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~渋谷の東急文化村で開催中の展覧会「ルドンの黒」を観て~
画家としては無名であったルドンに対していち早くその特異な世界にスポットを当てた一人としてJ・K・ユイスマンスがいます。ユイスマンスは19世紀末フランスのデカダンス作家として著名です。
彼の象徴主義的な代表作「さかしま」(これがまたルドンの絵に負けじと奇怪な小説なんですが)に登場する主人公デ・ゼッサントのお気に入りの絵のひとつとしてルドンの絵を小説で紹介しました。これがルドンの名前を世間に知らしめる大きなきっかけとなったようです。しかし、二人の関係は微妙なであったようで交遊は月日とともに途絶えていったみたいです。(むしろ同時期の象徴派詩人マラルメの方が一貫した交遊があったそうです)
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「デ・ゼッサント」(1888年)(「さかしま」の主人公)
以下は、ルドンが世間に知られるきっかけとなったユイスマンス「さかしま」の中のルドンを紹介した部分の引用です。(澁澤龍彦訳による)
“それらの絵にはオディロン・ルドンと署名がしてあった。
金の玉縁をとった粗製の梨剤の枠のなかに、それらの絵は、想像もおよばない幻影を閉じこめていた。すなはち、水盤の上に置かれたメロヴィンガ王朝風の首。僧侶のようでもあり公開討論会の演説者のようでもある、巨大な砲丸に指をふれた髭むしゃ男。?のまんなかに人間の顔のあるは、怖ろしい蜘蛛。さらに木炭画は充血に
悩む恐怖の夢のなかにまで没入していた。こちらには、悲しげな眼でまばたきする巨大な骰子があるかと思えば、あちらには、涸れた不毛の風景や、黒焦げになった原っぱや、土地の起伏や、もくもくと黒雲を吹き出す火山の激動や、澱んだ鉛色の空がある。時には悪夢のような科学の世界に主題を借りて、有史以前の時代に遡るかとさえ思われる。お化けのような植物が岩の上に花を咲かせ、いたるところに漂意志や氷河土がころがっている。そして、そこに登場する人物たちの猿のような風貌、厚みのある顎骨、突き出した眉弓、反りかえった額、平らな顱頂などは、われわれの遠い先祖の頭部、第四紀初期の人間の頭部を思わせる。マンモスや、鼻孔に隔壁のある犀や、大熊などと同じ時代に生きていた、まだ言葉を知らぬ、果実を常食とする人間の頭部である。これらのデッサンは、まさに類例のないものであった。作者は多くの場合、絵画の限界を飛び越えて、きわめて特殊の幻想、病気と精神錯乱の幻想を創始していた。
実際、巨大な眼や狂気の眼をぽっかりと開いたこれらの顔や、ガラス壜越しに見たように、桁はずれに大きくされたりいびつにされたりしたこれらの身体を見ていると、デ・ゼッサントの記憶には、腸チブスの思い出、いまだに残っている焼けく夜々の思い出が再び甦り、少年時代のおそろしい幻影がちらつきはじめるのであった。”
※ユイスマンス「さかしま」澁澤龍彦訳(河出文庫)より
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Black is fantastic ⇒ルドン#1「ルドンの黒」展(文化村ザ・ミュージアム)
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以下は、ルドンが世間に知られるきっかけとなったユイスマンス「さかしま」の中のルドンを紹介した部分の引用です。(澁澤龍彦訳による)
“それらの絵にはオディロン・ルドンと署名がしてあった。
金の玉縁をとった粗製の梨剤の枠のなかに、それらの絵は、想像もおよばない幻影を閉じこめていた。すなはち、水盤の上に置かれたメロヴィンガ王朝風の首。僧侶のようでもあり公開討論会の演説者のようでもある、巨大な砲丸に指をふれた髭むしゃ男。?のまんなかに人間の顔のあるは、怖ろしい蜘蛛。さらに木炭画は充血に
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実際、巨大な眼や狂気の眼をぽっかりと開いたこれらの顔や、ガラス壜越しに見たように、桁はずれに大きくされたりいびつにされたりしたこれらの身体を見ていると、デ・ゼッサントの記憶には、腸チブスの思い出、いまだに残っている焼けく夜々の思い出が再び甦り、少年時代のおそろしい幻影がちらつきはじめるのであった。”
※ユイスマンス「さかしま」澁澤龍彦訳(河出文庫)より
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