なんで書いちゃったかなぁ……というのが正直な感想。
トンデモ本を見分けるコツとして、不必要に「日本」や「日本人」という言葉を
前面に押し出すタイトルかどうかというものがある。
例えば、『福沢諭吉 戦う日本人』とかいうものがあれば、
これはもう危ないとみて差し支えない。
本書『「辺境」の誇り アメリカ先住民と日本人』も、
この手の「日本人は素晴らしい!すごい!」本の1つで、
なんというか、これまで優れた啓蒙書を執筆してきた鎌田氏だけあって、
「なんで、こんな本を書いちゃったの!?」と残念で仕方がない。
鎌田先生は、研究者としては、結構苦労されているようで、
本来ならとっくの昔に準教授になっても問題ない実績を持っているのに、
どういうわけか未だに専任講師の立場に甘んじている。それが背景なのかは
知らないが、右傾化している論壇や出版社に秋波を送るような真似をするほど
切羽づまっているのかと思うと、何とも悲しくなってくる。
さて、この本の何が一番おかしいかというと、
捕鯨問題に関する説明があまりにも単純、ド素人が書いたとしか思えないことである。
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開拓者精神(フロンティアスピリッツ)を
大義とする白人によって土地を追われたアメリカ先住民と、
原発事故により故郷と切り離された福島の人びと。
原子力産業との「共生」を強いられた、青森県下北半島とアメリカの先住民居留地。
そして、欧米の反捕鯨団体による執拗な妨害に耐えてイルカ漁を続ける和歌山県太地町。
かつて、そこはアメリカへの移民が多数輩出した町だった……。
国家をはじめとする巨大な「権力」や暴力的な「正義」に抵抗し
「辺境」に生きる人びとを、アメリカと日本に追った渾身のノンフィクション。
http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0773-n/
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上の紹介文からも明らかだが、鎌田先生は捕鯨問題に関して、
反捕鯨=白人文化、捕鯨=非白人文化とみなして、
前者が後者を駆逐する歴史として捕鯨問題を論じている。
そのため、「文化の破壊」という捕鯨論者のお決まりの文句を
繰り返し、反イルカ漁映画『ザ・コーブ』を歪んだ思想集団による
プロパガンダ映画として一切評価しようとしない。
というより、水産庁や町の言い分をそのまま書き写したような文章で、
きちんと先行研究を読んだものではない。
加えて、
先住民族同士、アイヌとインディアンを比較するというのならまだ納得がいくが、
被征服者であるインディアンと、アイヌや琉球を駆逐した
征服者である大和民族を同列に置くのも学問的に見てもかなり無理がある。
なるほど、北海道産の米と新潟産の米を比較するのはわかる。
だが、鎌田先生がやっているのは、
北海道産のジャガイモと新潟県産のコシヒカリを比較して
どちらが上手いかを論じているようなものだ。
牽強付会。一言でいえば、それに尽きる。
素直にアメリカ先住民の苦境だけ書けばいいものを、
無理に専門外のことを書いてしまって滑っているような印象を受ける。
ボロ糞に叩いているが、本当にしょーもない本なのである。
清く正しい日本人が西洋的価値観に毒された白人によって
自分たちの伝統文化を破壊されそうになっている。こういう物語をでっちあげている。
つまり、インディアンと日本人を同等のものとみなすことで、
後者の加害性が前者の被害性によって見事に隠ぺいされているのである。
少なくとも、捕鯨やイルカ漁の問題については、日本は被害者ではなく加害者だ。
イルカ漁というのは、何も肉を食うだけのものじゃない。
世界各国の水族館にバンドウイルカを輸出している商売でもあり、
営利を目的に希少な動物を乱獲、虐待する行為について、訴えているのである。
(少なくとも、『ザ・コーブ』においては)
鎌田先生の『ザ・コーブ』論は捕鯨やイルカの問題を
文化闘争であるかのようにみなしているが、そんな単純な話ではないのだ。
というわけで、次回、『ザ・コーブ』の内容を解説しながら、
鎌田氏のおかしな部分についてツッコミを入れていきたいと思う。
トンデモ本を見分けるコツとして、不必要に「日本」や「日本人」という言葉を
前面に押し出すタイトルかどうかというものがある。
例えば、『福沢諭吉 戦う日本人』とかいうものがあれば、
これはもう危ないとみて差し支えない。
本書『「辺境」の誇り アメリカ先住民と日本人』も、
この手の「日本人は素晴らしい!すごい!」本の1つで、
なんというか、これまで優れた啓蒙書を執筆してきた鎌田氏だけあって、
「なんで、こんな本を書いちゃったの!?」と残念で仕方がない。
鎌田先生は、研究者としては、結構苦労されているようで、
本来ならとっくの昔に準教授になっても問題ない実績を持っているのに、
どういうわけか未だに専任講師の立場に甘んじている。それが背景なのかは
知らないが、右傾化している論壇や出版社に秋波を送るような真似をするほど
切羽づまっているのかと思うと、何とも悲しくなってくる。
さて、この本の何が一番おかしいかというと、
捕鯨問題に関する説明があまりにも単純、ド素人が書いたとしか思えないことである。
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開拓者精神(フロンティアスピリッツ)を
大義とする白人によって土地を追われたアメリカ先住民と、
原発事故により故郷と切り離された福島の人びと。
原子力産業との「共生」を強いられた、青森県下北半島とアメリカの先住民居留地。
そして、欧米の反捕鯨団体による執拗な妨害に耐えてイルカ漁を続ける和歌山県太地町。
かつて、そこはアメリカへの移民が多数輩出した町だった……。
国家をはじめとする巨大な「権力」や暴力的な「正義」に抵抗し
「辺境」に生きる人びとを、アメリカと日本に追った渾身のノンフィクション。
http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0773-n/
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上の紹介文からも明らかだが、鎌田先生は捕鯨問題に関して、
反捕鯨=白人文化、捕鯨=非白人文化とみなして、
前者が後者を駆逐する歴史として捕鯨問題を論じている。
そのため、「文化の破壊」という捕鯨論者のお決まりの文句を
繰り返し、反イルカ漁映画『ザ・コーブ』を歪んだ思想集団による
プロパガンダ映画として一切評価しようとしない。
というより、水産庁や町の言い分をそのまま書き写したような文章で、
きちんと先行研究を読んだものではない。
加えて、
先住民族同士、アイヌとインディアンを比較するというのならまだ納得がいくが、
被征服者であるインディアンと、アイヌや琉球を駆逐した
征服者である大和民族を同列に置くのも学問的に見てもかなり無理がある。
なるほど、北海道産の米と新潟産の米を比較するのはわかる。
だが、鎌田先生がやっているのは、
北海道産のジャガイモと新潟県産のコシヒカリを比較して
どちらが上手いかを論じているようなものだ。
牽強付会。一言でいえば、それに尽きる。
素直にアメリカ先住民の苦境だけ書けばいいものを、
無理に専門外のことを書いてしまって滑っているような印象を受ける。
ボロ糞に叩いているが、本当にしょーもない本なのである。
清く正しい日本人が西洋的価値観に毒された白人によって
自分たちの伝統文化を破壊されそうになっている。こういう物語をでっちあげている。
つまり、インディアンと日本人を同等のものとみなすことで、
後者の加害性が前者の被害性によって見事に隠ぺいされているのである。
少なくとも、捕鯨やイルカ漁の問題については、日本は被害者ではなく加害者だ。
イルカ漁というのは、何も肉を食うだけのものじゃない。
世界各国の水族館にバンドウイルカを輸出している商売でもあり、
営利を目的に希少な動物を乱獲、虐待する行為について、訴えているのである。
(少なくとも、『ザ・コーブ』においては)
鎌田先生の『ザ・コーブ』論は捕鯨やイルカの問題を
文化闘争であるかのようにみなしているが、そんな単純な話ではないのだ。
というわけで、次回、『ザ・コーブ』の内容を解説しながら、
鎌田氏のおかしな部分についてツッコミを入れていきたいと思う。