ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

Apple社の携帯シェアと世界市場での位置づけ

2011年10月23日 | ビジネス
7、8年前だろうか、経営学を教えている米倉誠一郎先生と定食で一緒になって、日本国内を中心に考える発想から変えなければならないといった話をしたことがある。「…そうですよね。DoCoMoが日本で1番のシェアを持っているといっても5~6千万。でも中国だとNo2、No3でも軽く1億人超えちゃいますね」。当時は中国市場が勃興している最中。大前研一さんが「チャイナ・インパクト」などを上梓した頃だ。

この頃から、市場規模という観点から世界の構造が大きく変わりつつあることは何となく理解していたのだけれど、ここ数年はそのことの持つ意味が日本の企業にとっても大きく問われることになったといえるだろう。

大事なのは市場「規模」だけではない。その市場を担っている人たちの「所得」と「ニーズ」のバランスだ。そんなことをこの記事を読んで改めて感じた。

 Apple社の世界携帯シェアは5%:その意味 ? WIRED.jp 世界最強の「テクノ」ジャーナリズム

この記事の中では、僅か3日間で400万台を売ったiPhone4Sの凄さが書かれているわけではない。それはもちろん凄いことなんだけれど、それでもapple自体の携帯電話市場でのシェアは5%に過ぎない。そして何よりも大事なのは、iPhone4Sはハイエンドなユーザーのための商品だということだ。

 「[インドや中国等を含め、]世界の多くの国では携帯通信会社による契約補助が無く、顧客たちは4Sに対して、199ドルではなく650ドルを払うことになる。」

このことの意味は大きい。これからの世界市場を引っ張るのは、BRICsと呼ばれた中国やインドあるいはアフリカ諸国だ。彼らはこれまでも人口は非常に大きかったわけだけれど、貧富の格差が激しくまだまだ貧しい国だった。しかし近年、かっては所得のピラミッドでは貧困層に位置づけられていた層が徐々に消費意欲の高い中間層へと成長してきている。彼らはこれまで飢えていた分、消費に対しては貪欲で、かつ「成長」への熱気に満ちている。何よりもその勃興しつつある中間層の規模が数億単位の市場となる。

とはいえ、日本やヨーロッパ、アメリカのような成熟した市場ではない。テレビは欲しい、自動車も欲しい、携帯電話も必要だ、そのためにはまずは「使える」ことが大切であり、ハイエンドな製品はもっと余裕が出てからだ。

 「低価格の携帯電話には巨大な需要がある。世界における携帯登録台数の平均は100人あたり60.8件だが、南アフリカ共和国では92.2件にのぼる。アルジェリアでは92.7件、チュニジアでは83.3件だ。こうした国では、モバイル・データ・インフラは十分とはいえないが、携帯が通信だけでなくパソコン代わりとしても利用されている。[銀行口座を持たない携帯電話ユーザーを対象とした送金サービスが、途上国各国で利用されている]」

この「それなりの品質でもいいから低価格であること」という市場をうまく制しているのは韓国勢といっていいだろう。またアフリカなどでは中国が国家による「援助」と紐付けに進出している。「日本品質」を武器にした日本のメーカーが苦戦しているのはこのためだ。

日本をはじめ先進国と呼ばれた市場(成熟市場)と中国やインド、アフリカのような新しい市場とでは、サービスの品質に対する考え方や必要な機能、価格が必ずしも一致しない。しかしその一方で製品のソフトウェア化はメーカー間の技術力の差をこれまで以上に近づけるだろう。androidをベースにしたスマートフォンなんていい例だ。「できること」の機能差などサムソンだろうが、ソニエリだろうが、ZTEだろうが関係ない。その上での「使い勝手」や「デザイン」「大きさ」といった所でしか差異化できなくなってきている。

異なる市場に対して、異なるラインナップで攻めるのか、徹底したコスト削減で両方の市場に対応させるのか。それとも全く別なやり方を見出すのか――appleだけでなく、日本メーカーにとっても難しい課題なのだろう。

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