大迫はゴールゲッターでなくスイッチャーである
ロシアW杯をめざす道程も大詰めに入ってきた。そこで今回は見えてきた選手別の現在位置と、レギュラー争いのゆくえについて見て行こう。
ハリルジャパンは相手からボールを奪い、大迫に縦パスが入った瞬間に攻撃のスイッチが入る。ただし大迫はポストプレイは鉄板だが、自分でそうは点を取れないことがわかってきた。とすればリードされて点が欲しいときのオプションとして、攻めのスイッチャーとしての大迫と、ゴールゲッターとしての(武藤嘉紀か、本田または岡崎)との2トップを選択肢として持っておきたい。その場合のシステムは4-4-1-1だ。
ハリルジャパン最大のアキレス腱は得点力だ。守備はこれまでの積み上げが利いて粘り強くなってきたが、圧倒的に得点力が足りない。しかも守備からのカウンターを狙うこのチームの特性上、少ないチャンスを確実にモノにする必要がある。ならば足りないところ(トップのポジション)にテコ入れするのは当然だ。
そこで点が欲しいときには4-4-1-1にし、1-1はポストプレイヤー(大迫)とゴールゲッターの組み合わせにする。大迫と組み合わせる第一選択は武藤嘉紀だ。
個人的には、武藤を外すのはありえないと思う。彼はドリブルによる突破力がある上にポストプレイもできるため、そのぶん大迫にシュートチャンスも来る。2人のコンビネーションにより局面を打開することが期待できる。
本田を生かすにはトップしかない
さて最前線の第二選択だが……ハリルジャパンでシュートがいちばんうまい選手は、まちがいなく本田だ。ゆえにシンプルに最前線で使う方法もある。逆にいえばこのチームで彼を生かすには、このポジションしかない。
個による単独突破ができずスピードもない本田は、右サイドではよさが生きない。また彼を右SHやトップ下で使えばバックパスを多用して攻撃をスローダウンさせてしまう。加えてショートパスやワンツーに極端にこだわる「小さなサッカー」をやってしまう。ゆえに守備からの速いカウンターと大きな展開力が身上であるハリルジャパンのスタイルに、本田は合わない。
だが4-4-1-1の下り目の1をやらせれば彼のこれらの欠点はすべて消え、(1)チームでいちばんシュートがうまく、(2)前線でボールをキープでき、(3)決定機であわてない氷の心臓をもつチーム唯一の選手である、本田のよさが生きる。また彼は守備に粘りもあるのでファースト・ディフェンダーとしても機能するはずだ。
ハリルは監督としての戦術構築力はあるが、こと選手起用に関しては非常に頭が固く頑迷(自分の考えを絶対に曲げない)ので採用する可能性は低いかもしれないが、有力な第二選択として本田を推しておく。
また岡崎を4-4-1-1の下り目の「1」で使う意味は説明するまでもないだろう。彼はハリルが求めるストライカー像とちがうため使われてないが、本田の起用と同様、もしハリルが自分流に固執せず柔軟思考ができれば採用される可能性はある。なお杉本健勇はガタイもあり大器の雰囲気は漂っているが、彼が成長するのを待っていたらW杯が2大会くらい終わってしまうだろう。
乾は先発でこそよさが出る
さて次はサイドアタッカーだ。どうやら原口と久保は確変していた旬の時期が過ぎたようだ。一時からくらべ彼らの威力は半減してしまった。もちろん選手にはバイオリズムがあるので一概には言えないが、このへんで両サイドに手を入れるべきかもしれない。
まず左に関してはデュエルに優れる原口の守備力は大きいが、彼は生真面目なあまり(?)上がってくる敵のSBについて最終ラインまで下がってきてしまうクセがある。そのため5バックになり、いったん下げたラインの押し上げが利かないことがある。もしかしたらハリルはチームの約束事としてこのやり方を原口に求めているのかもしれないが、マークは受け渡さないのだろうか?
そんなわけでそろそろ乾を先発で使うべきではないか? ハリルは「先発は原口」と決め込んでおり(このへんがハリルの頑迷なところだ)、乾は途中起用して流れを変える駒として使っているが、乾は先発で使ってこそよさが生きる選手だと思う(途中起用で試合に入って行けないシーンも目立つ)。
おそらくハリルは試合の入り方として「まず無失点で粘り強く」をめざしてるんだろうから原口の先発は理解できるが、順番を逆にして「乾で先行し原口で逃げ切る」パターンも試していい。思わぬ解が見つかるかもしれない。
一方、右サイドは決定的な切り札がなく悩ましい。久保は先発が続いているが沈黙したまま。かたや浅野はスピードが魅力だが、トラップやクロスの精度などの完成度に欠け粗削りだ。前回の記事で解説した通り、もっともっと決定力もほしい。もし武藤嘉紀が左SHやトップで構想から外れてしまうのなら、彼を右サイドへもってくるのはどうだろうか? あるいは岡崎をここで使うのも有力なオプションだ。
中盤の3センターは決まりか?
