ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

坂の上のクラウド:2013年問題があぶりだすデータセンター事業の戦略ミス

2012年11月07日 | ネットワーク
データセンターを巡る「2013年問題」があるのだという。大規模なデータセンターが相次いで開業し、首都圏で供給過剰になるというのだ。供給過剰になるとどうなるか、これは通常の経済の法則と同じで提供価格、ラック単価が下落していくことになる。特にデータセンター事業とは巨額の先行投資が必要となるインフラ事業だ。空ラックが多ければ収入が上がらない以上、稼働率を上げるために多少の値引きをしてでもラックを埋めることを選択しがちだ。

 世界最適のシステム“立地”戦略 - DCの2013年問題、首都圏で:ITpro

しかしデータセンターを取り巻く問題というのは単に首都圏における供給過剰というだけではないだろう。

東日本大震災はデータセンターの必要性を再認識させただけでなく、適切なBCP対策・ディザスタリカバリーの必要性も認識させた。そして「適切さ」とはそれまでの100kmくらい離れていれば十分だろうという漠然としたものではなく、例えば今回のような大規模災害に対しても耐えうるように東日本/西日本とでバックアップサイトを分ける、異なる電力会社のエリアに設置する、連動して動くトラフの影響を受けないエリアを選ぶなど、より本格的なディザスタリカバリーが求められることになった。

そのため、首都圏でのバックアップではなく、セカンダリーサイトには地方のデータセンターが求められる傾向がある。しかしこれまで地方のデータセンターが注目を集めることは少なく、スペース的にも電力容量的にも十分な設備が整っているとはいえない。

地域のデータセンター強化が求められるが、当然、提供までには時間とコストがかかり、かつ首都圏では供給過剰という問題がある。

またグローバルにビジネスを展開する大手企業にとっては、日本国内でのディザスタリカバリというのは既にものたりないだろう。国際的なネットワークの拡充に伴いグローバル企業にとっては、同様のシステムを格納したデータセンターを世界各国で利用する必要がなくなってきている。機能ごとに1つのデータセンターに集約し複数の国に対してシステムを提供するという方向に進んでいるのだ。そしてそうなると、ディザスタリカバリもグローバルなレベルで考えなければならない。世界品質のデータセンターが求められるということになる。

それだけではない。

一方でこれからは中堅・中小企業のクラウド化が進んでいくことになる。となると、自前のオンプレミスをデータセンターに設置するということは少なくなる。

そもそもクラウドといえども、どこかのデータセンターに物理的にサーバを設置する必要がある。それでもなおクラウドの方がコストが下がるというのは、利用するサーバを仮想化することにより、ラック当たりの集約率が高いということだ。クラウドが中心となったとき、同じ1000ラック収容できるデータセンターがあったとしても、そこを利用できるユーザー数はずっと多くなる。クラウド化が進めば進むほど、コロケーションスペースが余っていくことになる。

2013年問題というのは、首都圏の供給過剰というだけでなく、データセンター事業をめぐる環境変化によって生じた「戦略ミス」の一角ということなのだろう。


 データセンターの二極化とクラウドというリスク - ビールを飲みながら考えてみた…

 坂の上のクラウド:プライベートクラウドの始まりと終わり - ビールを飲みながら考えてみた…

コメントを投稿