ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

荒沢1号ダム(安比防災ダム)

2022-11-27 17:10:25 | 岩手県
2022年10月22日 荒沢1号ダム(安比防災ダム)
 
荒沢1号ダムは岩手県八幡平市細野の馬淵川水系安比川上流部にある農地防災目的のロックフィルダムです。
安比川上流域は火山堆積物で形成された脆い地盤で『荒沢』という地名が示すように豪雨の際には土砂流出量が急増し下流域ではしばしば洪水被害が発生しました。
これを受け岩手県は1952年(昭和27年)に農林省(現農水省)の補助を受けた荒沢防災ダム事業を採択、安比川最上流部への3基の農地防災ダム建設が着手されました。
1960年(昭和35年)の荒沢3号ダム(白沢防災ダム)に次いで、1972年(昭和47年)に安比川本流に建設されたのが荒沢1号ダム(安比防災ダム)です。
さらに1989年(平成元年)の荒沢2号ダム(鍋越防災ダム)の完成により事業着手から37年の年月をかけた荒沢防災ダム事業はようやく竣工に至りました。
1号~3号ダムは完成後は安代町が管理を受託、現在は町村合併により八幡平市が管理を引き継ぎ、安比川流域の農地防災を担っています。
なお、荒沢1号2号3号という名称はダムの位置によって振られた番号であり、建設順とは関係ありません。

安比川右岸のダートの林道を西に進むと荒沢1号ダムに到着します。
ダムは林道から一段下がった位置にあり、まずダムを俯瞰する形になります。
訪問時は周辺の紅葉がちょうど見ごろを迎えなかなかの眺め。


堤高38メートルのロックフィルダムで、下流側は犬走を挟んだ2段構成。
ダム中央の赤い階段がいいアクセントになっています。
竣工からちょうど50年ですが、リップラップには多少草が生えているだけで他の農業用ロックダムに比べればよく整備されていると言えます。


天端は関係者以外立ち入り禁止のため、右岸からの見学に留まります。
対岸に横越流式洪水吐があり導流部が流下しています。


親柱の銘版。
竣工から50年ですので、さすがに細部はあちこち傷んでします。


荒沢1号ダム1番のポイントは上流面。
ここは稼働中のダムとしては全国で5基しかないコンクリート表面遮水壁型(CFRD)ダムです。
有効貯水容量すべてが農地防災容量のため、ダム湖は空っぽ。


左岸の横越流式洪水吐と赤いゲージの放流ゲートをズームアップ。
流水型防災ダムで、通常は流入量はそのまま放流ゲートから放流し、洪水時はダムでカットして下流の洪水を防ぐ仕組み。


ダム湖が空のため、コンクリート遮水壁全体を見ることができます。
のっぺり感が独特。


放流ゲートをズームアップ。
農地防災フィルダムの場合、円筒形や斜樋型式の常用洪水吐が多いのですが、ここは四角いゲージ。
色褪せているとはいえ赤いカラーと相まってよく目立ちます。


ダムの説明版。


竣工記念碑
正式名称は荒沢1~3号ですが、記念碑では河川名から安比、鍋越、白沢という名称になっています。


(追記)
荒沢1号ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0252 荒沢1号ダム(安比防災ダム)(1887)
岩手県八幡平市細野 
馬淵川水系安比川 
 
 
38メートル 
157.7メートル 
2139千㎥/1808千㎥ 
八幡平市 
1972年
◎治水協定が締結されたダム

外山ダム

2022-11-27 10:00:00 | 岩手県
2022年10月21日 外山ダム
 
外山(そとやま)ダムは左岸が岩手県盛岡市浅岸、右岸が同市薮川の北上川水系外山川にある東北電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1943年(昭和18年)に東北振興電力(株)によって建設され、日本発送電の接収を経て、1951年(昭和26年)の電気事業再編成により東北電力(株)が事業継承しました。 
ちなみに東北振興電力(株)は昭和初期の冷害や三陸地震、さらには昭和恐慌で疲弊した東北地方の産業振興目的で設立された国策会社です   
外山ダムから直接発電所への取水を行っているわけではなく、外山川流量の季節変動を平準化し下流の米内発電所の発電効率を安定させる目的で建設されました。 
 
盛岡市街から国道455号線を東に約20キロ進むと外山ダムに到着します。
ダム直下に外山大橋が架かり、絶好の展望ポイントとなっています。
外山川を締め切る逆三角形の堤体はなかなかの男前。
提体は竣工当時のものですが、改修や補強によりコンクリートの色調が斑になっています。


アングルを変えて。
背後のダム湖は総貯水容量375万1000立米。
下流の米内発電所の出力は最大4300キロワットで、これだけの設備を要した割には発電能力がずいぶん小さいように思えます。


左岸には横越流式洪水吐があり、導流部が地山を伝って下流に流下します。
洪水吐を跨ぐ管理橋はコンクリートが新しく、改修によって刷新されたようです。
また提体中ほどから放流管が二本突き出ており、これで外山川の流量を調節します。

左岸ダムサイトから
洪水吐の管理橋だけコンクリートが新しいのがわかります。


天端は立ち入り禁止。


横越流式洪水吐の側壁から河川維持放流が行われています。
維持放流の義務化によりバルブが後付けされたのでしょう。


左岸の横越流式洪水吐
薄く越流しています。


上流から洪水吐を望む。


上流面をズームアップ
堤体中央の二つの建屋は放流管の取水口で、ここで放流量を調節します。
手前の建屋は河川維持放流用バルブの操作室。


左岸洪水吐直上には艇庫とインクラインがあります。


追記
外山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0234 外山ダム(1886)
左岸 岩手県盛岡市浅岸
右岸     同市薮川
北上川水系外山川
 
 
33メートル 
121メートル 
3751千㎥/3233千㎥ 
東北電力(株) 
1943年
◎治水協定が締結されたダム