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松下語録

2011-09-04 08:19:52 | 編集手帳



  

  8月31日付 読売新聞編集手帳


  風雅な茶会の席に緊張が走ったという。
  京都仏教界の重鎮、立花大亀(たいき)老師が松下幸之助氏を面詰した。
  「君のおかげで、
   こんなに心がなく物ばかりの嫌な日本になってしまった。
   君の責任で直してもらわねばならん…」

  1975年(昭和50年)秋のことであると、
  同席していた博報堂社長(当時)の近藤道生さんが
  『茶の湯がたり、人がたり』(淡交社刊)に書いている。
  松下氏は温容を崩さぬまま、
  じっと考え込む様子だったという。

  国家経営の人材を育成するべく「松下政経塾」を創設するのは、
  それから4年後のことである。

  第1期生の野田佳彦氏(54)が新しい首相に指名された。
  大亀老師が嘆いた「心の不在」はそのまま、
  政権交代後の鳩山、菅両内閣が国民の信頼を失ってきた原因でもある。
  野田新首相が双肩に担う責任は限りなく重い。

  松下語録に、
  〈客の好むものを売るな。客のためになるものを売れ〉
  という格言がある。
  子や孫の世代に借金漬けの苦しみを押しつけることのないよう、
  増税など国民の好まない政策も避けては通れない。
  “経営の神様”が野田氏のために残したような言葉だろう。
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