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杜撰極まりない運行管理体制が次々と発覚する「陸援隊・針生エキスプレス」~車庫の有様も…

2012-05-08 | 北総監獄

先月末に群馬県内の関越自動車道で、金沢~首都圏間で高速路線バスまがいの運行を行っている「ツアーバス」が防音壁に激突し、多数の死傷者が発生した事は、現在ネット上だけでなく、ニュースや新聞などでも盛んに取り上げられていますので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方もご存知かと思います。

MAKIKYUは仕事柄事故発生以前から、長距離を運行するツアーバス、それも特に夜行運行を行うバスに関しては様々な問題を抱えている事を知っており、以前にも「MAKIKYUのページ」で言及した事ですが、個人的には余程止むを得ない事情でもない限りは、とても乗車する気にはなれない代物です。

しかしツアーバスが抱える諸問題を知らず、運悪く今回事故を怠起したバスに乗車してしまい、不幸にも亡くなられた方々は余りに気の毒で、今回の事故に関する新たな情報が入る度に心が痛みます。

バスなどの大型車両を営業運転する際に必要な、大型2種免許所有者でもあるMAKIKYUとしては、現段階で高速道路をバスなどの大型車で営業運行する機会はないものの、自動車運転に携わる際には今回の事故を忘れず、日々安全運転に努めて行きたいと思います。

以前関越道ツアーバス事故に関する記事を記した際にも記した事ですが、不幸にも亡くなられた方々には謹んでお悔やみ申し上げると共に、現在も重症を負い入院されている方々の早期回復を願いたいものです。

ところで今回のツアーバス事故では、「ハーヴェストホールディングス」「陸援隊・針生エキスプレス」と言った、MAKIKYUは今回の事故で初めて耳にする名前が幾つもありますが、今回の事故に関する新たなニュースなどが入る度に、今回の事故ではツアーバスは「安かろう悪かろう」を通り越していると感じたものです。

特にバス運行事業者「陸援隊・針生エキスプレス」は乗務員台帳や点呼簿を用意していない、乗務員の適正診断や健康診断を実施していない、乗務前点呼やアルコールチェックも行わず、乗務員に運行指示書も渡さない状況で運行を行っている事が明らかになるなど、事故発生後の捜査では余りに多くの不備・違反行為が発覚しています。

運行管理(大手バス事業者では各営業所毎に、運行管理者資格を所持した数人の助役等が配置されています)を担う人物(「陸援隊・針生エキスプレス」では恐らく代表の針生裕美秀社長自らが担当)は、過去に過疎地自治体などの特例を除いて禁止されている白バス(白ナンバーの自家用車両による有償輸送)で摘発され、その後も道路運送法違反によるバス使用停止の行政処分が下っている上に、事故怠起時にも数々の不備・違反事項を認識していながらも、それらを平然と放置している有様です。

しかも事故を怠起した運転士を法令で禁止され、乗務員の適切な管理が出来ない日雇いで雇用するなど、順法意識の欠片もないと言わざるを得ず、バス事業を担う上では悪質極まりないもので、些細な事でも人命に関わるバス事業にも関わらず、安全に対する認識の欠如が甚だしいと言わざるを得ません。

おまけに今回の事故を怠起した運転士は、当然大型2種免許こそ所持しているものの、中国から帰化した人物で日本語会話にも難があり、運行経路すらまともに把握できない有様で、この様な運転士にいきなり初めて乗務する区間の長距離夜行ワンマン運転を行わせるのは無謀極まりなく、路線バスであればまず考えられない凶行と言わざるを得ないものです。
(路線バス扱いの高速バスであれば、夜間高速にはある程度の経験実績を積んだ人物を選抜し、それも路線研修などを経た上で乗務させ、2人乗務による交代制か中間地点での乗務員交代を行うなど、万全の態勢で運行を行うはずで、ツアーバスを旅行会社から運行受託するバス事業者でも、安全意識の高い事業者は同等の体制を採るかと思います)

ツアーバスに関する問題点は以前から認識していたMAKIKYUでも、ここまで酷過ぎるのは想定限度を越えており、こんな運行が出来てしまう事自体が大問題で、バス事業関係者や監督官庁の方々も同感かと思います。

また今回事故を怠起した河野化山運転士も陸援隊の名義を借用し、中国人観光客向けなどに白バス営業を行っていた疑いが報じられており、白バス営業が事実だとすれば言語道断ですが、仮眠休憩時に充分な休息を摂らず、過労状態で乗務に就く事自体が、職業運転士としての意識が全くないと言わざるを得ません。

