時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

直木賞作家、東山彰良氏の緊急サイン会

2015-07-30 22:57:14 | 文学
池袋のリブロが閉店したのは出版業界では大ニュースだったようで、
リテラをはじめとした様々な場所で騒がれていたが、私にとっては、
正直、どうでもいいと言おうか、そこまで惜しむ本屋ではなかった。


新宿の紀伊国屋や神保町の三省堂のほうがでっかくて好きだ。
同じ池袋ならジュンク堂のほうが品揃えも良く、イベントも多い。


まぁ、それはともかく、
旧リブロがあった場所を借りて三省堂池袋店が昨日から営業を開始した。

初日だから何かプレゼントがあるかなーと思い、早速、本を一冊買ってみた。
残念ながら、そのようなものはなかったが、そのかわり、この度、直木賞を受賞した
東山彰良氏の緊急サイン会が明日(つまり今日)開かれるとのことで、これ幸いとサインを頂いてきた。



ピース又吉の芥川賞受賞ばっかり取りざたされているが、
正直、東山氏の『流』受賞のほうがビックニュースだ。

それも良い意味での。



この本は基本的には、青春&ミステリーにジャンルされるものだが、
台湾現代史が背景としてあり、気楽に読める植民地文学にもなっている。

より正確に言えば、ポスコロ(ポストコロニアリズム)作品と言うべきか……


まぁ、要するに、文学的に大変価値が高い小説なのである。

旧植民地を舞台にした小説は他にも色々あるが、この作品の優れているところは、
得てして気難しい内容になりがちなこの手の話を娯楽小説として完成させたことだ。


結果、大衆小説としてストレスなく読めるようになっている。

この「気楽に読める」というのは結構大事で、
純文学が売れないのも、読んでて疲れる人間が多いからだと思う。



もちろん、純文学も大衆文学も好きだという人はいるだろうが、
少なくとも昔の芥川賞受賞作家、例えば安倍公房の『飼育』や
大江健三郎の『死者の奢り』は難解なテーマでありながら同時に読ませる話だった。



ページをめくりたくなるというのは作家に第一に求められるものだと思うが、
この点、どうも純文学は、どこかマニア向けになっているような気がする。

(この点、田中慎也氏の『宰相A』は娯楽性タップリの佳作だと思う。
 村上春樹氏の諸作品もまたしかり)



若干、話題がずれたが、この『流』が世間的に評価されたというのが
ちょっと驚きで、昨今の何でもかんでも「反日」にしたがる日本社会で
数少ない吉報だったのではないかと思うぐらいだ。(大げさか?)


こういっちゃ何だが、はっきり言って、社会性など皆無のベストセラー小説が多い中、
このように深読みすると様々な発見ができる小説が褒められたのは、純粋に嬉しい。


こういう背景は骨太で、ストーリーがまろやかな小説がもっと増えればいいと思う。


最新の画像もっと見る