「REUTERS」の「地震予知は「不可能」、国民は想定外の準備を=東大教授」( 2011年 04月 14日 11:03 JST )
東京大学のロバート・ゲラー教授(地震学)は14日、地震学者は「理論的には一両日中に地震が起きると予知しようとしているが」「無益な努力」であり、現代の科学技術では地震の予知は不可能であると述べた、と報じられています。
地震予知が不可能である、という点については、私も同感です。私は地震の専門家ではありませんが、常識的に考えて不可能だと思います。以下、その根拠を述べます。
地震を予知するためには、地盤の動きを計算・予測しなければなりません。しかし、計算・予測することは不可能です。なぜなら、地盤の「性質が一様ではない」からです。
地盤を構成する「物質(または分子)」の密度が一様であれば、それらの動きを計算・予測することは (比較的) 簡単です。しかし、地盤を構成する岩石の種類・密度は一様ではありません。
ということは、「膨大な量の」物体の動きを (簡単かつ正確に) 計算・予測する統計力学などの手法は使えない、ということです。したがって、数十年以内に地震が起きるといったレベルのおおざっぱな予測であればともかく、現実的に意味のある予測、すなわち「何月何日頃に地震が起きる」といったレベルの予測をするためには、原理的にいって、「地面の中のすべての分子」の動きを計算しなければならないことになります。
しかし、「地中のすべての分子」の数はあまりにも膨大ですから、(かりに個々の分子の位置が正確にわかったとしても) 計算=予測することは不可能です。
もっとも、地震の予知が不可能であるからといって、「研究しなくてよい」とまでいえるかどうかは、私にはわかりません。つまり、ロバート・ゲラー教授のように、「現代の科学技術では地震の予知は不可能である」から「地震学者が現在使用している予知器など」の「システムは科学的に完全ではなく、中止されるべきだ」とまでいってよいのかは、私にはわかりません。
なぜなら、不可能であると知りつつも、「すこしでも正確な予測をするために」研究を継続すべきである、とも考えられるからです。
このあたりは「費用対効果」の話になると思います。(実用性に疑問のある研究に) 巨額の資金をかける価値があるか、という話です。
なお、原発の津波対策としては、個人的には「低いところ」がよいのではないかと思います。これについては、「原発の津波対策、「低いところ」がよいのでは?」に述べています。よろしければお読みください。
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「過去に発生した津波の規模を、東京電力も原子力安全・保安院も知っていた」
[香港 14日 ロイター] 東京大学のロバート・ゲラー教授(地震学)は14日、現代の科学技術では地震の予知は不可能であるとし、日本政府は国民に対し予測不可能な事態に備えるよう呼び掛けるべきだと強調した。英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載された論文について、ロイターが電話取材を行った。
ゲラー教授は、地震学者が現在使用している予知器などは、差し迫った地震を予知するには不十分だと指摘。「理論的には一両日中に地震が起きると予知しようとしているが、私の考えではこのシステムは科学的に完全ではなく、中止されるべきだ」とし、「(地震の予知は)無益な努力だ。不可能なことを可能であると見せかける必要はない」と切り捨てた。
同教授は論文で、東海地域で今後想定される地震に対する日本政府の防災計画についても触れ、3月11日に発生した東日本大地震が予測できなかったように、東海地震も予測できないとした。東海地域では1498年、1605年、1707年、1854年に大地震が発生している。同地域で新たな大地震が起きた場合、死者数は数千人、数百万棟単位での建物倒壊が予想されており、中部電力浜岡原発への懸念も高まっている。
同教授は「予知できる地震はない。これは鉛筆を曲げ続ければいつかは折れるのと同じことだ。それがいつ起きるのか分からない」と指摘。地震は予知不可能であることを率直に国民に告げる時期が来たとし、日本全土が地震の危険にさらされており、地震科学では特定地域でのリスクの度合いを測ることはできないと述べた。「われわれは(地震を予知するのではなく)想定外の事態に備えるよう国民と政府に伝え、知っていることと知らないことを明らかにすべきだ」と提言した。
またゲラー教授は論文で、東日本大震災で津波の被害を受けた東北地域では過去にも巨大津波が2度発生していたと指摘し、沿岸部の原子力発電所はそうした津波にも耐えうる構造に設計すべきだったと批判。1896年の明治三陸地震で起きた津波は最大38メートルに達したほか、869年の貞観地震の発生時でも東日本大震災と同等の津波が観測され、明治三陸津波では2万2000人が犠牲になったとしている。
1カ月以上にわたって放射線物質の流出が続く東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所は、最大6メートルの津波を想定して設計されており、3月11日に観測された14メートルだけでなく、過去に発生した大津波の高さを下回っている。
同教授は電話取材で、「この地域ではこれまでに発生した大規模な津波の記録が多数残っている」とし、すべては東日本大震災で福島原発を襲った津波を防ぐには十分な大きさだったと強調した。「(高い津波が)以前にも発生していたことはよく知られており、記録もある。原発設計時には想定する津波の高さを過去と同レベルに設定すべきだった」との見解を示した。
また、日本で運転中の原発は大半が沿岸部に建設されており、大規模な津波に対応できるよう「これらの原発はすべて津波対策を見直すべきだ。冷却には大量の水が必要になる」と指摘した。
東京大学のロバート・ゲラー教授(地震学)は14日、地震学者は「理論的には一両日中に地震が起きると予知しようとしているが」「無益な努力」であり、現代の科学技術では地震の予知は不可能であると述べた、と報じられています。
地震予知が不可能である、という点については、私も同感です。私は地震の専門家ではありませんが、常識的に考えて不可能だと思います。以下、その根拠を述べます。
地震を予知するためには、地盤の動きを計算・予測しなければなりません。しかし、計算・予測することは不可能です。なぜなら、地盤の「性質が一様ではない」からです。
地盤を構成する「物質(または分子)」の密度が一様であれば、それらの動きを計算・予測することは (比較的) 簡単です。しかし、地盤を構成する岩石の種類・密度は一様ではありません。
ということは、「膨大な量の」物体の動きを (簡単かつ正確に) 計算・予測する統計力学などの手法は使えない、ということです。したがって、数十年以内に地震が起きるといったレベルのおおざっぱな予測であればともかく、現実的に意味のある予測、すなわち「何月何日頃に地震が起きる」といったレベルの予測をするためには、原理的にいって、「地面の中のすべての分子」の動きを計算しなければならないことになります。
しかし、「地中のすべての分子」の数はあまりにも膨大ですから、(かりに個々の分子の位置が正確にわかったとしても) 計算=予測することは不可能です。
もっとも、地震の予知が不可能であるからといって、「研究しなくてよい」とまでいえるかどうかは、私にはわかりません。つまり、ロバート・ゲラー教授のように、「現代の科学技術では地震の予知は不可能である」から「地震学者が現在使用している予知器など」の「システムは科学的に完全ではなく、中止されるべきだ」とまでいってよいのかは、私にはわかりません。
なぜなら、不可能であると知りつつも、「すこしでも正確な予測をするために」研究を継続すべきである、とも考えられるからです。
このあたりは「費用対効果」の話になると思います。(実用性に疑問のある研究に) 巨額の資金をかける価値があるか、という話です。
なお、原発の津波対策としては、個人的には「低いところ」がよいのではないかと思います。これについては、「原発の津波対策、「低いところ」がよいのでは?」に述べています。よろしければお読みください。
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