世の中の動きというものは「相対的」なもので動く。もともと「絶対」というものがない。唯一、絶対的な真理があるとすれば「万物は環境の変化に常に対応し、生き抜くことを使命としている」ということだけだろう。若い雑誌記者の駆け出し時代、70年の石油ショックの時に日商岩井がスポット原油を高値で買い付け、相場を煽り、代わりに産油国のプラント輸出の商談を成功させるという卑劣な商法を試みたことがあった。俺はその情報を入手し、取材に駆け巡った。そして大手新聞社の経済部のデスクまでウラを取ろうと押しかけた。「同業者に取材なんてよく来るなー」っと高齢のデスクは笑いながらも、俺の熱意に「俺も何度も社説を書いたが、世の中ちっとも変わらないよ。まあ、頑張れよ」と妙な励ましをされたことを未だに覚えている。この歳になるとその高齢のデスクが言ったように「本当に何を言ったって、世の中ちっとも変わらないなあ」っと実感する。人類の世の中というものは、一杯の人たちがいろんなことを言って、何だかとにかく変わって行く。変貌はする。しかし、その世の中の変貌というものは、「絶対幸せな世の中づくり」とは無関係な進歩・発展をしているだけで、もともとユートピアは行けども行けども未来に存在しないのかも知れない。世の中はただただ相対的に変貌するだけである。日蓮は「それ浄土というも、地獄というも、外には候わず、ただ我らが胸のうちにあり」と言う。
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