今年前半、ISPをも巻き込んで喧々諤々もめていたIPv6マルチプレフィックス問題。トンネリング方式とネイティブ接続事業者(代表ISP)を中心としたネイティブ方式の併用という「玉虫色」の決着をみたわけだけれど、そのネイティブ方式の「ネイティブ接続事業者」3社が決定した。OCNやぷららといったNTT系のISPが申請を取りやめるなか、3社ともIX事業者が選出されるなど、まぁ、これまたバランスがとれたというか、うまい落としどころで決着したという感じだろうか。
NGNネイティブ接続事業者が3社決定、いずれもIX事業者 - ニュース:ITpro
選定されたのは「BBIX(Yahoo!BB系)、インターネットマルチフィード(IIJ、NTT系)、日本インターネットエクスチェンジ(中立)の3社。ネイティブ接続事業者には接続されるユーザーの多い順に選出させるということだったので、ISP単体で申し込むよりはIX事業者が申し込んだ方が有利との判断があったのだろう。ISP間の対立も避けることができたし。
接続イメージは以下のような形式になる。
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INTERNET
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ISP
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IX(ネイティブ事業者)
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NGN
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USER(A) USER(B)
このネイティブ方式を用いた場合のメリットというのは、NGN間に閉じた通信(A→B)の場合にトラフィック効率が高いこと。これまでのPPPoEを使った通信だと、仮にAとBがともにフレッツ網経由でISPに接続していたとしても、Aはいったん自分が接続しているISPに接続し、インターネットを経由した上で、BのISPを経由しBに接続するという形になる。
A→(フレッツ網)→ISP(A)→(インターネット)→ISP(B)→(フレッツ網)→B
これはフレッツ網がPPPoEでユーザーとISPをトンネリングするだけでルーティングをしないからだ。これが今回のネイティブ方式だとNGN内で閉じることになる。
A→NGN→B
ユーザー管理、払い出すIPv6の管理はあくまでISP側が行うのだけれど、こうした通信が主流となった場合、ISP側のインフラ設備への負担は大幅に減ることになる。映像配信のような膨大なトラヒックが発生しても、これならNGN側が設備負担を行ってくれることになる。
ただしこれはNGNに接続された端末間での通信の場合。例えばYouTubeのような海外に配信サーバがあるような場合は、結局、インターネット経由にならざろうえない。
A→NGN→IX→ISP→INTERNET→YouTube→INTERNET→ISP→IX→NGN→A
まぁ、こうした海外のサーバへの接続は仕方がないとしても、国内に利用者向けに提供しているサーバなどは今後、どのように考えればいいのだろうか。仮に国内にしか利用者がいないサービスを提供しているとしよう。その場合、NGNに直収されていればインターネットに抜けることなくユーザーにサービスを届けることが可能になる。
A→NGN→サーバ→NGN→A
しかし現実的にはこうしたサービスは「ひかりテレビ」など限定的だ。IPv4ユーザーはこれまで同様いったんインターネット経由での接続とならざろうえないし、CATVやADSLなどNGN網に接続されていないユーザーも存在する。インターネット上にサーバを設置すれば、アクセス網が何だろうが、どのISPと契約しているユーザーだろうが、サーバ1台あればこと足りるが、いくらトラヒック効率がいいからといってもNGNにサーバを接続しても利用できるユーザーは限られてしまう。しかも現状、NTT東西のNGNは別なネットワークであり、網間通信は制限されている。利用者が少ないにもかかわらず、東西それぞれにサーバを設置しなければならないといった具合だ。
NGNは「ガラパゴス」以前に「無人島」 - ビールを飲みながら考えてみた…
ただし長い目で見たとき、データセンターやハウジング/ホスティングを提供している事業者にとっては、v4向けのインターネット接続だけでなく、v6用のNGN接続も併用する、あるいはネイティブ接続事業者になっているIXへの接続ということも考えなければならないのかもしれない。
PCからの利用を前提とするならば、あるいは現状のインターネット利用の延長線上で捉えるならば、NGN接続というのは追加コストになってしまうだろうが、ネイティブIPv6サービスやネット家電のようなM2M通信のようなものを考えると、IPv6を前提とした閉域網内に閉じたほうが効率的だろう。IPv6であれば通信モジュールなどのMACアドレスから端末固有のアドレスを生成できるし(なりすまし防止)、閉域網であればセキュリティ対策への投資を抑えることができる。
そう考えた時、IX事業者がネイティブ接続事業者となったことはISPやデータセンター事業者にとってもメリットは高い。ISPやデータセンター事業者にとってはネイティブ接続事業者に接続すれば、IPv4インターネット向けの接続だけでなくIPv6用の接続もできることになる。各社がNGN用に別の接続を行うということは難しいかもしれないが、IX事業者がまとめてNGNと接続することで、各社の接続コストを落とすことができる。
ネイティブ接続方式のメリットである「トラヒック効率の高さ」を活かすためには、NGN内で閉じるサービスやアプリケーションの開発とそれを導入しやすくするための費用の低減が求められることになるのだろう。少なくともNTT東西でNGNが別ネットワークであるとか、網間接続で追加のコストがかかるとか、サービスポリシーが違うといったやり方では誰もNGN上のアプリケーションを開発しないだろう。
