【掲載日:平成22年3月12日】
百済野の 萩の古枝に 春待つと 居りし鶯 鳴きにけむかも
春まだ浅い野 梅がほころびを待つ
微かに 鶯の声
赤人は 思いやっていた
〔あれは 野枯れた原を 辿っていた折であった
季節はずれの 鶯
萩の古枝 寒げに 止まって居った
あの 枯野の趣
なぜか 心に懸かるものがあった〕
百済野の 萩の古枝に 春待つと 居りし鶯 鳴きにけむかも
《百済野の 萩の古枝 止まってた 春待ち鶯は もう鳴いたかな》
―山部赤人―〔巻八・一四三一〕
あしひきの 山谷越えて 野づかさに 今は鳴くらむ うぐひすの声
《山や谷 越えて野の岡 来て今は 鳴いてるやろな 鶯の声》
―山部赤人―〔巻十七・三九一五〕
恋しけば 形見にせむと わが屋戸に 植ゑし藤波 いま咲きにけり
《郭公を 偲ぶ縁に 植えといた 家の藤花 今咲いたがな》
―山部赤人―〔巻八・一四七一〕
そこには
自然の中に身を置き
あるがままを楽しむ
枯れた赤人が いた