おまけに休息時間に白バス営業に関連した活動を行い、勝手に指示と異なる経路を走行(路線バスであれば大問題です)したり、高速道路走行時には着用義務化されているはずのシートベルトが、壊れたり調子が悪くて着用できない事(こんな車両を走らせている事自体が、陸援隊・針生エキスプレスの安全意識の著しい欠如を表している気がします)を訴えた乗客に対し、「バスでシートベルトを着ける人なんていない」と一蹴するなど、職業運転士としては常軌を逸しているとしか言いようがない行動や言動の数々は、警察の捜査などで次々と状況が明らかになるにつれ、憤りと怒りが収まりません。

事故の状況が明らかになるにつれ、事故が「不幸にも発生してしまった」というよりは、こんな杜撰な運行で今まで特別重大事故(事故発生から24時間以内に死亡者が発生)が発生しなかった方が不思議」と感じてしまう程で、以前福島県の磐越自動車道で発生した近鉄バスの大阪~仙台間夜行高速バス「フォレスト号」横転による乗客死傷事故や、今月に入ってから特別重大事故を含む重大事故(治療に15日以上を要する負傷者が発生)が相次いでいる千葉県最大手・京成バスで発生している幾つかの事故などとは性質が異なります。

行き過ぎた規制緩和と格安競争の歪みに加え、杜撰極まりない運行管理体制と運転士の行動が、平成時代の日本国内では最悪のバス事故発生を可能にしたと言っても過言ではなく、今回の事故は過失事故と言うよりも、未必の故意による事故なのではと感じてしまう程です。


ちなみに今回の事故を怠起したバス事業者「陸援隊・針生エキスプレス」の車庫は、MAKIKYUが以前不本意ながらも長期に渡って拘留されていた北総監獄(千葉ニュータウン)にも程近い千葉県印西市内にあります。

JR成田線小林駅からも徒歩で約10分程、「ミニストップ印西小林店」の向かいに位置しており、ミニストップと「陸援隊・針生エキスプレス」車庫の間を通る国道356号線は、かつてこの一帯では印西市と本埜村の境界にもなっていました。
(現在本埜村は印西市に吸収合併・「陸援隊・針生エキスプレス」車庫は旧本埜村側になります)

MAKIKYUは数日前所用で北総監獄へ足を運ぶ機会がありましたので、その際には今回の事故で初めて存在を知った「陸援隊・針生エキスプレス」の車庫も視察してきたのですが、今回の特別重大事故発生を受けて特別監査が入っていた事もあって、当然ながら車庫内へ立ち入れる状況ではなく、外部から様子を伺えるだけでした。

外部から様子を伺った際の印象としては、従業員10名程度と報道されている事業者にしては、車庫の大きさや配置バス台数が多過ぎ、これだけのバスを全て自社所属の運転士が運行するのであれば、全乗務員が公休日なしで連日ワンマン乗務し、点検等で離脱する車両がある事を考慮したとしても、とても手に負えないと感じるものです。

この有様では法令で禁止されている日雇いなど短期での乗務員雇用や、「陸援隊・針生エキスプレス」名義貸しによる実質的な白バス運行を行っていても…と感じてしまいます。

車庫内に駐車していた車両を見渡しても、中には比較的新しいいすゞ製の新型GALAも見受けられたものの、過半数の車両は印西市に隣接する我孫子市や八千代市などでは登録不可となっている経年車で、低質なサービスを安価に提供する事業者と言う雰囲気(現在は公開中止しているHPでも、「バスは古くても安く…」と言った要望に応える旨が記されていました)が強く、今回事故を怠起したバスもこの部類に入ります。
(MAKIKYUは一般路線を走行する路線バスの経年車は大好きですが、観光・高速車でこの様な車両がゴロゴロしているのは余り感心できず、長距離夜間高速ともなれば尚更で、経年車を長距離高速走行で充当するのであれば、特に念入りな整備が必須であるにも関わらず、シートベルトが使えないなどの整備不良も報じられるとは呆れた限りです)

駐車しているバスを外部からみた限りでは、「陸援隊」の事業社名が記されたバスは見当たらず、事故車と同じ「Hariu Express」表記で車体側面後部に「H(Hariuの頭文字)」をデザインしたバスは何台も見かけたものの、別事業者の塗装で「Hariu Express」と表記された車両や、真っ白で事業者名などが見当たらない車両(ニュースなどで報じられている白バス運行に充当される車両かもしれません)の姿もありました。


別事業者にも車庫用地を貸し出しているのか、それとも複数名義を取得し、車両使用停止や事業停止などの行政処分が下っても差し支えない様にするためなのかは分かりませんが、陸援隊・針生エキスプレスとは異なる事業者名を表記したバスも見受けられ、見るからに不審な雰囲気が漂っていると言わざるを得ません。


