2月9日 NHK海外ネットワーク
中国で肺がんやぜんそくを引き起こすおそれのある
微小粒子状物質PM2,5の脅威が広がっている。
全人口の半分近い6億人が影響を受けた。
「もう耐えられない。
ここから逃げたい。」
汚染物質は日本にも飛来している。
大気汚染物質PM2.5。
PMは微小粒子状物質の意味である。
その直径が2,5マイクロメートル。
1マイクロメートルは1メートルの100万分の1。
目に見えないほど小さな粒子である。
自動車の排気ガスや石炭の燃焼などによって発生する有害物質で
非常に小さいため肺の奥深く入り込みやすく
大量に吸い込めば肺がんやぜんそくを引き起こす可能性がある。
北京ではPM2,5の滝中の濃度が基準を超えた日が
先月1か月間で27日にものぼった。
さらにこの物質を含む濃霧が国土の4分の1に広がり
全人口の半数近い6億人が影響を受けたと中国の環境保護省が発表している。
また先月呼吸器系の病気を訴えて治療を受けた人は通常より40%増えたということである。
まるで動物実験のようだと言う人もいる。
北京の日本大使館は6日
在留邦人向けに説明会を開いて
肺がんや循環器系疾患のリスクが高まっていると警告をした。
汚染がひどい日には外出を控えるよう呼びかけている。
日本にも影響が広がっている。
福岡市や大阪枚方市など西日本各地で国の基準を超えるPM2,5を観測した。
日本政府は中国に対して汚染物質の排出を抑えるよう対策の強化を求めている。
日本の各自治体は汚染物質の測定器を新たに設置し公表を始めている。
汚染物質は日本に到達するまで拡散するため
環境省は直ちに健康に影響が出るわけではないとしているが
呼吸器や循環器系の病気を抱える人は
しばらく外出を控えるなどの対策が必要だということである。
中国では今年の冬は寒い日が多く暖房用の石炭の消費が増え
それに加え風が弱く上空で汚染物質が滞留し続けたためだとみられている。
さらに自動車の数が急増したことによる排気ガスも原因の一つ。
中国では自動車の保有台数がこの10年で5倍に増えているが
排ガス規制はほとんど進んでいない。
北京オリンピックのときは一時的に工場の操業を停止したり
車の通行量を減らしたりすることで汚染は改善されたがその場しのぎだった。
党の幹部が石油、石炭、電力業界の幹部を務めていることもあって
工場や火力発電所の環境対策がおざなりになっている。
経済成長を優先させたことのツケが回ったと言えそうである。