植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

やはり独学独習が性に合うようだ

2021年12月29日 | 篆刻
 篆刻に本格的に取り組んで丸1年となりました。彫った数は600個くらいになりましょうか。忙しいあまり4時起きで朝5時頃から数時間彫るということもたびたびであります。そこで自分の篆刻の力を測りたい、今のやり方でいいか修正すべき点、目指す方向性そんなものを専門家に見てもらいたいと思ったのであります。

 当地平塚に唯一篆刻の店舗を持っている篆刻家がいて、昨年末に「姓名印」を作って貰った縁で、何度かお店を訪ねておりました。だいたい四方山話をして2,30分、今まで5,6回は訪問しましたが、一度も客は入っていません。篆刻と同時に各種印鑑も作っていて、何代か続いた印章店であったと聞きました。果たして商売は成り立つのだろうか、と思っていたら今年の夏に店舗を壊して建て替えたのです。多分隣の洋品店は同じ建物にありテナントとして入っていたようです。

 それが建て替え後には、はんこ屋さんの店舗面積が2坪足らずになっていました。聞けば介護の年寄りが3人いて、居住部分を大幅に増やしたのだとか。どうせはやっていない印章店ならば、これまでとさほど関係ないとしても家賃がもらえなくなるか、などと思っていました。こんなに暇ならワタシの篆刻の指導をしてもらえるだろうとも感じていたのです。

 そこで出向いて相談してみました。即座に出来ませんと断られました。要介護の年寄りを見ているので日中見張ってなくてはならず弟子など取れないと言うのです。もし、篆刻家を目指して公募展に入選しようとすれば生半可なことでは出来ない、とか、一人の先生に師事して気に入らないで他の先生に変わるとかいうのはそういう情報が流れて好ましくない、挙句には横浜にカルチャーセンターがあるのでそちらにいったらどうか、などと仰いました。
 この先生は河野隆さんに付いたことがあるというのが自慢で、事あるごとに河野先生の事をほめそやします。ご自身も神奈川県では若手の五指に入ると言い、いくつかの公募展に入賞したということも言っていました。

 ワタシが、独学で篆刻をやっているのが気に入らないらしく「いくら字典を持っていようが、ネットで勉強しようが何百本彫ろうが、三法を勉強しないと上達しない」と言います。三法は、「字法・章法・刀法」であります。時代や目的にあった書体・文字そのものの形を選び、印面のレイアウトを考え、奇麗な線を出す篆刻刀の彫る技術が大事なのですが、そんなことは百も承知、何十という書物と数百におよぶ先人の刻印の現物で毎日研究し学んでおります。早朝から摸刻と創作を交互に繰り返し暇さえあれば彫っているのです。そもそも数か月だけ、ワタシの彫ったものを見てもらう程度で結構、師事するつもりはありません。

 結局はどうも篆刻家の世界はとても狭く、ごく一部の篆刻家の資格を有している人だけの互助互恵組織であるようです。篆刻の文化を広めその人口を増やそうとしているようには思えないのです。書道も篆刻もいわば緩慢に衰退している日本文化の一つで、それで食っていくには市場が小さいのです。書道人口がせいぜい50万人、その1/10ほどの数万人が篆刻の愛好家や篆刻家に過ぎません。(そもそも公的な調査記録がありませんので推測ですが。)篆刻家さんも、書道や日本画などの作品を書く人が顧客になるとはいえ、そうそう沢山の印を必要としませんし、一つ作れば何十年も使えるので需要が極めて少ないのです。

 ワタシは残念ながらどなたかに学んだり指導してもらうことは諦めました。正直なところ、この先生についても、やる気が増すことになりそうもありません。ワタシが逆の立場だったら、制作した印を子細にチェックし、その場で気づいたことや修正点を指摘したうえで、「弟子にはできないけれど、一度ゆっくり見てあげましょう」と言うでしょう。
 この先生に作っていただいて3万円支払った姓名印は、ワタシの書道の師匠からは「面白くない、がっかりね」と酷評されたのです。

 さりとて今更カルチャー教室に通って年寄り相手の暇つぶしのような教室で時間をかける気にもなりません。先生に袖にされたのは、ワタシが頑固そうな年寄りで見込みが無いのか、あるいは甘えるなとの叱咤かは知りませんが、今まで以上に勉強し研鑽すれば結果はついてくるでしょう。

 それにしても、「今からでも遅くない」とワタシの背中を押してくれた旧友、「今でも確かな腕があるので、なにも師事することなど無い」と励ましてくれる書道仲間がいます。ネットを通じてワタシの篆刻の情報を見て、篆刻の魅力を知り、新たに篆刻を始めた若い方も何人かいます。

今朝も小手調べに2本彫りました(笑)


 先生だけが特別で、偉いなどと勘違いしてはならないのだ、と思います。自分を導いてくれる人は身近に何人もいるのだと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする