過日、森永卓郎氏の著書『ザイム真理教』に記述されている内容を紹介した。森永氏によると”失われた30年”の原因は、手取り収入の減少が消費の減少を招いているからだとする。この見解には異論がある。その異論について説明する。
先ず、日米のGDP比較である。
30年間の比較Dataではなくて恐縮である(30年前のDataを検索するがHitしないので・・・)。この間、米国のGDPの伸び率は2.4倍に対し、日本はマイナスである。Dataは$ベースなので、最近の円安によりマイナス成長の結果となっている。そこで円ベースのGDPは下表となる。
出所・財務省貿易統計
円ベースでみると、この間のGDP伸び率は約106%となり、20年間で僅か6%である。20年間の比較Dataであるが、失われた30年を表す数値である。GDPが成長しないのに昇給はあり得ない。僅か6%の成長も輸出が、この間90%成長したおかげである。ついでに日米の1人当たりGDP比較をしてみた。
出所・内閣府統計
なぜ、このように差がついたのか。日本企業のイノベーションが世の中の動きを先取りしているどころか追従できていないことを物語っている。
世の中の産業別一部分野の収益性(生産性)を比較したDataが東洋経済新報社より発表されている。
出所・東洋経済新報社
売上げ・利益ともに最高額はトヨタであるが、賃金を決める要素である収益性(生産性)は、失礼な表現ながらたいしたことはない。パナソニックは過去の栄光を取り戻せないでいる。それに比較しソニーは事業構造の変革に成功した。まさにイノベーション企業である。
ニトリ、ユニクロ、DAISOは優良企業である。しかし、当該ブロガー流に表現すれば、海外の低賃金で物を調達し、日本で販売しているにすぎない。それはそれで、困難はあると思うが、ものつくりは海外企業に丸投げである。この企業経営構造がかねてより問題であると認識している。この3社の輸入額に相当する商品を国産すればどうなるか、それなりのGDP増額となる。なぜ国産しないのか、設備投資をせず低賃金の東南アジアや中国、最近ではバングラディシュなどの西アジアから仕入れている。まさに安直そのものである。時間も金もかかるイノベーション逃避にほかならない。
村田製作所は1人当たり売り上げは、そうでもないが、1人当たり営業利益額はそれなりである。これは何を物語るか、1人当たり生産性が高いことを示している。安直に安い労務費を求めて海外生産していないことになる。海外売上比率は9割を超えても、国内生産比率は6割以上である。国内生産で国際競争を勝ち抜くには、生産性向上の合理化投資と新商品等の開発投資によるイノベーションが欠かせない。
出所・村田製作所HP
村田製作所は、この20年間で売上高4倍、営業利益は5倍となっている。利益は売上げ以上の伸び率となっている。それは、新商品・新工法・新素材の研究開発費、生産性向上の設備投資を年々増加させていることから当然の結果と云えば結果である。なぜ日本企業は、自己研鑽を怠り安直に流れるのか。安直に流れているだけではイノベーションは興起せず、世界からおいて行かれるだけである。
減税が議論にあがっている。法人税と所得税を減税しようとの議論である。所得税減税は良しとしても、法人税減税は何の目的なのか?意味がない。法人税減税は企業の内部留保が積みあがるだけである。投資減税をすべきだ、それと共に投資助成金・増分償却を認める施策をすすめれば、それだけで大きなGDPの成長となる。
各企業はイノベーションにより、国際競争を勝ち抜き、輸出を増やせばGDPは成長し、GDP成長により賃金増加を勝ち取るべきだ。
<了>
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