ヴェルソワ便り

スイスはジュネーヴのはずれヴェルソワ発、みんみん一家のつづる手紙。

またまたすごいスイスワインを見つけた!Histoire d'Enfer

2011-06-30 21:27:41 | ワイン(M氏より)
近所の造り手にいいワインがあるのを見つけたおかげで、最近,スイスワインに対する関心が急速に高まっている。

ジュネーブ近郊のフランス領のフェルネイ・ヴォルテールという街に、2001年にmeilleur caviste du monde(世界一のワイン屋)に選ばれたワイン屋がある。

パリに住んでいる時、ワイン屋でワインを選んでいると「ちょっとお前、こっちにこい」と言われ、「こんなのもあるぞ」と奥に隠してある秘蔵ワインを見せてもらうことが何度となくあったが、そういう類いの希少ワインが、その辺にごろごろと、ぞんざいに転がっているようなワイン屋である。
この手のワインは造り手と特別なコネがなければ集められない代物だ。

職場の友人が、「日本に帰る前に何本か美味しいワインを買って帰りたい」というので、久しぶりにそのワイン屋に行ってワインを物色していると、なんとスイスワインが数本だけ置いてあるのが目に入った。
店のおじさんに「これはなんなんだ」というと、お前知らないのかと言わんばかりに、説明してくれた。
フランスでも知る人ぞ知る、有名なスイスワインのようだ。おじさんの説明にも力がこもっている。
ということで、一本試しに買って帰ることにした。

しばらく置いておこうと思ったが、待ちきれない性分で、時間をおかずに開けてみることにした。

ワインの名はHistoire d'Enfer Blanc Reserve 2008。「地獄の歴史」(地獄の物語かも)という名の造り手である。





開けた瞬間から,その凝縮したコンテンツに驚く。
香りは、以前紹介した南仏のMas Champart(赤ワインだったが。ここです)の白ワインのように力強い。
栗、くるみ、ハシバミのような木の実の香り。
口に含んでみても、その香りから期待されるとおりの味だ。
その充実した質感は、これまで飲んだスイスの白ワインとは明らかに異なるものだ。そう、格が違うのだ。

ワインの変化を知るために,少しずつグラスに注ぎ、コンスタントに飲み続ける。
香りと味の変化は、フランスの偉大なワインのそれと共通するものだ。






時間とともに、柑橘系のフルーツの香り,新樽を使ったらしい新鮮なバニラの香り、そして最初に感じた木の実の香りが、交代交代に、微妙なニュアンスとなって浮き出てくる。
そして、口の中で広がる味も,それと軌を一にするように、微妙に、微妙に変化していく。
これは間違いなく,世界的に見ても偉大なワインと言えるであろう。

結局,ほとんど一人で一本開けてしまった。





フェルネイのワイン屋のおじさんが、このワインを購入して車に運ぶ段になって,「もしこのワインが気に入ったら、次はこの造り手のCornalin種のワインを是非飲んでみてほしい。Valais州土着の葡萄品種で作ったワインの中で最も偉大な赤ワインはこの葡萄から出来ると思う。」と教えてくれた。
自分もCornalinの葡萄で作ったワインはいくつか試しているが,あまり感心しなかったことを伝えると,結局葡萄の偉大さは優良な造り手のものを選んで試してみる以外ない、と言う。

こんな素晴らしいワインを教えてくれたおじさんの言葉を疑う術を、私は知らない。

次は,是非ともその赤ワインに挑戦させて頂こうと思う。(M)

驚くべきスイスワインが近所の村にあった! Domaine de La Treille

2011-06-01 07:40:17 | ワイン(M氏より)
意外や意外、すごいワインがうちから車で10分とかからないところにあった。

その造り手とは、サザエさんのお母さんと同じフネ(Founex)という名の小さな村にある、デュトルイ兄弟(Les Freres Dutruy)である(サイトはこちら)。





この造り手はフネ村とコペ(Coppet)村とに畑を持ち、それぞれDomaine de La TreilleとDomaine de La Doyeという名前を付けて、その中の出来の良い葡萄から醸すワインに、この辺りの中心都市ニヨン市のローマ遺跡の円柱を意味するレ・ロメイヌ(Les Romaines)という名を付けている。


