植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

破壊する創造者(笑)

2021年12月09日 | 篆刻
 木曜日は家庭ゴミの日なのです。朝5時起きで出してまいりました。今日は会社の会計処理、午前中に自治会役員との打ち合わせ、午後からはワタシの隠れ家のトイレの便器交換で業者が入ります。その合間に頼まれている2,3個の印を彫ろうというわけなので、まことに忙しく、おちおち寝ている場合では無いのです。

 昨日の「探し物はなんですか」に引き続いて、本日は「破壊する創造者」(笑)になります。
 
 7年前に買った、お気に入りのガラスコップ5個が、少しずつ割れるうちに昨日でとうとう1個になりました。日常使いなのでとっくに元をとって、償却済みというものですが、うっかり割るともったいないことをした、と思うのが常であります。

 ワタシ愛用の印床(篆刻印の固定台)は、丸型で回転式ですが、先日床に落としたはずみで接合部の留め金がどこかに外れて無くなっております。調べてみると、台座の部分に強力なマグネットが埋め込まれていて、上部の木型を載せると簡単には抜けず、回転する仕組みになっているようです。てっきり中にベアリングが入っていると思っていました。

 その留め金が接着面が剥がれて無くなったために、磁石が作用せず、持ち上げるたびに上部が抜けるという状態になっています。隙間が生じてぐらぐらするのも困ったもので、時間をとって作業場から丸い留め金を探さなくてはなりません。

 トイレは、最近、流した後に水が溜まらないという現象がたまに起きていました。掃除しにくい、アロマオイルのシミが取れない、ということから思い切って便座ごと交換することにしました。一緒に内装の壁紙も全交換するのですが、どうやら特殊な工法でボードに圧着しているらしく、職人さんは半日壁紙剥がしに四苦八苦していました。ほとんど傷みが無い壁紙を交換させるのにはいささか気が咎めるものでした。

 昔に亡くなった父親の口癖は「形あるものすべて滅びる」でした。そのあとは無宗教のくせに「南無阿弥陀仏」と唱えていたのを思い出します。そういえば、母もその親が神官の家系であったにもかかわらず、詩作に般若心経の「色即是空空即是色 」と書きました。この世のすべてのものは恒常的に存在するというような実体はなく空疎であろうという教えでしょうか。なんにせよ、今あるものはいずれ土になり、灰になり水に流れ虚空を彷徨うのです。

 とはいうものの、生きている限りは、壊れたものは時には修理し時には交換します。体も、病気になれば節制し薬を飲み治療をする。それが人間の営みでありますな。

 今、没頭している篆刻も、実は何度も破壊と再生、無から有へという行為の繰り返しであります。昨日までまっさらな印材であったものが、半日ほど四苦八苦するうちに形を成し、今までこの世に存在しなかった印面を創出できます。自分の頭の中に浮かんだ造形が、自分の手指を通して赤い字・白い字となって紙に写し出される、その妙が得も言われぬ喜びであります。

 そして、また、誰かが精魂込めて彫り上げた印、大事に落款に使っていたような印が、ワタシの手ですり潰され一旦は無になります。それを新たに彫れば、命を吹き込み(というほどでもないか)、別の文字を生み出すことが出来ます。今彫っている印もいつか誰かの手で壊され、すり潰され、また誰かが新たに彫ってくれればいい、仏教用語では輪廻というのでしょうか。そんなことを意識すると、印を壊れかけた印床に固定し、印刀を手にして向かい合うと、ちょっとだけ心の中がピンと張るのです。
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