ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

ほんとうの「食の安全」を考える 感想

2010-02-16 23:52:24 | 書籍
 なかなか面白く、リスクというものを考えるのに良い本でした。中西氏の「環境リスク学」よりもとっつきやすかったです。 
この本は少し前に読み終わっていたのですが福岡氏のトンデモ発言への対処に時間を取られてなかなか感想を書く時間がとれませんでした。
この本では食に関わるリスク、たとえば残留農薬や食品添加物についてどのような根拠、判断基準をもとにリスクを評価しているのかについて書かれた本です。
たとえば「一日許容摂取量(ADI)」というのはその量であればヒトが一生涯毎日摂取し続けてもとくに害はなく、通常より影響が大きいと思われる妊娠中のラットを用いて導き出した数値なのでかなり安全側に余裕を持たせたものであることが説明されています。また、この数値を越えたからといって即、致死などの重大なリスクに結びつくものでもない旨も説明されています。
ある程度安全側に余裕を取ってリスク判断をするというのは保全生態学の個体群保全に通ずるところがあります。
 本筋とそれますが、個人的に秀逸と思ったのがパブリックコメントの意義を短い文章でわかりやすく説明していることについてです。正直なところ、僕にはこの部分だけでも買って読むだけの価値がありました。パブリックコメントというのは、行政の出した案の見落としや不足した情報を付け足すというのが本来の目的です。つまりパブリックコメントを出すということは一定以上の見識が必要であり、数よりも質が重視されるものです。そこが理解できないと人気投票と勘違いしたバカが大挙して押し寄せて行政の手間を増やすだけになります。
生物多様性関係では、オオクチバスが特定外来生物に指定された際のパブリックコメントがバス釣り業界の作ったテンプレや議事録も読まずに反対する意見が多かったことは懐かしいです。あのときはこの本に書かれているダメなパブリックコメントの典型でした。あの時の駆除反対側はその行動が本当に効果があるのか検証することなく、ただ動いただけで満足してしまっただけでした。

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