ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

ここが変じゃない?武田さん2 バスとギルのコンボ攻撃

2009-11-22 20:47:01 | 武田邦彦
 はい、前回と同じく今回もブラックバスについてのつっこみを入れていきます。前回は伊豆沼を紹介しましたが、もしかしたら納得のいかない人もいるかも知れません。たとえば「やっぱり水質が悪かったわけだしほかの要因も無視できないのではないか」。うん、他の要因も絡んでいるというのはおそらくどの保全の現場においてもそうでしょう。あまたの要因が絡んでより絶滅が加速することを専門用語で絶滅の渦といいますしね。
というわけで、今回は前回より水質などの環境がいいところの事例をご紹介します。場所は京都の深泥池というところです。深泥池について簡単に説明しますと、ここには他では見られない特異な生物相をもっています。植生から言えば、地衣類の一種の世界分布の南限であり、トキソウという珍しいランの仲間も自生しています。このほかにも氷河期の生き残りと思われる生物が多数生息している貴重な場所です 。
ブラックバスが主に影響を与える水生生物相について説明します。深泥池には1970年代にはカワバタモロコやメダカ、ドンコなどといった在来魚が多数生息していました 。このころの在来魚は15種です。ですが、ブラックバスとブルーギルが確認された1979年からの数年で4種の魚が消え、この20年間で9種の在来魚が絶滅あるいは激減しました。これらはブラックバスをはじめとする外来魚の影響と思われます。ちなみにこの間に護岸や水質汚濁といった人為的影響に大きな変化はありません。
また、そのほかの水生生物でも、1979年と2002年を比較したデータによれば、フタバカゲロウという水棲昆虫やトンボ類が2002年では以前と比べ激減しています 。なぜこれがブラックバスとブルーギルの影響といえるかというと、ユスリカなど泥にもぐる水生生物は増えているからです。仮にコイの場合は底の泥をひっかきまわしますからこうはならないでしょう。

投網による調査では1979年にはヨシノボリやメダカなど多様な魚類相を持っていましたが、その後の調査(2004年まで)ではメダカは確認されず、ほかの在来魚の全体に占める割合も少なくブルーギルが優先した状態にあります。ちなみにブラックバスとブルーギルは1998年からの駆除努力により70年代からの個体の子孫と思われるブラックバスはほぼ駆除し、ブルーギルも8割以上を継続して駆除していけば2010年には100個体以下にできるという試算ができています 。
ブラックバス編のメインはこれで終わりですが、おまけも用意してあります。
 
参考資料
 深泥池の自然と暮らし,2008,p16
http://www.jca.apc.org/~non/report/mizoro-2004-hokoku.pdf 
 深泥池における魚類相の変化
深泥池の自然と暮らし,2008,p78
深泥池の自然と暮らし,2008,p168~170