ヴェルソワ便り

スイスはジュネーヴのはずれヴェルソワ発、みんみん一家のつづる手紙。

大人なワイン Domaine Jean Macle Cote du Jura

2009-10-04 22:39:32 | ワイン(M氏より)
(しろみによる更新が滞っているので、つなぎです。)


若いとき、私は鯖の味噌煮が苦手だった。鯖の塩焼きも美味しいと思わなかった。
あのにおいが嫌だった。
わかめときゅうりの酢の物もだめだった。
あの酸っぱさが嫌だった。

でも大人(オヤジ)になり、そのにおいや酸っぱさゆえに大好きになった。

”なんで若い時に嫌いだったものが、今はこんなに美味しく感じるのだろう。”

具体的な食べ物に違いこそあれ、こんなふうに年とともに味覚が変わった覚えのある人は少なくないのではないか。

そんなことをジュラ地方のサバニャン(savagnin)という葡萄で造ったワインを飲むたびに思い出してしまう。
仮に、自分が20代の時にこのワインを飲まされていたら、きっと「苦手な味」と答えたであろう。



いろんな人とワインを飲むことがあるが、ジュラのワインを前にして、その人からワインの感想を聞く時ほど興味深い瞬間はないかもしれない。

「ちょっとこれは苦手です。」という返事を聞くたびに、「うーん。あなたの味覚はまだお子ちゃまですね。」と余計なことを口走りたくなってしまう。

逆に、「これは美味しいワインですね!」という答えを聞くと、「おぬし、なかなかやるな。」とつい心の中で叫ぶのだ。


石灰岩に粘土質が混じったジュラ期の地層を含む土壌から産出されるワインは、きちんと造られればミネラル感が充実したトロトロ感のあるワインになる。ジュラのワイン畑の地層は、ブルゴーニュの黄金の丘(Cote d'Or)とほぼ同じといわれている。このため、この地方でもブルゴーニュで使われるシャルドネという葡萄を使った白ワインがあって確かに優れているのだが、やはりジュラの白ワインの主役はサバニャン種だ。

この地方で造られるvin jaune(直訳すると「黄色いワイン」)も、このサバニャンという葡萄から造られる。黄色いワインは、味と香りがドライシェリーに似ているが、これはシェリーと似た製法をとっているためだ。
サバニャンで作られる普通の白ワインは、黄色いワインでなくてもシェリーっぽい香りがする。これが慣れてくるととてもいい。他に似たタイプのワインを見つけることは難しい。

今日のワインは、Chateau-Chalonという美しい村にあるDomaine Jean MacleのCote du Jura。



サバニャン特有の香りと味。
凝縮したワインの質感。
特有の酸味とその後に感じられる糖分。
開けた瞬間から美味しいが、時間とともに香りも味もどんどん変化していく...。
そう、この変化こそが素晴らしいワインの条件だ。

今回妻と二人で飲んでしまったので、これを好きかどうか聞いて冷やかす相手がいないのが残念だ。
いつもはCote du Juraというと、Arboisという村の造り手のものを飲んでいて、シャトーシャロンの造り手のものを飲んだことがなかったので、今回が初めての試みとなった。Vin Jauneタイプのワインで有名な造り手だが、このドライの白も素晴らしかった。

ジュラはジュネーブから一番近いフランスのワイン産地なので、また近いうちにまた行かなくては...。(M)