そもそもここのワインとの出会いは、コペ村にあるレストランで、店の人に勧められるがままにDomaine de la Treille Pinot Noir "cuvee speciale"を飲んだのがきっかけだった。
香りが華やかで軽やかな感じで、これまで飲んだスイスのピノ・ノワールの中でもなかなかの出来で、アルザス地方のピノ・ノワールを想起させるワインだった。


ジュネーブ州の多くのワインの造り手がカーブを客に開放する日、フネ村はジュネーブ州ではないけれどもジュネーブ州に近いのでもしかしたら開いているかもと思って寄ってみたら、幸運にも大勢の客が試飲しているところだった。


造り手のデュトルイ兄弟のうち、おそらく弟さんからグラスを渡されて、まずは白から試飲。
シャスラcuvee speciale、ピノ・ブラン、ピノ・グリの順で2010年を飲ませて頂いたが、いずれもフルーティでちょっととろっとした感じ。

その後に、赤の(1)ガメイ2010年、(2)ガメイ・レ・ロメイヌ2009、(3)ピノ・ノワール・レ・ロメイヌ2009、(4)ガマレ・レ・ロメイヌ2009と立て続けに飲ませて頂いた。




(1)のガメイ2010年は心地よい苦みがあってフルーティで、ネクターのようだ。

(2)~(4)のレ・ロメイヌにはすべて8ヶ月間の樽熟成を行っていて、ガメイ25%、ピノ・ノワール20%、ガマレ45%の割合で新樽を使っている。
そのせいでこの3つのワインには結構な樽香がするのだが、それがいい具合にワインのアクセントになっている。つまり、葡萄の果実味がしっかりして酒質が厚いので、樽香が鼻につかないのだ。

(3)のピノ・ノワールにはブルゴーニュの珠玉のワインがあるのでそれらとは比べるべくもないが、アルザスのピノ・ノワールであれば相当程度対抗できる。むしろ、それよりも上に行くか。

(2)のガメイについてはボジョレの最高レベルに匹敵するものと思われる。このミネラル感というか旨みは、ボジョレというよりはブルゴーニュのそれだ。

(4)のガマレという葡萄はジュネーブの辺りでしかお目にかかれない種類であるが、このガマレはこれまで自分が飲んだものの中で圧倒的によい。新樽45%と高めの割にはコンテンツが充実しているためバランスが崩れていない。


これまでスイスのワインに対して、住んでいるよしみで贔屓目にトライしてきた感があるが、このワインならそういう必要はない。これであれば世界のどのワイン品評会に出しても恥ずかしくないと本気で思えるのだ。


土曜日の10時から13時までであれば、アポなしで試飲・購入できるようなので、ジュネーブ在住の方は是非一度訪問して試して頂きたいと思う。



以下は余談になるが、試飲の際、偶然隣になった人と次々と出てくるワインについて意見交換した。

彼はこのフネ村に住むワイン愛好家で、ジュネーブ近辺の美味しいワインについて教えてもらったところ、ジュネーブ近辺のヴォー州では次の造り手もいいらしい。

Domaine La Capitaine, M. Reynold Parmelin
このワインは自分も知っているBegnins村で1994年から有機農法を続ける造り手で、coopというスイス最大級スーパーでも置いているところがある(サイトはこちら)。とろとろ感のある白を造る作り手だ。

Domaine le Satyre, Madame Noemie Graff
同じくBegnins村の造り手。ガメイとピノ・ノワールがいいらしい(サイトはないが、関連の記事)。


ちなみに、この3つの造り手が同時に賞を取った際の記事はこちら。彼は試飲の際にそこにあったこの記事を見ながら説明してくれた。


この偶然会ったお兄さん、我々が日本人だと知ると、ジュネーブにある和食レストランでどこが美味しいか聞いてきた。
我々なりの感想を伝えるが、このお兄さんは、この辺りの和食レストランについてきちんとした自分の考えを持っていて、そのコメントは我々を納得させた。
この人物、相当の美味しいもの好きではないかと直感したので、今度はこちらから、この辺りの美味しいレストランはどこかと聞いてみた。
すると、でてくるわ、でてくるわ。

・・・ということで、このお兄さんのお勧めレストラン情報については、これから実際に食べに行ってから報告させていただくこととしたい。(M)