またネット上の地図検索では「針生ビル」と表示され、車庫内には事務所兼社長宅を兼ねた建物が存在し、特別監査実施を報じるニュースでもこの建物の映像が出てきますが、車両整備を行う工場なども見当たらず、これでは少なくとも自社でまともな整備を行える様子ではありません。

長距離高速バスは一般道を走り、比較的短距離を運行する路線バスやコミュニティバス、特定輸送(送迎バス)などとは異なり、高速道路を高速で走行しますので、事故発生時には特別重大事故などの大事故に繋がる可能性も他のバスより高いですので、車両や人員面などで、他のバス以上に高いレベルが求められるかと思いますし、その責任の重大さや高いレベルが求められる夜間長距離の高速路線バスにかつて乗務していたある知人は「夜行はバス会社の花形だ」と語っていた程です。

バス乗務の中でも特に過酷と言われる夜間長距離バスの乗務可能距離・時間も、以前夜行バス乗務していた複数の知人によると、「夜行でワンマンは無理」「せいぜい400km」「金沢~首都圏をワンマン乗務させるのは、3流会社がやる事」などと言っていた程で、車両回送や荷物を運ぶのではなく乗客の命を預かる事を考えると、ワンマン運行の乗務可能距離限界見直しは必須で、乗務員交代なしの夜行ワンマン運転自体を見直す事も検討・議論の余地があるかと思います。

しかしながら陸援隊・針生エキスプレスの車庫を見た際に感じた印象や、余りに多くの法令違反・不備事項、極めて杜撰な運行管理体制が報じられている状況は、運送屋やレンタカー以下なのでは…と感じ、長距離高速バスを運行する事業者と言う雰囲気とは余りにかけ離れている気がします。

監督省庁も規制緩和で実質的に定期路線化しているツアーバスを解禁し、杜撰な運行管理体制でも監督する事すら…という状況を見直すのは必須で、陸援隊・針生エキスプレスの様な悪質事業者の取締りを強化するのは当然ですが、今回のツアーバスを企画した「ハーヴェストホールディングス」も以前行政処分を受けた事がある模様です。

ツアーバスを企画する旅行会社は、大半が大手バス事業者に匹敵・或いは仰臥する安全運行に対するノウハウを持ち合わせているとは言い難い気がしますし、自助努力を期待するだけでは、過度な利益追求の為に安全を犠牲にし、バス事業者に無茶な運行を要求する事業者の撲滅は不可能かと思います

ツアーバスを企画する旅行会社には、一部で報じられている運行管理者の配置義務化などの運行管理体制強化を推進する方策を採るか、さもなければツアーバスの定期運行自体を禁止し、路線バスとしての認可・監督下における運行に方針転換する必要があるかと思います。

多数の犠牲者が出てしまった今からでは遅過ぎる事ですが、今後ツアーバスによる同種事故が再び発生し、今後更なる犠牲者が発生しない事を強く願うと共に、公共交通機関(乗車申し込みがネット限定で運行日の随分前に申込打ち切りになるケースや、乗客が集まらないと催行中止=運行取り止めとなる事もあり得るツアーバスは、公共交通機関とは言い難い部分もありますが…)で最も重要な事は何かを、今回の事故では改めて認識させられた気がします。
(公共交通機関は乗客を安全に目的地まで送り届ける事がまず1番の使命、そのためには充分な安全管理体制が確保出来るだけの費用を捻出できる体制は必須で、その後に定時性や快適さ、速達性や利用しやすい運賃と言った付加価値を追い求めるもので、安全を無視・度外視する交通機関は論外と感じています)

陸援隊・針生エキスプレスの本社事業所所在自治体を走る某私鉄の如く、法外な運賃設定は歓迎できませんが、夜行の長距離高速バスに乗車する機会は稀なMAKIKYUも、昼行を含む高速バスや他交通機関を利用する際には、どの事業者がどの様な運行を行っているかを把握した上で、幾つかの選択嗣がある状況では可能な限り自身が利用したい・適切・必須と感じる交通機関を選び、乗客として利用する事で微力ながらも運賃収入に貢献して、その公共交通機関を支えて行く事が必須と感じたものです。

公共交通機関は多様な設備や付加サービスにより、運賃面で様々な選択嗣が存在するのは歓迎ですが、安全に対する意識と費用の違いで、運賃面で様々な選択嗣が存在する状況は勘弁願いたいものです。

この記事を公共交通機関従事者の方が拝見している様でしたら、安全第一という意識を常に忘れずに持ち続けて頂ければ…と祈願すると共に、今回の事故で旅立たれてしまった方々が安らかな眠りに就く事を願い、長くなりました当記事の結びにしたいと思います。



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