世界の街角

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瑶(ヤオ)族のことども

2018-10-09 06:57:06 | 東南アジア少数民族

古い話である。2013年5月9日、ハノイ民族学博物館を訪れた。写真はヤオ族の展示だったと記憶している。中央の三つに並ぶ肖像はベトナム道教の三聖母である。ここで話題にしたいのは、その像の上左右の蛇をモチーフにした、布製の人形と云うか肖形物である。
話は飛ぶが、ベトナムは中国の圧政に苦しめられ、有史以来今日まで中国との戦いであった。しかし文化的には抗しきれず、そこかしこに中華文化の影響をみせている。李、陳、黎朝皇帝の権威は五爪の龍や鳳凰で表され、皇帝廟のみならず、文廟や玉山祠などの装飾に多用されている。
ところがヤオ族の蛇である。話は紀元前後に飛んで恐縮である。雲南の李家山、石寨山遺跡から出土した青銅器には、さまざまな動物が彫像されているが、その彫像の下には、必ず蛇が造形されている。その蛇の多くは二匹の蛇が注連縄のようにからまり、交尾している姿である。そして龍はめったに登場しない。それは填王国が漢民族とは、異なる世界観を持った少数民族によって建国された、王国であったからである。
ヤオ族は民族の創成神話に関連して、その中心的トーテムに狗、蛇などがあると云う。その蛇が掲げられいるのが、上の写真である。ベトナムの中心的民族ベト(キン・京)族を除く少数民族、ラオスに居住する民族、北タイや雲南に居住する少数民族は龍ではなく蛇、あるいはナーガであった。
そのようなことで、写真の展示を見て、何か面白くも感慨深いものがあった

道教の三聖母に話を戻す。向かって左が緑の山林神、中央が赤の天神、右が白の水神とのことで、ベト族もこの三聖母に所願成就を託すという。ヤオ族や少数民族のものと思っていたが、ベト族の文化にも大きくかかわっていたことになる。

ついでと云えば何だが、ヤオ族は東南アジアの少数民族の中で、漢族の影響を最も受けた民族で、先の道教もそうであるが、風水も伝わっている。

 ハノイ女性博物館へ行ってみた印象である。ガイドブックには、少数民族やベトナム戦争時の展示が見られると、記載されている。行ってみると、民族や民俗に関する展示もあり、興味をひいている。
興味ある展示は幾つかあったが、ここでは瑶(ヤオ)族の風水書なるものを紹介したい。ひろげられた写真の風水書には、火木之相、土金之相とある。瑶(ヤオ)族はこれらに則り、吉凶を判断し災いを避けて1年をすごしたのである。このように風水は漢族のみならず、それに接する少数民族にも影響を及ぼしたことが分かる。
大西和彦氏は1992年よりハノイに在住しておられる宗教史、民間信仰史の研究家であるが、氏によるとソンラー省(黒タイ族居住地)の墓は風水でいう吉相の地、つまり三方を山に囲まれ、南は開け湖沼の地に面するように設けられているという。・・・これ以上の話が聞けていないので、この墓が黒タイのものか、ベトナムの主要民族であるベト(キン・金)族のものか、それとも瑶(ヤオ)族のものかはっきりしない。

タイではタイ人は墓を持たないと云われ、事実そうであるが、ソンラー省の黒タイ族が、もし墓を持つとすれば、いつの時代まで遡れるか、おおいなる興味が湧いている。
結論のない話であったが、ベト族や瑶(ヤオ)族は道教を信仰し、災禍をさけるため風水を用いている。漢族に接するがための影響と考えている。尚、チェンマイ近郊にもヤオ族は居住する。ヤオ族の手になる道教神像は、街の額縁屋で見た覚えがある。

 

<了>

 

 


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