【掲載日:平成25年8月20日】
さ檜隈 檜隈川に 馬留め 馬に水飼へ 我れ外に見む
慕うて待つは 女の常か
あんたの辺り 見て偲ぶんや
噂聞くだけ 空しい恋や
男空音を 知りつつ待って
垣間見るから 馬水飲まし
君があたり 見つつも居らむ 生駒山 雲なたなびき 雨は降るとも
《あんた居る 辺り見てたい 生駒山 雲隠しなや 降っても良えが》【雨に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇三二)
葦辺行く 鴨の羽音の 音のみに 聞きつつもとな 恋ひ渡るかも
《鴨羽音 あんた噂を 聞くだけで 空しにうちは 恋続けとる》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇九〇)
楽浪の 波越すあざに 降る小雨 間も置きて 我が思はなくに
《波越の 土手降り続く 小雨みたい 絶え間無うちは あんた思てる》【雨に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇四六)
あしひきの 山菅の根の ねもころに 我れはぞ恋ふる 君が姿に
《山菅の 根云う違うが 懇ろに あんたの姿 うち惚れてんや》【菅に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇五一)
遠つ人 猟道の池に 棲む鳥の 立ちても居ても 君をしぞ思ふ
《池に棲む 鳥飛び下り 休み無し うちも休み無 あんた思てる》【鳥に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇八九)
(遠つ人=遠来の鳥=雁→狩)
白髪つく 木綿は花もの 言こそば いつのまさかも 常忘らえね
《木綿花は その場限りや 言葉かて けどうち全部 覚えてまっせ》【木綿に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・二九九六)
(木綿花=造花)
さ檜隈 檜隈川に 馬留め 馬に水飼へ 我れ外に見む
《檜隈川の 岸で馬駐め 水飲まし その間にそっと うち見るよって》【馬に寄せて】
―作者未詳―(巻十二・三〇九七)