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BRTで仮復旧したJR気仙沼線(2)~路線編

2012-09-16 | バス[東北]

先日「MAKIKYUのページ」では、BRT(Bus Rapid Traisit)による仮復旧を果たしたJR気仙沼線柳津~気仙沼間で充当されているバス車両に関して取り上げましたが、今日はその続編として車窓などの様子を取り上げたいと思います。

MAKIKYUが今月気仙沼線を利用した際には、岩手県内から首都圏へ帰還する際に乗車した事もあり、気仙沼駅からのスタートになりました。

気仙沼市も魚市場などのある低地の中心部は甚大な被害が発生しているものの、気仙沼駅は中心部からやや離れた高台に位置している為に津波被害はなく、この事も幸運に作用してか、震災後も大船渡線一ノ関~気仙沼間は比較的早期に復旧しており、現在同区間はほぼ震災前と同様の運行状況になっています。

震災による津波被害などで運行がままならない交通機関が多数存在する中で、同線と競合する岩手県交通の特急便を含む路線バス(一ノ関~気仙沼・一部便は更に陸前高田~大船渡まで運行)と共に、全国各地から気仙沼へ向かう公共交通機関として重要な役割を果たしています。

この気仙沼駅から出発する気仙沼線も、気仙沼駅と隣の不動の沢駅こそ津波被害は免れているものの、南気仙沼~陸前戸倉までの区間は鉄道施設だけでなく、沿線地域の被害も甚大で、運行上の都合もあってか、気仙沼~柳津間の鉄路による復旧見通しは当面…というのが現状です。

その事もあってBRTでの仮復旧となっており、今後鉄路での復旧が実現するのか否かも気になる所ですが、気仙沼駅は震災前から一部路線バスの発着もあるものの、一ノ関~大船渡方面を結ぶ岩手県交通バスなどは駅ロータリーには入らずに駅前の通りを発着(徒歩1~2分)する状況で、気仙沼駅発着の路線バスが発着するロータリーも決して広いとは言い難いものです。


そのためロータリーのバス発着場奥に、気仙沼線BRT専用の折り返し・待機場が設置されており、気仙沼駅のBRT乗り場では、他に一部路線バス(ミヤコーバス)の発着もあるために、出発時間の2~3分前にようやくBRT入線となります。


気仙沼線BRT区間各駅(停留所)では、バスの車体塗装と同様に派手な印象を受ける赤い専用ポールが立っており、一般路線バスとは異なるBRTの存在を際立たせている感があります。


BRT区間の運行本数は鉄道線時代よりも倍増と言って過言でない位に増発されており、気仙沼駅を発着する大船渡線一ノ関方面の時刻表と対比すると、その差は歴然としています。

BRTに乗り込んで少しすると南気仙沼(市立病院口)、南気仙沼は駅舎や隣接するミヤコーバス営業所をはじめ、周囲が壊滅的状況という事もあってか、鉄道線時代の駅とは離れた場所に停留所が設置された事もあってか、南気仙沼(市立病院口)となっている様ですが、この辺りはやや内陸に位置する事もあってか震災の影響は余り感じられません。

被害が甚大な地域と、何事もなかった様に感じられる地域(それでも震災の影響はあり、震災後に整備した所も多いですが…)が紙一重と言う状況は、東日本大震災における津波被災地域の大きな特徴です。

少し進むと甚大な津波被害を受けた地域に差し掛かり、最知~陸前階上の1駅間は、BRT仮復旧と共にBRT専用道が整備された区間となります。


この区間に乗車していると、数年前に鉄道が廃線となり、その後一部区間がバス専用道として整備された茨城県石岡市~小美玉市間の旧鹿島鉄道線→かしてつバス専用道(関鉄グリーンバス運行)を思わせる雰囲気があり、駅舎やホームが残る陸前階上駅の現状も、かしてつバスのバス専用道区間で唯一駅舎とホームが残存する石岡南台駅を連想します。

このBRT専用区間を過ぎて暫くすると本吉駅に到着し、鉄道線時代も気仙沼~本吉間の区間列車が設定されていた運行上の拠点駅ですが、BRTでも一部便は気仙沼~本吉間の運行となっています。


本吉駅はやや高台に位置する事もあってか、周辺各駅は壊滅状況となっている箇所が多い中で、被害は免れています。

特定日に窓口における定期乗車券などの出張販売も行っており、BRT待合所も兼ねていますので、駅舎内に立ち入る事も可能で、全区間を乗り通すと現在所要約2時間を要するにも関わらず、一般路線車充当でトイレ設置のない気仙沼線BRTにおいて、トイレ休憩ポイントにもなっています。

駅構内に入れない状況が、鉄道の不通長期化を物語っている様に感じられたものですが、同駅ではダイヤ上5分程の停車時間(道路状況によって変動あり)が設けられており、BRT運行区間が路線バスにしては比較的長距離に及ぶ事もあってか、MAKIKYUが乗車した便では乗務員交代も行っていました。

本吉を過ぎると、鉄道線時代は開業から比較的歴史の浅い区間だけあって、地方ローカル線にしては比較的高規格で高架区間なども多く、三陸沿岸を走るJR各線に比べ、津波被害の小さかった三陸鉄道(それでも結構な被害が出ており、今日でも不通区間が存在しています)を連想させる雰囲気がありました。

