週末,お世話になった職場の上司ご家族をジュネーブ空港で見送った後,しろみが冷たいものを食べたいというので,高速に乗ったついでにニヨン(Nyon)の街のアイスクリーム屋まで行ってみた。
すると、ちょうど骨董・古道具市をやっているところだったので,アイスを食べながらぶらぶら見て行くことにした。
スイスの骨董古道具市では、なるほど骨董品といえる立派なものから、「こんなの買う人いるのかね」というような正真正銘のガラクタまで、玉石混合、雑多なものが売られている。
やっぱり今回もひやかしで終わったかな、という頃合いになって、しろみが「ワインのコルク抜きをいろいろ置いた古道具屋があるからこっちに来い」という。
行ってみると、たしかにガラスケースに所狭しと古いコルク抜きが並べられていた。
これまでいろんな古道具市をみてきたが、ブルゴーニュのボーヌ(Beaune)の古道具市でも見たことも無いようなものがいくつもある。
おじさんに、「ここまで揃えるのにどれくらいの年月がかかったのか」と尋ねると、収集を始めて30年くらいという。
その間に売られたものも相当あるだろうから彼の30年のコレクションの全貌を知る術はない。しかし,30年間のこだわりがあったればこそ、今ここに並んでいるようなものが揃うのだろうと思った。
気になるものをいくつか手に取って見せてもらう。
値段を見ると、これまでの古道具屋と比べると高めの値段設定で、購入意欲が一気にひるんだ(最近スイスフランも高くなっているし。)。
しかし、取っ手が葡萄の木を模した彫刻になっているもの(しろみは真っ先にこれに目を付けたが、お目が高すぎて桁が違った。)、小さな四角柱状(細長いマッチ箱のよう)になる携帯型のもの、ハサミのような形をしたものなど次から次へと手に取ってみる。
イタリアのバローロというワインで有名な街に、コルク抜き博物館があり、そこでもいろんなコルク抜きを見たが,その博物館にも恐らく置いていないようなものまであるのではないか。
コルク抜き以外にも,瓶中に落ちたコルクを3本の針金で取り除く器具、シャンパンのコルクの上から管を突き刺し栓を抜かずに注げる器具(蛇口に開閉用の弁があり、瓶内の炭酸の圧力を利用して必要な分だけグラスに注ぐことが出来る仕組み)、シャンパンの針金を切るペンチ(手で開けられない場合に使用する)など、次々と説明してくれた。造り手が樽に栓をするための金槌と樽に穴をあけるスクリューが一緒になったものもあった。
こんなものを次々と見せられてしまうと、今買わなければきっと一生お目にかかれないような気がして,あれもこれも欲しくなってしまい、結局衝動買いしてしまった。
ということで、今回購入したのはこの2つ。
1.鑞封した鑞を落とす箇所のついた、4本の指で無理なく引っ張れるもの。
自分はコルク抜きで最も重要な箇所はスクリューであると思っているので,やはりこの部分にはこだわって選んだものだ。
2.もう一つは,おじさんのお勧めのこれ。
この取っ手の部分に造った人の職人気質が感じられる。
そして、このスクリューを見てほしい。
今市販されているコルク抜きの中に,こんな美しいフォルムのスクリューがあるのだろうか。
最も高価とされるフランスのライヨール村のソムリエナイフでも、この部分についてはこの逸品に遠く及ばないのではないか。
・・・と、ここまで書きながら,さすがに我ながら「馬鹿は死ななきゃ直らない」という言葉が脳裏に浮かぶ。
コルク抜きなんて、コルクが抜ければ何でもいいじゃないか、日本の酒屋でワインを買った時におまけでもらえるあのコルク抜きでなんでいけないんだ、と。
でも、こんなに楽しいこと,とてもじゃないがやめられない。
そう、ワイン馬鹿のタチの悪いところは(世の中のバカと言われる人は総じてそうなのだろうが、)、自分でもどうかしてると思いながらも,それを正そうとはしない点なのである。(M)