7月8日 編集手帳
後藤田正晴さんが中曽根内閣で官房長官の頃である。
人事案件の説明で宮中に参じたとき、
昭和天皇からお尋ねがあった。
「忙しいようだね」
「はっ」
「とき に、どうなの…官房長官というのは、どういうことをするの?」
後藤田さんが著書で回想している。
重い役目の割には中身が外から見えにくい仕事である。
安倍政権を支える菅義偉(すがよしひで)官房長官の在職日数が、
きのうで歴代最長1290日を数えたという。
東日本大震災時の枝野幸男氏(現・民進党幹事長)がそうだが、
官房長官が広く国民の耳目に触れるのは国難のときだろう。
菅氏の場合も、
国際テロ事件や北朝鮮のミサイル発射、
中国船による領海侵入などに際し、
険しい表情で記者会見をする姿をご記憶の方 が多いに違いない。
官房長官の経験者、
竹下登元首相に得意の戯れ歌がある。
〈今日も朝から打ち合わせ
会議につづくまた会議
そのうえ二度の記者会見
官房長官、名を変えて
繁忙長官と申しましょう…〉。
その役職にある人が“繁忙長官”の異名を奉られるのは概して、
国民生活の幸せな時代ではない。
願いは「四海、波静か」に尽きる。