ま、NTTがWinnyやShareの代りにNGN上で合法P2Pを提供するといった風になると、利用者は急増するかも知れないけれど(苦笑)。
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接続イメージは以下のような形式になる。
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INTERNET
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ISP
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IX(ネイティブ事業者)
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NGN
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USER(A) USER(B)
このネイティブ方式を用いた場合のメリットというのは、NGN間に閉じた通信(A→B)の場合にトラフィック効率が高いこと。これまでのPPPoEを使った通信だと、仮にAとBがともにフレッツ網経由でISPに接続していたとしても、Aはいったん自分が接続しているISPに接続し、インターネットを経由した上で、BのISPを経由しBに接続するという形になる。
A→(フレッツ網)→ISP(A)→(インターネット)→ISP(B)→(フレッツ網)→B
これはフレッツ網がPPPoEでユーザーとISPをトンネリングするだけでルーティングをしないからだ。これが今回のネイティブ方式だとNGN内で閉じることになる。
A→NGN→B
ユーザー管理、払い出すIPv6の管理はあくまでISP側が行うのだけれど、こうした通信が主流となった場合、ISP側のインフラ設備への負担は大幅に減ることになる。映像配信のような膨大なトラヒックが発生しても、これならNGN側が設備負担を行ってくれることになる。
ただしこれはNGNに接続された端末間での通信の場合。例えばYouTubeのような海外に配信サーバがあるような場合は、結局、インターネット経由にならざろうえない。
A→NGN→IX→ISP→INTERNET→YouTube→INTERNET→ISP→IX→NGN→A
まぁ、こうした海外のサーバへの接続は仕方がないとしても、国内に利用者向けに提供しているサーバなどは今後、どのように考えればいいのだろうか。仮に国内にしか利用者がいないサービスを提供しているとしよう。その場合、NGNに直収されていればインターネットに抜けることなくユーザーにサービスを届けることが可能になる。
A→NGN→サーバ→NGN→A
しかし現実的にはこうしたサービスは「ひかりテレビ」など限定的だ。IPv4ユーザーはこれまで同様いったんインターネット経由での接続とならざろうえないし、CATVやADSLなどNGN網に接続されていないユーザーも存在する。インターネット上にサーバを設置すれば、アクセス網が何だろうが、どのISPと契約しているユーザーだろうが、サーバ1台あればこと足りるが、いくらトラヒック効率がいいからといってもNGNにサーバを接続しても利用できるユーザーは限られてしまう。しかも現状、NTT東西のNGNは別なネットワークであり、網間通信は制限されている。利用者が少ないにもかかわらず、東西それぞれにサーバを設置しなければならないといった具合だ。
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ただし長い目で見たとき、データセンターやハウジング/ホスティングを提供している事業者にとっては、v4向けのインターネット接続だけでなく、v6用のNGN接続も併用する、あるいはネイティブ接続事業者になっているIXへの接続ということも考えなければならないのかもしれない。
PCからの利用を前提とするならば、あるいは現状のインターネット利用の延長線上で捉えるならば、NGN接続というのは追加コストになってしまうだろうが、ネイティブIPv6サービスやネット家電のようなM2M通信のようなものを考えると、IPv6を前提とした閉域網内に閉じたほうが効率的だろう。IPv6であれば通信モジュールなどのMACアドレスから端末固有のアドレスを生成できるし(なりすまし防止)、閉域網であればセキュリティ対策への投資を抑えることができる。
そう考えた時、IX事業者がネイティブ接続事業者となったことはISPやデータセンター事業者にとってもメリットは高い。ISPやデータセンター事業者にとってはネイティブ接続事業者に接続すれば、IPv4インターネット向けの接続だけでなくIPv6用の接続もできることになる。各社がNGN用に別の接続を行うということは難しいかもしれないが、IX事業者がまとめてNGNと接続することで、各社の接続コストを落とすことができる。
ネイティブ接続方式のメリットである「トラヒック効率の高さ」を活かすためには、NGN内で閉じるサービスやアプリケーションの開発とそれを導入しやすくするための費用の低減が求められることになるのだろう。少なくともNTT東西でNGNが別ネットワークであるとか、網間接続で追加のコストがかかるとか、サービスポリシーが違うといったやり方では誰もNGN上のアプリケーションを開発しないだろう。
ま、NTTがWinnyやShareの代りにNGN上で合法P2Pを提供するといった風になると、利用者は急増するかも知れないけれど(苦笑)。
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