ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

三ツ森ダム

2024-01-22 08:00:00 | 福島県
2016年 4月10日 三ツ森ダム
2023年 3月17日
2023年12月14日
 
三ツ森ダムは福島県安達郡大玉村玉井の阿武隈川水系七瀬川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
安達太良山南東麓に位置する大玉村は透水性の高い扇状地のため水利に乏しく、渇水時には激しい水争いが勃発するなど灌漑施設の整備が強く求められてきました。
これを受け1939年(昭和14年)に県営農業水利事業により建設されたのが三ツ森ダムです。
貯水容量72万立米は当時は福島県の灌漑用貯水池としては最大規模を誇り、ダムの完成により大玉村は中通り有数の稲作地帯となります。
管理は大玉土地改良区が受託し、約700ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
しかし2011年3月11日の東日本大震災により堤頂部に全長130メートルの亀裂が入るなど被災、貯水池の水を抜くとともに一時七瀬川下流住民に避難指示が出る事態となりました。
2012年(平成24年)に県営災害復旧事業等が着手され、2015年(平成27年)に竣工、翌年より運用が再開されています。
三ツ森ダムには運用再開直後の2016年(平成28年)4月に初訪、震災から12年、13回忌に当たる2023年3月に再訪、さらに非灌漑期で水が抜かれた同年12月に3度目の訪問をしました。
天端やダム下は立ち入り禁止となっていますが、2度目と3度目の訪問時はともに管理する土地改良区の職員さん同行での見学が叶いました。
掲載する写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
また見学の詳細については別項の三ツ森ダム見学をご覧ください。
 
本宮から県道146号を西進し、大玉カントリークラブを過ぎると左手に三ツ森ダムが見えてきます。
奥が堤体で堤頂長は205メートル、足元に斜樋があります。
復旧工事では、既設堤体の上流面に傾斜コアを設置するとともに上流面全体と下流面下部に盛土を施し補強が行われました。
もともと上流側は石積み護岸でしたが、復旧事業によりコンクリート護岸になっています。
(2023年3月17日)

再訪時は水が抜かれていたので、上流面の盛土補強部分がよくわかりました。
(2023年11月14日)

天端
東日本大震災によりここに長さ130メートル、深さ4~5メートルの亀裂が入りました。
(2023年3月17日)


天端からダム下を見下ろす
堤体下部も復旧工事により土が盛られました。
(2023年3月17日)

左岸の斜樋。
取水ゲート6門をここで操作します。
(2023年3月17日)

再訪時は水が抜かれた貯水池内へも立ち入らせていただきました。
下から斜樋を見上げます。
もともとここには取水ゲートのほかに土砂吐ゲートがありましたが、復旧事業の際に撤去移設されました。
(2023年11月14日)


こちらは貯水池中ほどにある土砂吐ゲート。
復旧事業の際に従来より上流側に新設されました。
(2023年11月14日)

ダム湖
当所は総貯水容量72万立米でしたが、復旧工事で堤体に盛土が施された結果67万4000立米に減じました。
湖畔を県道146号線を通ります。
バブル期にダム周辺でのリゾート開発が進められましたが、バブル崩壊でとん挫。
結果、豊かな自然が残っています。
(2023年3月17日)

ダム湖
非灌漑期で水が抜かれ空っぽ。
例年灌漑期終了後に水を抜き12月から貯留を始めるのですが、今年は底樋に土砂が滞留したため流水で流下させるため12月半ばまで低水管理が続いたそうです。
(2023年11月14日)


大きく湾曲した右岸の横越流式洪水吐
1980年(昭和55年)の整備事業で改修されました。
洪水吐は震災での被災はありませんでした。
(2023年3月17日)

こちらは再訪時の洪水吐
(2023年11月14日)


1980年(昭和55年)の改修で洪水吐の深さは従来の2メートルから5.6メートルに掘り下げられ、放流能力が大幅にアップしました。
(2023年3月17日)


洪水吐導流部
上に量水計が設置されています。
流下しているのはドレーンからの水。
(2023年3月17日)


洪水吐導流部と減勢工。
(2023年3月17日)


左岸ダム下の取水設備からの樋門。
灌漑補給は4月中旬からのため、訪問時は河川維持放流のみ。
(2023年3月17日)


灌漑用放流ゲート。
(2023年3月17日)


左岸ダム下から
ここから見ると復旧事業で堤体下部に土が盛られたのがよく見てとれます。
(2023年3月17日)

ダムの下流約1キロにある長井坂円形分水
ここで安達太良川と百日川に分水されます。
かつて激しい水争いが展開されてきた結果、視覚的に公平感が実感できる円形分水が設置されました。
通水は4月中旬から。
(2023年3月17日)


(追記)
三ツ森ダムはは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0480 三ツ森ダム(0308)
ため池データベース 073220007
福島県安達郡大玉村玉井
阿武隈川水系七瀬川
28.8メートル
205メートル
674千㎥/666千㎥
大玉土地改良区
1939年
◎治水協定が締結されたダム


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