昭和の黒い霧・松本清張NO.７２・・・ドラマ「火の記憶」（主演：秋吉久美子／ＮＨＫ放送）

■放送：１９７８年、ＮＨＫ
■演出：和田勉
■出演：秋吉久美子、高岡健二、村野武範、他

松本清張の短編小説をドラマ化した「火の記憶」は、新しい物語を加えるでなく、その短い小説の行間を読んでいって上手く映像化したものです。演出は和田勉、和田は、ＮＨＫにおいて清張の作品を何本か手がけていて以前に「けものみち」「天城越え」などを見たことがあります。

ドラマには秋吉久美子が出ていて、さすがに、若い！って感じです。個性派女優で名を馳せた彼女ですが、確かに独特のエネルギーが全面から出ているようで、もしボクが若いときにこんな女の子を前にしたらたじたじになってしまっていたかもしれないです。ちなみに若き秋吉久美子は、洋服より和服の方がだんぜん似合っています。着物を着崩した感じに色っぽさが出ているいんですね。洋服だと少し野暮ったさがあります。それとさりげなく松本清張が出演していました。老人のメイクをして台詞もありの、出たがりだったのかなと。

さて、物語は後半に清張の短編の名作「張り込み」を思わせるような展開になっていきます。そして女の情念を隙間見せながら、それに感応する刑事という、人間くささというか、＜生＞の悲しみを包含したエピソードが浮き上がってきて話に奥行きが出てきます。３０分もあれば読めてしまうような清張の短編ですが、行間を膨らませながら仕上げたところに和田勉の力量を見たように思いました。

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※「火の記憶」所収

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