【掲載日:平成24年2月24日】
人言は 暫しぞ我妹 綱手引く 海ゆ益りて 深くしぞ思ふ
川の流れは 海へと注ぐ
沖の白波 川より激し
深い海底 思いの深さ
沼 土 岩と こと寄せ続く
荒磯越し 外行く波の 外心 我れは思はじ 恋ひて死ぬとも
《磯越して 離れ行く様な 薄心 わし持たへんで 恋死にしても》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三四)
(外行く→外心)
淡海の海 沖つ白波 知らずとも 妹がりといはば 七日越え来む
《住む処を 知らんかっても お前なら どんな掛ろと 探して行くで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三五)
(白波→知らず)
大船の 香取の海に 碇下ろし 如何なる人か 物思はずあらむ
《この世には いろんな人が 居るけども どんな人かて 物思いするで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三六)
(碇→如何なる)
沖つ藻を 隠さふ波の 五百重波 千重しくしくに 恋ひわたるかも
《恋の波 次から次と 寄せてくる 沖の藻隠す 寄せ波みたい》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三七)
(五百重→千重)
人言は 暫しぞ我妹 綱手引く 海ゆ益りて 深くしぞ思ふ
《頑張りや 中傷すぐ止む このわしは 海より深こう 思てるよって》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三八)
淡海の海 沖つ島山 奥まけて 我が思ふ妹が 言の繁けく
《気になるな 心奥底 慕わしいと 思てるあの児 恋噂多いんや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四三九)
(沖つ→奥)
近江の海 沖漕ぐ船の 碇下ろし 忍びて君が 言待つ我れぞ
《碇して 船じっとする うちかって じっと忍んで 声掛待ってんや》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四四〇)
隠り沼の 下ゆ恋ふれば すべを無み 妹が名告りつ 忌むべきものを
《心底 焦がれ堪らん お前名を 言たらアカンに 口して仕舞た》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四四一)
大地は 採り尽すとも 世の中の 尽し得ぬものは 恋にしありけり
《地の土は 掘り尽くせるに 恋心 なんぼ汲んでも 湧き止まらんで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四四二)
隠処の 沢泉なる 岩根をも 通して思ふ 我が恋ふらくは
《わしの恋 山奥沢の 大岩を 突き砕くほど 激しいんやで》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四四三)
白真弓 石辺の山の 常磐なる 命なれやも 恋ひつつ居らむ
《石辺山 永久岩の 命なら 恋焦がれても 死にはせんのに》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二四四四)
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