ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

亀越池

2018-03-31 16:41:41 | 香川県
2018年3月21日 亀越池
 
亀越池は香川県仲多度郡まんのう町炭所東の土器川水系大谷川にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
起源は江戸初期の寛永年間まで遡り、当時干ばつで苦しんでいた岡田村(現丸亀市綾歌町岡田上)の役人だった岡田久次郎が私財を投下して1633年(寛永10年)に築造しました。
池の完成により岡田村の生産石高は3倍にも膨れ上ったそうです。
平成に入り県営のかんがい排水事業で水路が整備されるとともに、国営の農地総合防災事業により池の大規模な改修が行われ現在の姿となりました。
県営事業にあわせて従来岡田上地区が利用してきた亀越池用水と香川用水の水源転換に掛かる協定が結ばれ、亀越池直下流の満濃東部地区の受益者が亀越池の水を利用できるようになり、より効率的な水利用が可能となりました。
池の管理は現在も岡田上地区の受益者で構成される綾歌郡亀越池土地改良区が行い543ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
また石製の底樋管がCランクの近代土木遺産に選ばれています。
 
下流から遠望。
 
堤体は犬走りを挟んで2段構成、基部はコンクリートの擁壁。
 
堤体左手から滝のように水が流下しています。
洪水吐からの導流部が自然の岩盤を流下しており、直近の雨で水位が上がった影響でまるで天然の滝のような様相です。
 
こちらは底樋樋門。
石造り扁額入りの立派なポータルで、底樋管全体がCランクの近代土木遺産に選ばれています。
 
堤体下流面。
 
堤体は害獣防止フェンスで厳重に囲まれています。
天端や下流面には猪が掘削したような穴が多数あり、漏水につながる猪除けのフェンスです。
 
こちらの施設は水源転換協定による満濃東部地区への用水補給の取水設備。
 
天端から
件の施設からのパイプが堤体を下ります。
 
洪水吐や斜樋はフェンスに阻まれて見ることができません。
車で貯水池上流側に回り込みなんとか斜樋を撮影することができました。
この斜樋は上から4枚目の樋門へと続いているようです。
 
総貯水容量は95万8000立米
よそなら大規模ですが香川では中堅サイズ。
 
見学ポイントは限定されますが、とにかく洪水吐導流部の激しい溢流が印象的な亀越池でした。 
 
2146 亀越池(1257)
ため池コード
香川県仲多度郡まんのう町炭所東
土器川水系大谷川
19メートル
106メートル
958千㎥/958千㎥
綾歌郡亀越池土地改良区
1663年築造
1993年大規模改修竣工

備中地池

2018-03-31 15:28:04 | 香川県
2018年3月21日 備中地池
 
備中地池は香川県仲多度郡まんのう町造田の土器川水系備中地川にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
現地竣工記念碑によれば1962年(昭和37年)に農林省の補助を受けた香川県のかんがい排水事業によって建設され、1995年(平成7年)~1998年(平成10年)にかけての国営総合農地防災事業により大規模な改修が行われ現在に至っています。
管理は土器川右岸土地改良区連合が行い約100ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
備中地という名前は戦国時代にこの地を治め長宗我部元親の侵攻で敗死した造田備中守に由来するとされています。
ダム便覧では1961年(昭和36年)竣工となっていますが、ここでは竣工記念碑に合わせて1962年(昭和37年)竣工とします。
 
流面は犬走りを挟んだ2段構成。
 
右岸の洪水吐導流部。
 
天端から洪水吐導流部
堤体中段部分は洪水吐導流部の方が高くなっており、堤体との間に導流壁が作られています。
 
 
横越流式洪水吐。
 
上流面は谷積みの石で護岸
左岸に斜樋があります。
 
天端からの眺め
池の下流は谷筋に沿って水田が続き民家が点在します。
 
総貯水容量32万1000立米の貯水池
松の生えた中島が特徴的。
 
天端は車両通行可能で轍が残りますが、対岸で行きどまりです。
 
左岸に建つ昭和37年の竣工記念碑と平成10年の改修記念碑。
 
 
起源が明治維新以前に遡るものが多い香川県の溜池の中では珍しく戦後建設された溜池です。
 
2173 備中地池(1256)
ため池コード
香川県仲多度郡まんのう町造田
土器川水系備中地川
21.6メートル
103メートル
321千㎥/321千㎥
土器川右岸土地改良区連合
1962年

長柄ダム(元)

2018-03-31 03:19:56 | 香川県
2018年3月21日 長柄ダム(元)
 
