスの機内。
搭乗がほぼ終わる頃になって、本国コンゴへの強制送還処分の憂き目に遭ったコンゴ人2名が、通常の乗客とは別の後方の入り口から機内に連行され4,5名の仏人警官に押さえつけられながら一番後ろの座席に座らされている。彼らはとにかくわめき散らして、いつ止むのか見当もつかない騒ぎようである。
こうした場面に遭遇したのはこれで3回目だ。これまでの2回と異なり、今回は妻と子供は同乗していないので私は黙々と藤沢周平を読み続けていたが、しばらくしてコンゴ人乗客が色めき立った。
「俺たちは金を払ってこの飛行機に乗っているのに強制送還者と一緒に乗せられるとはどういうことだ。早くあの二人を飛行機から降ろせ。」
「こんなことが起こるのは、サルコジのせいよ。サルコジにやめさせるように要求すべきよ。」
「お前ら白人は、黒人のことを動物か何かと一緒だとでも思ってんじゃないのか。」
一人のコンゴ人が席を離れて、自分は飛行機から降りるから航空賃を払い戻してくれ、と言えば、キャビンアテンダントは次のように切り返した。
「飛行機が離陸のために動き出そうとしている時に着席するのは規則です。規則を守れない人は降りたければ降りなさい。その代わり、規則を守れないために飛行機を降りる人に航空賃の払い戻しがあるわけがない。キンシャサ行きの飛行機はほぼ毎回こんな調子だから次のフライトに延期しても結果は同じです。」
・・・一本取ったな!
ああ、これで少なくとも乗客は静かになる、と思ったら然に非ず。
しばらくして飛行機が動き出そうとした瞬間に、もう一人のコンゴ人が席を立った。そして、”強制送還者を飛行機から降ろすまで皆で団結して着席を拒否しよう”と、他の乗客に呼びかけた。これにはフランス人も含め多くの乗客が賛同して乗客がほぼ総立ちの状態になった。
結局、フランス警察は根負けして2人の送還者を飛行機から降ろさざるを得なかった。乗客の抗議で強制送還者が飛行機を降りるところを見たのは今回が初めてだ。
その前の2回はというと・・・
やはり同じような騒動と会話が展開された後、キャビンアテンダントが
「皆さん、落ち着いてください。彼ら(強制送還者)が騒ぐのは飛行機が離陸するまでです。飛行機が飛べば、あきらめて静かになりますから安心して着席してください。」
と説得に回った。
私と妻は、まさか、気休めだろう、と全く信じなかったが、結果は驚くべきことに飛行機が滑走路に向けて動き出した途端、彼らは観念したのかピタリとわめくのを止めたのである。
フランス人のキャビンアテンダントってすごいな、と感心した一幕だった。
それにしても最初の時には ”こんな騒動に遭遇することは一生に一度あるかどうかだろうな” と思っていたのだけれど・・・
あと何回くらいこんな飛行機に乗ることになるんだろう。(M)
余談(しろみ)・・・
そうそう、初めて乗り合わせたときは、送還者の後ろの席にいた彼の妻(らしき人)が泣きわめいていて、その声が機内に入った瞬間まず聞こえてきました。状況が良くわからなかった私は
??お産が始まっちゃうのかしら~?
などとトボケタことを言っていたのでした。だって陣痛で痛いから叫んでると思ったんだもーん。