それでも最も津波被害が甚大だった地域を結んでいた事もあり、高さ10m以上の高架や盛り土上にあった線路や駅でも流失・壊滅する箇所が相次ぎ、東日本大震災における津波被害が、三陸一帯で数十年毎に被害を出していた津波とは比べ物にならない未曾有の大災害であった事を物語っている様にも感じられます。

 
地盤が沈下して水の引かない土地や、土台だけ残して流失した橋脚などは、震災から1年半を経た今でも至る所で見受けられ、震災の爪痕が今日も強く残っていますが、BRTから眺める穏やかな海は非常に綺麗なもので、この光景を見ると複雑な心境になります。

陸前小泉・歌津など甚大な被害が発生した地域を次々と通り過ぎて暫くすると、BRT区間で唯一の新駅「ベイサイドアリーナ」があり、新駅というよりも停留所といった状況です。


南三陸町は旧志津川町の中心部が壊滅的被害を受けた事もあり、現在の仮設役場などがこの一帯に位置しており、この役場などへの利便性を図るために、ベイサイドアリーナ駅が新設されており、早朝や夜間の便などはベイサイドアリーナ駅を経由しないため、ベイサイドアリーナ経由便では前面幕(LED)でも行先脇に「ベイサイドアリーナ経由」という表示が出ています。

ベイサイドアリーナの次は志津川、旧志津川町→現南三陸町の中心地で、ベイサイドアリーナ駅を発着する場合の運賃は志津川駅と同額、ベイサイドアリーナ~志津川間のみを利用する場合は180円という変則的な取り扱いとなっています。

志津川はMAKIKYUが昨年夏に訪問した女川町や、今月バスで通り過ぎた岩手県の陸前高田市・大槌町と同様に役場が全壊し、低地に集積していた中心市街地も壊滅、多数の死者・行方不明者が発生するなど、東日本大震災における津波被災地域の中でも、特に大きな被害が出た地域の一つです。


震災から1年半が過ぎ、瓦礫などは片付けられて更地になると共に、更地には雑草が生えるなど、震災直後に比べると様相は随分変わっているかと思いますが、今もなお鉄筋コンクリートの建物が躯体や骨組みだけを残した姿で残存しています。


南三陸町長や数名の町職員が頂上の鉄塔にしがみついて九死に一生を得たものの、この建物にいた町職員の過半数が死亡・行方不明になった事で、保存と解体の是非を巡って問題になっており、今もなお骨組みだけが残る南三陸町防災庁舎も、志津川駅から徒歩数分程度の距離に位置しており、気仙沼線BRTからも、その姿を見る事が出来ます。

志津川を過ぎると陸前戸倉、陸前横山と続き、終点の柳津到着となりますが、陸前戸倉駅は気仙沼線の鉄路が海沿いから内陸に進路を変える辺りに位置しており、盛り土上にあって若干の高さがあります。

それでも津波によって流失被害が出ており、ここでも津波被害を凄まじさを感じさせられますが、陸前戸倉を過ぎて暫くすると、津波被害とは無縁の日常が拡がります。

現在も不通となっている陸前横山駅周辺などは、何時鉄道が復旧しても不思議ではない雰囲気ですが、駅前におけるバス発着・折り返しスペースや列車運行上の都合なども、不通長期化の一因と察せられます。


そしてBRT区間の終点・柳津に到着すると、ここで気仙沼線列車に乗り換えとなりますが、同駅周辺は飲食店やコンビニなどが見当たらず、飲料水の自動販売機が見受けられる程度です。

気仙沼方面からBRTで柳津までアクセスし、その後列車に乗り換えて小牛田方面を目指す際に、車中で食事を…と考えている場合には、BRT乗車前に買物は済ませておいた方が賢明で、BRT始発の気仙沼駅では駅舎に隣接してNEWDAYSが設けられているほか、BRT区間途中の津波被害が著しい地域でも、BRT停留所至近に仮設コンビニ店舗などが営業している箇所が幾つも存在しています。

気仙沼線BRT仮復旧区間は、震災前の鉄道線時代に比べると所要時間が大幅に増大しており、現状では仙台方面~気仙沼間のメインルートとは言い難い状況で、専らBRT区間内の地域輸送や、この区間と仙台や気仙沼との間を移動する交通手段と言う感があります。

それでも震災後はミヤコーバスによる臨時路線バス(定期・回数乗車券のみJR振替取り扱い)が、僅かに運行している程度だった南三陸町へのアクセスなどは、BRT仮復旧によって飛躍的に改善し、移動には専ら公共交通機関を用いているMAKIKYUは、震災から1年半が経過してようやく南三陸町などへ足を踏み入れる事が…と感じた程です。

三陸一帯ではまだJR不通区間が他にも存在し、特に路線バスも震災後減便されて不便さが否めず、県境跨ぎとなる大船渡線気仙沼~陸前高田間などは、陸前高田市中心部の甚大な被災状況などを考えると、鉄路での早期復旧は絶望的と言わざるを得ない気がします。

大船渡線沿線自治体もBRT仮復旧を了承したニュースが流れていますので、こちらも比較的早期のBRT化を含む代行バス運行に期待したいと感じたものです。



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