新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2020年の世界の紙・板紙需給

2022-04-02 10:44:04 | コラム
新型コロナウイルスの悪影響で3年連続して減少:

RISIが世界の紙パルプ需給を各国と各地域を概観する「アニュアル・レヴィユー」の2021年度版が公表された。今頃になって2020年度を論ずるのかと言われそうだが、例年のようにこの時期に2年前の世界の統計を纏めて発表されるようになっている貴重な資料である。

このRISIが纏めた資料によれば2020年の紙・板紙の需給は、消費が対前年比(2019年のこと)△3.5%の4億181万トン、生産も同様に△3.5%で3億9,853万トンとなっていた。この減少は新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大によるもので、生産・消費活動が停滞したのだった。一方、世界的な資源獲得競争を背景に市況の上昇が続くパルプ需給は生産・消費共に△2.4%と紙・板紙に比べてマイナス幅が小さく、前者が1億7,924万トン、後者が1億7,867万トンだった。

ここから先は統計面を簡単に概括してみるが、私が最も興味を持って見ているのが「各国の1人当たりの名目消費量上位30ヶ国」である。

そこはさて措いて、先ずは世界の生産・消費の上位30ヶ国だが、当時アメリカ第2位だったウエアーハウザーが2005年に、アメリカと世界第1位のインターナショナル・ペーパーは2007年から印刷用紙市場から撤退を開始したように、先進国では21世紀に入って間もなく紙・板紙の市場に見切りを付けていたのだった。

2020年に於けるその上位30ヶ国の紙・板紙の生産量は3億7,521万トンと対前年比△3.6%だった。この生産量が世界175ヶ国の生産量に占める比率は94.1%となっていた。第1位は中国で1億399万トンと対前年比△4.3%、2位がアメリカの6,795万トンで△1.7%。3位が我が国で2,288万トンの△9.9%、4位はドイツで2,135万トンと△3.3%。5位はインドで1,445万トンの△6.1%。6位がインドネシアで1,295万トンと△0.1%。7位が韓国で1,129万トンの△0.4%、8位はブラジルで1,038万トンと△2.4%。9位はロシアで943万トンと+4.5%。10位はスウェーデンで933万トンの△2.9%となっていた。

11位以下はイタリア、カナダ、フィンランド、フランス、スペイン、メキシコ、タイ、ポーランド、トルコ、オーストラリアとなっていた。これらの10ヶ国の中ではメキシコ、ポーランド及びトルコがプラス成長を記録していた。因みに、消費量では1位が中国で以下アメリカ、日本、ドイツ、インド、韓国、イタリア、ブラジル、メキシコ、フランスとなっていて、プラス成長を記録していたのが中国と韓国だけだった。

さて、1人当たりの名目消費量だが、14億人の人口を擁する中国は相変わらず上位30ヶ国目になるハンガリーの95.1kgに遠く及ばない79kgに止まっていたのが、個人的には印象的だった。第1位はスロベニアで269.8kgで対前年比+2.0%と前年の2位から上昇した。2位はベルギーの239.4kgで△10.7%と、前年の1位から陥落していた。3位がドイツで224.7kgで△4.5%だが3位は変わらず。4位はオーストリアで206.2kgの△9.2%で順位は不変。5位はアメリカで198.2kgと△3.6%で順位は不変。6位には韓国が入って191.2kgと+1.2%で7位から浮上。7位が我が国で178.4kgと△12.0%となり6位から下落。8位は台湾で173.3kgと+2.6%となり10位から躍進。9位はポーランドで165.4kgで+2.6%と13位から浮上。10位はUAEで163.3kgと+9.4%と15位から上昇していた。

以下は11位にフィンランド、イタリア、チェコ、オランダ、ニュージーランド、リトアニア、デンマーク、カナダ、エストニア、スウェーデン、スペイン、フランス、オーストラリア、クロアチア、イスラエル、スイス、英国、ポルトガル、クウェート、ハンガリーとなっていた。11以下でプラス成長となったのはチェコ、リトアニア、イスラエル、クウェートの諸国だった。私は紙・板紙の1人当たりの数値がその国の文化・文明のバロメーターという時代はとうに終わっていて、減少傾向にあることがICTかというかデイジタル化の進展と普及の度合いを示していると解釈するようにしている。

但し、そういうと中国の79kgように30位にも及ばない現象を何と解釈すべきか、毎年悩まされている。中国ではスマートフォンを活用したキャッシュレス化が進んでいる有様を、散々テレビのニュースで見せられているのは何だということだ。紙の帳票など使われていないではない様子なのだ。

参考資料;紙業タイムス社刊 Future誌 22年4月4日号