長柄ダム(元)は香川県綾歌郡綾川町東分の綾川本流上流部にある香川県土木部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
1935年(昭和10年)に香川県は河水統制事業による最初のダム事業として長柄ダム建設事業に着手しますが戦争激化により中断、戦後1949年(昭和24年)に国の補助を得て事業が再開され、香川県土木部所管ダムとしては内場ダムに次ぐ二番目のダムとして1952年(昭和27年)に竣工しました。
長柄ダムは1989年(平成2年)に竣工した田万ダムと連携した綾川水系の洪水調節、既得取水権としての灌漑用水の補給と安定した河川流量の維持を目的としています。
ダムの容量は不特定利水容量が大きく、主として既得取水権としての灌漑用水の安定した補給が主目的と言えます。
1995年(平成7年)に綾川ダム群再開発事業として長柄ダムと田万ダムを導水トンネルで結ぶ計画が採択されますが、その後の検証により長柄ダムの単独再開発に変更されました。
そして2018年(平成30年)に綾川水系河川性に計画が変更され、2022年(令和4年)3月に長柄ダム再開発事業の全体計画が策定されました。
 
ダム下流は小さな公園になっていますが、ダム直下まで行くことはできず、掲載した写真が精一杯。
クレストにラジアルゲート2門を装備、右手の白い建屋は利水放流設備を兼ねた低水位放流設備です。
 
香川県唯一のラジアルゲート
現在計画中の嵩上げが実施されると自然調節方式に変更されるため香川県のダムからはラジアルゲートが消えることになります。
 
右岸から。
 
天端は車両通行可能
円蓋のついた親柱は明らかに戦前のデザイン。
 
苔生した導流面と減勢工のエンドシル。
 
ダム湖の長柄湖は総貯水容量421万立米。
嵩上げ再開発で1020万立米と2倍以上になる予定です。
 
正面は管理事務所。
 
上流から
折からの雨で水位がかなり上がっています。
 
取水設備は重力式ダムとしては珍しい傾斜式シリンダーゲート。
六角形の建屋がオールドダムの雰囲気にマッチしています。
 
香川県営ダムではよくみられる立派な竣工記念碑。
 
1995年(平成7年)に再開発事業が採択されましたが、民主党政権の成立などもあり現在のところ事業はほとんど進捗していません。
 
2166 長柄ダム(元)(1255
香川県綾歌郡綾川町東分
綾川水系綾川
FN
30メートル
124メートル
4210千㎥/4110千㎥
香川県土木部
1952年
--------------
3331 長柄ダム(再)
香川県綾歌郡綾川町東分
綾川水系綾川
FN
45.4メートル
197メートル
9440千㎥/7740千㎥
香川県土木部
1995年~

永富池

2018-03-31 00:39:32 | 香川県
2018年3月21日 永富池
 
永富池は香川県綾歌郡綾川町枌所東の綾川水系貞重川右支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
現地記念碑によれば起源は18世紀中盤明和年間に遡り当初は周辺の地名から錆田池と呼ばれていました。しかし完成間もない1772年(安永元年)に大水により決壊、1831年(天保2年)に復旧が叶い、永く富み栄えるという願いを込めて永富池に改称しました。
戦後になり1972年(昭和47年)にかけて県の事業により改修が行われ、ダム便覧ではこれを持って永富池の竣工年度としています。
その後、老朽化による漏水が激しくなり1997年(平成9年)にかけて国営総合農地防災事業による大規模な改修が行われ現在に至っています。
池の管理は永富池土地改良区が行い590ヘクタールの農地に灌漑用水の供給を行う一方、現地標識によれば周辺地域の簡易上水道の水源にもなっているようです。
 
県道39号線から東に折れ貞重川沿いの細い町道を東進すると集落の先で左手に永富池の堤体が現れます。
 
池手前の水路は右岸から延びる洪水吐導流部です。
 
1997年(平成19年)にかけての国営総合農地防災事業による改修記念碑。
 
堤体を通路が斜行して登っています。
 
コンクリート製の通路を登ると!
 
右岸の湖畔に斜樋があります。
 
池は総貯水容量35万6000立米。
 
右岸の洪水吐
ここからの導流路が上から2番目の写真へと続きます。
 
上流面はコンクリートで護岸されています。
 
右岸高台に建つ由来碑
文字が摩耗して判読は困難。
 
底樋は確認できませんでした。
なお俳優の火野正平さんが自転車で旅をするNHKBS放送の『にっぽん縦断こころ旅』2017年(平成29年)11月8日の放送で永富池が投稿者のこころの風景として登場しました。 
 
2150 永富池(1254)
ため池コード
香川県綾歌郡綾川町枌所東
綾川水系貞重川右支流
23.2メートル
92メートル
356千㎥/356千㎥
永富池土地改良区
1972年