アンカーの長谷部、それから両インサイドハーフの井手口と山口蛍という中盤の3センターは決まりだろう。彼らで失点することなく試合に入り、点がほしいときには途中から長澤を使うのもおもしろい。オールドスタイルな10番タイプの森岡は起用法がむずかしいが、選択肢としてはもっておくのもいい。
ちなみに香川の攻撃での貢献度より、井手口の守備での貢献のほうがはるかに大きい。香川はもう構想外だろう。確かにもっている技術レベルこそ高いが、そのもてる力を10試合に1試合しか出せない彼はチームの足枷にしかなってない。
ハッキリ断言しておくが、最終的に香川を切れるかどうかでハリルはスポンサーに気を使うだけのビジネスマンなのか? それとも本物の監督なのかがわかる。なおGKと最終ラインはいじりようがないだろう。特に酒井(宏)の成長ぶりはめざましい。うれしい限りだ。
バックパスに逃げるな
最後に一点だけ、戦術的に気になる点を書いておく。
アジア予選が終わって以降、急にバックパスが劇増した。そこを狙われている。日本がバックパスした瞬間に敵にラインを上げられ、プレスのスイッチを入れられているのだ。
ハリルジャパンは相手ボールを奪ったらタテに速く攻めるはずが、最近はボールを取ったらまずバックパスして「ひと休み」してしまっている。で、速いカウンターがめっきりなくなった。
バックパスが多くなるのは、ポジティブ・トランジション(守備から攻撃への切り替え)が遅いからだ。ボールを奪った瞬間に味方が爆発的な動き出しをすればバックパスなどせずにすみ、前へボールを運ぶことができる。つまりバックパスに逃げるのは、オフ・ザ・ボールの動きが足りないからだ。
ここは絶対に修正してほしい。
ロシアW杯をめざす道程も大詰めに入ってきた。そこで今回は見えてきた選手別の現在位置と、レギュラー争いのゆくえについて見て行こう。
ハリルジャパンは相手からボールを奪い、大迫に縦パスが入った瞬間に攻撃のスイッチが入る。ただし大迫はポストプレイは鉄板だが、自分でそうは点を取れないことがわかってきた。とすればリードされて点が欲しいときのオプションとして、攻めのスイッチャーとしての大迫と、ゴールゲッターとしての(武藤嘉紀か、本田または岡崎)との2トップを選択肢として持っておきたい。その場合のシステムは4-4-1-1だ。
ハリルジャパン最大のアキレス腱は得点力だ。守備はこれまでの積み上げが利いて粘り強くなってきたが、圧倒的に得点力が足りない。しかも守備からのカウンターを狙うこのチームの特性上、少ないチャンスを確実にモノにする必要がある。ならば足りないところ(トップのポジション)にテコ入れするのは当然だ。
そこで点が欲しいときには4-4-1-1にし、1-1はポストプレイヤー(大迫)とゴールゲッターの組み合わせにする。大迫と組み合わせる第一選択は武藤嘉紀だ。
個人的には、武藤を外すのはありえないと思う。彼はドリブルによる突破力がある上にポストプレイもできるため、そのぶん大迫にシュートチャンスも来る。2人のコンビネーションにより局面を打開することが期待できる。
本田を生かすにはトップしかない
さて最前線の第二選択だが……ハリルジャパンでシュートがいちばんうまい選手は、まちがいなく本田だ。ゆえにシンプルに最前線で使う方法もある。逆にいえばこのチームで彼を生かすには、このポジションしかない。
個による単独突破ができずスピードもない本田は、右サイドではよさが生きない。また彼を右SHやトップ下で使えばバックパスを多用して攻撃をスローダウンさせてしまう。加えてショートパスやワンツーに極端にこだわる「小さなサッカー」をやってしまう。ゆえに守備からの速いカウンターと大きな展開力が身上であるハリルジャパンのスタイルに、本田は合わない。
だが4-4-1-1の下り目の1をやらせれば彼のこれらの欠点はすべて消え、(1)チームでいちばんシュートがうまく、(2)前線でボールをキープでき、(3)決定機であわてない氷の心臓をもつチーム唯一の選手である、本田のよさが生きる。また彼は守備に粘りもあるのでファースト・ディフェンダーとしても機能するはずだ。
