キンシャサの空の玄関、ンジリ国際空港。
ここは我が家にとって忘れられない想い出が詰まった場所だ。
初めて家族でキンシャサに降り立った日。
大切なものを詰め込んだ新品のランドセルを次男がポーターに騙し取られた夜。
治安上の理由で半年間東京に帰していた家族との再会の瞬間。
休暇帰りでンジリ空港に到着したら、市内で銃撃戦が始まったために空港から出ることができず、家族全員そのまま乗ってきた飛行機でパリにトンボ帰りした蒸し暑い夜。
・・・・どれもこれも私にとって忘れがたい想い出だ。
今回はナイロビ行きの飛行機に乗るために来た。
空港に車で入っていくと、まずはポーター達が全速力で私の車を追いかける。荷物を降ろすために後部のドアを開けると5、6人が荷物を取ろうと殺到する。これに対して、荷物は2つだから2人で十分だ、と2名のポーターを指名する。荷物を100mくらい運んでくれることに対する謝礼を手渡すが、彼らはもっとよこせといつまでも必死に食い下がってくる。
しかし、これはほんの始まりに過ぎない。
その後、パスポートとチケットを確認する警察、空港職員、飛行機会社職員、安全確認をする内務省国境警備職員に加えて、なぜだか知らないけど立ち入りを許されている関係ない連中。彼らが次々と手伝ってあげようと言い寄ってくる。
そしてその申し出を拒否しないでいると、最後に待っているのは彼らとの値段交渉。
「50ドルくれ。」
「いや5ドルだ。」
「じゃあ20ドルくれ。」
「私はあなたに頼んでなんかない。あなたが勝手にやっただけだ。5ドルで不満ならそのお金を返しなさい。支払う理由はない。」
「・・・わかったよ。ムッシュ。」
だいたいこんな会話が展開されて、彼等はしぶしぶ帰っていく。正規職員からこうした要求をされることもあるのは彼らが十分な給料をもらってないことが一因だ。
それにしても、50ドルを要求してくるとは私も見くびられたものだ。最近はこうしたやりとりに慣れてはきたものの、いつまでたっても後味が悪い。彼らの要求を満額受け入れていたらカモになってしまうし、まったくこうした努力に報いないのも気の毒な気がする。実際にコンゴ人同士のやりとりを見ていると、ある程度の金を正規職員に握らせていることが多い。こうしたお金がコンゴ社会の潤滑油になっている面が多分にあるのだ。これが外国人相手だと当然に相場が高くなる、というか、吹っ掛けられることになる。
キンシャサで働くセネガル人の友人が、”キンシャサの空港はアフリカで最悪だ”と漏らしたことがある。他の国のアフリカ人に言われるくらいだから、ある程度真実であろう。 でも・・・
”この空港を舞台に、いったいどんな新たなエピソードが我が家に待ち構えているのだろうか-。”
そんなことを想像しだすと、こんなところでも案外憎めない場所に思えてしまうから、不思議なものである。(M)
ここは我が家にとって忘れられない想い出が詰まった場所だ。
初めて家族でキンシャサに降り立った日。
大切なものを詰め込んだ新品のランドセルを次男がポーターに騙し取られた夜。
治安上の理由で半年間東京に帰していた家族との再会の瞬間。
休暇帰りでンジリ空港に到着したら、市内で銃撃戦が始まったために空港から出ることができず、家族全員そのまま乗ってきた飛行機でパリにトンボ帰りした蒸し暑い夜。
・・・・どれもこれも私にとって忘れがたい想い出だ。
今回はナイロビ行きの飛行機に乗るために来た。
空港に車で入っていくと、まずはポーター達が全速力で私の車を追いかける。荷物を降ろすために後部のドアを開けると5、6人が荷物を取ろうと殺到する。これに対して、荷物は2つだから2人で十分だ、と2名のポーターを指名する。荷物を100mくらい運んでくれることに対する謝礼を手渡すが、彼らはもっとよこせといつまでも必死に食い下がってくる。
しかし、これはほんの始まりに過ぎない。
その後、パスポートとチケットを確認する警察、空港職員、飛行機会社職員、安全確認をする内務省国境警備職員に加えて、なぜだか知らないけど立ち入りを許されている関係ない連中。彼らが次々と手伝ってあげようと言い寄ってくる。
そしてその申し出を拒否しないでいると、最後に待っているのは彼らとの値段交渉。
「50ドルくれ。」
「いや5ドルだ。」
「じゃあ20ドルくれ。」
「私はあなたに頼んでなんかない。あなたが勝手にやっただけだ。5ドルで不満ならそのお金を返しなさい。支払う理由はない。」
「・・・わかったよ。ムッシュ。」
だいたいこんな会話が展開されて、彼等はしぶしぶ帰っていく。正規職員からこうした要求をされることもあるのは彼らが十分な給料をもらってないことが一因だ。
それにしても、50ドルを要求してくるとは私も見くびられたものだ。最近はこうしたやりとりに慣れてはきたものの、いつまでたっても後味が悪い。彼らの要求を満額受け入れていたらカモになってしまうし、まったくこうした努力に報いないのも気の毒な気がする。実際にコンゴ人同士のやりとりを見ていると、ある程度の金を正規職員に握らせていることが多い。こうしたお金がコンゴ社会の潤滑油になっている面が多分にあるのだ。これが外国人相手だと当然に相場が高くなる、というか、吹っ掛けられることになる。
キンシャサで働くセネガル人の友人が、”キンシャサの空港はアフリカで最悪だ”と漏らしたことがある。他の国のアフリカ人に言われるくらいだから、ある程度真実であろう。 でも・・・
”この空港を舞台に、いったいどんな新たなエピソードが我が家に待ち構えているのだろうか-。”
そんなことを想像しだすと、こんなところでも案外憎めない場所に思えてしまうから、不思議なものである。(M)