新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

日米企業社会における文化の違い#13

2008-03-13 07:12:49 | 200803

承前<o:p></o:p>


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今回はこれぞまさしく文化の違いであると感じたことを語る。私はこれが飽くまで違う国の慣習であり、褒めることでも貶すことでもないと思う。単なる違いである。<o:p></o:p>


実は意識して始めたわけではないが、これが13回目で今日が313日である。しかも13という数字は私の人生に常につきまとってきていた。偶然の悪戯だろうが、面白い現象。<o:p></o:p>


ところで、此処まで書いてきて異論・反論・批判・ご意見がないのは何となく不安になる。<o:p></o:p>


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13)独占禁止法(=Antitrust)への対応:<o:p></o:p>


法律遵守の国:<o:p></o:p>


違反した場合には馘首されても・・・:ここにも我が国との違いがあるかも知れない。本当は違いがあっては困る気もするのだが。彼らの思考体系が二進法であるとはすでに述べてきた。それならば、法律があればそれを守るだけとなることは不思議ではない。だが、そこまで厳格であるとは思われないだろう厳格さが、こと”Antitrust”(「アンタイトラスト」と発音されるのが一般的だと思う)については要求されているのである。逃げ口上をお許し願えば、最早リタイヤーして十数年であるから、今でもあの当時の厳しさが、どの業種のどの企業でも続いているか否かは知らない。それでもこの件を述べていこう。<o:p></o:p>


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これを以て最後とする:これは1975年に入社した頃の社長からの”Circular letter”( =社内回覧)の一節であった。具体的には、社内のある事業部の製品の全米的な大手ユーザーへの納入価格に談合があり、その件であるマネージャーが摘発されたのだった。幸いにも起訴までには至らなかったのだが、社長は激怒してその回状にこう記していた。「談合は法律違反で許し難い。今後は摘発されれば直ちに馘首。そして起訴されれば法定費用と弁護士費用等は一切個人負担とする。今回は最後の特例で馘首はしないが例外はこれを以て最後とする」と。「馘首されても文句を言うな」に対して「はい、申しません」と答えている感がある。これと比較して日本の官庁と会社は甘いというか否かは読者諸賢のご判断に委ねる。<o:p></o:p>


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独占禁止法対処のマニュアル:これは途方もなく分厚いファイルで、細かく禁止規定が説明され、注意すべき事柄と行動が説かれていた。例を幾つか挙げれば「得意先の株式を持つこと」、「業界の会合に出席する場合」、「業界の団体に加盟する場合」、「街中やホテル等で同業他社の営業担当者に出会った場合」、「同業他社の施設を訪問する場合」、「親族に得意先または仕入れ先に勤務する者がいる場合」等であるが、何れも直属上司に届け出ること、または法務部の指示を仰がねばならないのである。<o:p></o:p>


 このマニュアルは熟読しておかないことには、職を失うことになるのは言うまでもあるまい。<o:p></o:p>


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年に一度の誓約書提出:これは法務部から来る上記の各項目別に”Yes”か”No”か、と答える質問状のことである。これも大変なことなのだ。どれほど厳格かといえば「同業他社の営業担当者と偶然に出会い、握手した直後に両社が値上げを発表した。その握手を偶々写真に撮っていた需要家筋からそれが談合の場であった証拠写真としてFTCに提出されて、立件されたしまった」という例があったと、マニュアルに説明されているのである。これに対抗するためには、業界の会合には弁護士を同席させて、談合がなかったという証拠のテープでも準備していないと、負けになるということなのである。<o:p></o:p>


 この誓約書には一つでも”Yes”があれば、例えば得意先の株式を買ったような場合に、直属上司に遅滞なく届け出て、法務部に出頭することになる。さらに、この誓約書の末尾には「以上の項目に一つで違反があれば馘首されても意義は申し立てません」と記されており、その下に自署することになっている。<o:p></o:p>


 これに対してよく出る妙案?に「アメリカでなくて日本で談合すれば解りはしないだろう」がある。しかしながら、FTCも去る者で、海外では一層厳しく監視していると聞かされた。東京にいる同業他社の日本人社員と機会があった際に密かに語り合った。「何処かで出会った時には、戯れにでも握手だけはしないでおこうな」と。でも、冗談は言っていなかった。双方とも真剣であった。<o:p></o:p>


 我が国でも近頃「コンプライアンス」などと騒がれ出した。法治国であれば当然かも知れないが、二進法でものを考えない我が国の思考体系では、アメリカ式のコンプライアンスを横目に見ていく姿勢が必要かも知れない。<o:p></o:p>


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結び:一時外資に就職を希望する大学生が増えたと聞いたことがある。日本に現地法人として新卒を定期採用しているような会社では、どうアンタイトラストを扱っているか知らぬが、アメリカの会社にはこういうコンプライアンスがあると承知しておくと良いだろう。言うなれば、思考体系の違いを入社してから気付いたのでは遅いのである。気軽に日本の同業他社に入社した友人と「一寸、一杯」もままならないかも知れないのだから。<o:p></o:p>


続く)<o:p></o:p>