ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

通信キャリアにとってのグローバル化とOpenFlow

2011年10月30日 | ネットワーク
日本の企業が「グローバル」を叫ぶ時、大きく2つの観点に分けられると思う。1つは縮小する国内市場から海外市場へと新しいビジネスチャンスを求めて、営業拠点をシフトしようとするもの。もう1つは商品の競争力を高めるために海外に生産拠点を移しコスト削減を図ろうとするもの。

例えば製造業の場合、「グローバル化」というと、前者はもちろんのこと、後者の動きもふくめて進められていくことだろう。

これがIT企業の場合、「グローバル化」といってももう1つ漠然としたイメージにならざろうえない。まず日本のIT企業のB向けのソフト開発にしろC向けのサービサーにしろ、日本国内が相手となっている。

では通信キャリアにとっての「グローバル」とはどういうものなのだろう。

日本企業が海外に進出するにつれて、海外拠点とのトラヒックも当然増加する。インターネット時代だからといって、すべての通信がインターネット上を流れているわけではないし、もちろんインターネットが世界共通基盤だからといって、物理的には誰かがケーブルを繋いでいなければならない。

企業がグローバルなプライベートネットワークを構築したいと考えた時、3つの部位にわけて考えなければならない。1つ目は国内のネットワーク。NTT東西が提供するフレッツサービスやダークファイバーを利用しながら、NTTコミュニケーションズやKDDI、ソフトバンクなどが提供するネットワークだ。こちらはメニューは豊富だし、広帯域低価格化が進んでいる。

2つ目は国内と海外拠点を結ぶ中継部分。そもそも日本の通信政策は国内通信(電話)は日本電信電話公社(現NTT)が、国際電話は国際電信電話会社(KDD)が担っていた。それが通信の自由化にともない、それ以外のキャリアも参入可能となった。その結果、KDDIをはじめNTTコミュニケーションズなどがサービスを提供している。

そして3つ目が海外拠点国内のネットワーク。しかしこちらについては日本のキャリアが主体的にサービスを提供することができない。多くの場合、その国の通信事業者が存在し、その事業者のサービスを利用しなければならないからだ。

そう考えた時、通信キャリアがより大きなビジネスチャンスを求めて「グローバル」を標榜したとしても、どこかで片手落ちな感が残る。通信というものがEnd-to-Endで繋がって初めて意味を持つものであるにも関わらず、サービスの種別にしろ品質にしろ、海外の拠点側の対応を自分たちでハンドリングできないのだ。

もちろん中継部分の品質を担保することは大事だし、投資対効果を考えればアクセス網よりもずっと効率的だ。しかし通信は「鉄道」ではない。途中で新幹線に乗りついでそこだけグリーン車でいいというわけではない。End-to-Endで担保できなければ、本当の意味でのサービスレベルは維持できない。

結果、通信キャリアが「グローバル」で勝負しようとすると、データセンターやクラウドといったネットワークの付加サービス部分がポイントとなる。

そんなことを考えていた時に、こんなニュースが。

「2012年夏からネットワーク仮想化サービスを開始する」、NTTコム有馬社長 - ニュース:ITpro

「OpenFlow」をベースとした「仮想ネットワーク」を構築することで、オンデマンドにクラウド基盤の構築・変更が可能にする、と。

OpenFlowとはネットワーク機器のもつ「経路選択」と「パケット転送」という2つの機能を分離し、複雑でソフトウェアよりの機能を「OpenFlowコントローラー」側に集約し、スイッチ側にはハードウェアよりの「パケット転送」に特化させようというネットワークの制御機能のこと。これまでであれば1つ1つのネットワーク機器に対して、どのポートにどのVLANが所属して…といった設定が必要になるのだけれど、このように「経路制御」別で管理することで、ネットワークの構成変更を一括で行うことができ、かつ設定ミスを減らすことができる。

また設定の仕方もこれまでのようなレイヤーごとの管理ではなく、どこに対してどんな通信を許可するかという目的ベースでの設定となる。

こうしたことを通信キャリアが提供するということは、これまでのような「回線」屋としてだけではなく、エンドユーザーのもつネットワーク機器やクラウド上のサーバインフラ基盤まで提供することを視野に入れているといえるだろう。もちろんエンドユーザーの通信機器やサーバをOpenFlowに準拠させるという手もあるだろうが、機器間の相性や管理ツールの問題を考えれば、ネットワークからサーバまでを含んだインフラ基盤を1つのものとして扱った方が都合がいい。

特に東日本大震災以降、大規模災害に対してのBCP対策、DRの必要性が改めて問われることになった。物理的にセカンダリーデータセンターを構築し、バックアップシステムを構築することもいいが、同じ規模のものを用意するとなるとコストもかさむ。OpenFlowとクラウドを利用することで、オンデマンドでバックアップシステムを構築したり、そのためのネットワークの再構築が簡易にできるのだとすると、選択肢の1つになりうるだろう。

グローバル需要はもちろん、国内でもこうしたサービスを求める声は上がってくるのだろう。


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