ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

ソフトバンクのスプリント買収はドコモの海外進出を促すか

2012年10月16日 | ネットワーク
ついにソフトバンクが米携帯電話市場3位の米スプリント・ネクステルを買収した。この買収、成功するか否かは置いておいて、個人的には好印象を持っている。イーモバイルの買収も含めて、DoCoMoやKDDIといった行儀のいい通信キャリアにとっては目が覚める一撃だったのではないか。

 ニュース - ソフトバンクがスプリント買収のメリットを説明、「成長のダブルエンジンを得た」:ITpro
 ソフトバンクが米スプリント買収を正式発表、「ユーザー規模では既にNTTドコモを抜いた」:ITpro

NTTやKDDIのような伝統的な通信キャリアにとってはこうした出資や買収といった話は実施したいと思ってもなかなか簡単ではない。総務省の意向を尊重したり、手続きやルール、業界的なバランスを優先したりと自らの意思だけでは物事を進むるようなことはしない。ましてや海外の通信事業への進出となると、その国の通信行政当局・通信キャリアとの関係にも配慮してといった具合で、技術協力や人事交流は行ってもせいぜい5%くらいの出資がいいところだ。

このスピードが重視される時代に、業界のルールが優先されるのだ。

しかし日本国内の通信市場は飽和状態。まして人口減少社会の到来が見えているのだ。国内市場だけを相手にしていたのでは企業としての成長は限られている。否が応でも「海外市場」という言葉を意識せざろうえない。

そんなときにこのソフトバンクの買収劇は業界にとっては衝撃的だ。いきなり利用者でドコモを超え、世界のメガ通信キャリアへの仲間入りをするのだから。これでNTTグループやKDDIもこれまでのルールや慣習に縛られた「思考の壁」を越えるかもしれない。そう思うとこの買収には拍手を送りたくなるのだ。

もっともこの買収が成功するのかといわれると、懐疑的にならざろうえない。理由は簡単で、

1)2つの市場を結ぶシナジーがない
2)アメリカ市場は成熟市場であり、成長の余地を感じない
3)既にAT&TやベライゾンもiPhoneを提供しており、日本での成長モデルをなぞれない

からだ。

通信事業というのは、通信設備に多額の投資を行い(固定費)、それをどれだけ多くの利用者に利用してもらうかというビジネスだ。最近ではスマホによる急激なトラヒック増大に対し設備投資が追いつかないという状況はあるけれど、日本国内に同じように設備投資が求められるのであれば、契約者数を多く抱えているドコモの方がより早く回収できることになる。その意味で通信事業にとっては契約者数というのは大事なのだ。

しかしこと、アメリカと日本という2つの市場を手にいれ、契約者数で大きく伸びたからといって、そこにシナジーは生まれにくい。日本国内への設備投資とアメリカ国内での設備投資は全く別物だからだ。共同調達をすることで、投資額を抑制するということは可能かもしれないが、設備投資が半分になるわけではない。1+1=2でしかないのだ。

またアメリカの携帯の契約数は全体で3億4263万件、既にアメリカの人口 3億1000万人を超えている成熟市場だ。しかも1位のAT&Tが30.7%、2位ベライゾンが27.5%と両社で6割り近くを押さえている。新規開拓を進めるというよりは、他社からシェアを奪い取るという(SBの得意な)状況であり、否が応でも価格競争になりかねない。

日本では同様に厳しい状況の下で、孫正義は徹底した価格競争をしかけ(まずはPHSを潰し)、iPhoneという武器を手に徹底した攻めの姿勢を崩さなかった。しかし今回はどうだろう。ソフトバンクが日本で飛躍する最大の武器となった「iPhone」はAT&Tもベライゾンもともに提供をしている。価格面では仕掛ける余地はあるだろうが、LTE化という設備投資が求められる中で、どこまで値下げの体力があるのか。

もしこれがこれからの成長市場である、中国やインド、ロシア、ブラジル、アフリカの通信事業に進出するというのであればまた別かもしれないが、そこに大きな期待を感じることはない。

これを機に、日本の通信事業者も「国内」や業界的な「慣習」にこだわらず、より大きな視点で行動に移すようになるかもしれない。外資規制があるとか、そういった「できない」常識ではなく、挑戦しようという「意思」こそが求められるのだ。

コメントを投稿