植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

 憧れの艾葉緑に巡り合えたかも

2021年12月14日 | 篆刻
 恐らく初めて、自宅ながら、一人で築50年以上経過した10部屋以上もある古家で一夜を明かしました。相模川沿いの静かな住宅地で車の通りもほとんどありませんから静かなものです。案の定お向かいの世話好きお人好しの奥様が、夜8時にお総菜をもってやってきました。家内の妹分でご夫婦そろって親切で働きもの、数人の独居老人のおかずなども配っているそうです。こんなご時世でなかなか出来るものではありません。
 揚げたての牡蛎とホタテのフライと十五穀米のご飯がほかほか、晩ご飯を届けがてらワタシの安否確認をしに来ているのです(笑)

 昨日届いたのがヤフオクで落札した印面の彫がある印材2個でありました。ワタシのヤフオクのルールが、原則一件1万円以内でありますが、以前から見かけてどうしても欲しかった緑石が(たぶん)再出品されていたのです。その時は、たしか5万円前後で落札されました。出品者は貴重で高価な田黄石数点と一緒に出していたのですが、それらと同じ価格帯で落札されていたのでかなりの逸品と見えました。
この写真の右であります。

 ワタシが、篆刻印のうち、観賞用コレクションとして落札するとき、いくつかのチェック項目があります。印箱(最初からその石に専用に作られたか等)、石の種類と色合い、印面の彫り(100年以上も経過したものはほとんど刻字されています)、紐(持ち手の飾り彫り)、側款(側面の作者や作成時期を彫る)、薄意(側面の浅い浮き彫)、全体の手入れや汚れなどであります。

 例えば、出土後、数百年経過したと思しき真正の旧田黄石で、塗のある木箱に収められ、半透明で艶があり細密な紐や薄意が施され、作者名や由来の側款があり、丸石の形に合わせて楕円の美しい印面の彫があるといったものは最上級で、数10万円位になっても不思議はないのです。

 今回見つけて落札した石は、ワタシの長年(笑)の印材研究で「艾葉緑」(かいようりょく)と言われる幻の石ではないか、とみたのです。この石は、やや透明感があるエメラルドのような緑色を濃くした美石なのです。きわめて埋蔵量が少なく、中国清代にはすでにその産が尽き、新たに発見・供給されず、専門家や篆刻家も見たことが無いので鑑定不可、とされています。それで色合いの似た広東緑に分類されることもあるようですが、ワタシの眼には全く別物と思えます。

ネットでもほとんどその記述や写真がありませんし、当然滅多に販売もされておりません、みつけたのがこれ。
また、30年近く前に発行された専門誌に掲載された写真「艾葉緑」がこれです。

その「艾葉緑」かもしれない石が最低価格15千円で出ていて、ワタシは思い切って3万円の上限価格を入札しました。すると、なんと最低価格のままでタイムアップ、めでたく落札できたのです。他の人が入札しなかったのは、「艾葉緑」がほとんどの蒐集家にも知られていないせいか、全くそれとは別物でもっと安い価値であるかのいずれであります。

 届いたものには専用箱がありません。しかし、石の底部の形状に合わせた木彫りの台座がついています。石はやや白い成分が混じった蓬色、硬い石質らしく光沢があります。上部から側面に全体に樹木と山景の薄意が彫られていますし、「〇山」と作者名もあります。印面は自然の丸石がすぼまった長三角の箇所に「浮光」と刻まれておりました。アクセサリーショップや、土産物屋に売られるパワーストーンとか見た目のきれいな丸石とは全く異なるもので、時代を感じさせるものでありました。

 これだけ丁寧な手の込んだ細工ものならば、石材が高価で貴重な丸い自然石であると考えるのが自然、雅安緑・広東緑石などの切り出しされた角材とは全く異なる材質で、15千円どころか10万円以上の価値がある銘品と独り合点を致しました。もし「艾葉緑」であれば、この世にほとんど出回らない大珍品でワタシの秘蔵品として大事にするだけ、値段などどうでもいいのです。

 隣にある黄白色の大型印は、セミと甲虫が彫られている精巧な細工ものであります。上の緑石と同じ人が出品したものです。一応「黄芙蓉」と説明書きがあり、中国三寶といわれる「田黄石・鶏血石・芙蓉石」の一つで、本物の芙蓉石ならばこれも大変高価な値段で取引されるものであります。これが同じく最低価格25千円でした。「毒食わば皿まで」、乗り掛かった舟、こちらもえいやとばかり3万円の入札をしたところ、なんと25千円のままで落札出来ました。この細工はよく見るとドリルようのもので穴を穿った形跡があるので、比較的最近の作であろうと見ました。

 二つ合わせて、4万円でありますが、安いものです。昔なら酔った勢いでパチンコやってはまってスる金額程度(笑)。いずれもワタシの眼鏡にかなった、とても美しい石なので大満足であります。(お宝だと信じて)毎日のように手に取って眺めるのが楽しい、これが篆刻の楽しみ方の一つであります。
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