ハリルは監督としての戦術構築力はあるが、こと選手起用に関しては非常に頭が固く頑迷(自分の考えを絶対に曲げない)ので採用する可能性は低いかもしれないが、有力な第二選択として本田を推しておく。
また岡崎を4-4-1-1の下り目の「1」で使う意味は説明するまでもないだろう。彼はハリルが求めるストライカー像とちがうため使われてないが、本田の起用と同様、もしハリルが自分流に固執せず柔軟思考ができれば採用される可能性はある。なお杉本健勇はガタイもあり大器の雰囲気は漂っているが、彼が成長するのを待っていたらW杯が2大会くらい終わってしまうだろう。
乾は先発でこそよさが出る
さて次はサイドアタッカーだ。どうやら原口と久保は確変していた旬の時期が過ぎたようだ。一時からくらべ彼らの威力は半減してしまった。もちろん選手にはバイオリズムがあるので一概には言えないが、このへんで両サイドに手を入れるべきかもしれない。
まず左に関してはデュエルに優れる原口の守備力は大きいが、彼は生真面目なあまり(?)上がってくる敵のSBについて最終ラインまで下がってきてしまうクセがある。そのため5バックになり、いったん下げたラインの押し上げが利かないことがある。もしかしたらハリルはチームの約束事としてこのやり方を原口に求めているのかもしれないが、マークは受け渡さないのだろうか?
そんなわけでそろそろ乾を先発で使うべきではないか? ハリルは「先発は原口」と決め込んでおり(このへんがハリルの頑迷なところだ)、乾は途中起用して流れを変える駒として使っているが、乾は先発で使ってこそよさが生きる選手だと思う(途中起用で試合に入って行けないシーンも目立つ)。
おそらくハリルは試合の入り方として「まず無失点で粘り強く」をめざしてるんだろうから原口の先発は理解できるが、順番を逆にして「乾で先行し原口で逃げ切る」パターンも試していい。思わぬ解が見つかるかもしれない。
一方、右サイドは決定的な切り札がなく悩ましい。久保は先発が続いているが沈黙したまま。かたや浅野はスピードが魅力だが、トラップやクロスの精度などの完成度に欠け粗削りだ。前回の記事で解説した通り、もっともっと決定力もほしい。もし武藤嘉紀が左SHやトップで構想から外れてしまうのなら、彼を右サイドへもってくるのはどうだろうか? あるいは岡崎をここで使うのも有力なオプションだ。
中盤の3センターは決まりか?
アンカーの長谷部、それから両インサイドハーフの井手口と山口蛍という中盤の3センターは決まりだろう。彼らで失点することなく試合に入り、点がほしいときには途中から長澤を使うのもおもしろい。オールドスタイルな10番タイプの森岡は起用法がむずかしいが、選択肢としてはもっておくのもいい。
ちなみに香川の攻撃での貢献度より、井手口の守備での貢献のほうがはるかに大きい。香川はもう構想外だろう。確かにもっている技術レベルこそ高いが、そのもてる力を10試合に1試合しか出せない彼はチームの足枷にしかなってない。
ハッキリ断言しておくが、最終的に香川を切れるかどうかでハリルはスポンサーに気を使うだけのビジネスマンなのか? それとも本物の監督なのかがわかる。なおGKと最終ラインはいじりようがないだろう。特に酒井(宏)の成長ぶりはめざましい。うれしい限りだ。
バックパスに逃げるな
最後に一点だけ、戦術的に気になる点を書いておく。
アジア予選が終わって以降、急にバックパスが劇増した。そこを狙われている。日本がバックパスした瞬間に敵にラインを上げられ、プレスのスイッチを入れられているのだ。
ハリルジャパンは相手ボールを奪ったらタテに速く攻めるはずが、最近はボールを取ったらまずバックパスして「ひと休み」してしまっている。で、速いカウンターがめっきりなくなった。
バックパスが多くなるのは、ポジティブ・トランジション(守備から攻撃への切り替え)が遅いからだ。ボールを奪った瞬間に味方が爆発的な動き出しをすればバックパスなどせずにすみ、前へボールを運ぶことができる。つまりバックパスに逃げるのは、オフ・ザ・ボールの動きが足りないからだ。
ここは絶対に修正してほしい。